断然人気に支持された大本命馬が見せ場もなく負けたと思えば、アッと驚く超大穴が激走して大波乱を起こすことは、競馬の世界では珍しくない。
レース前にはTVやネット、スポーツ新聞に競馬専門紙などで好調と伝えられていたはずなのに、終わってから「実は不安が……」など寝耳に水の情報を知ることも……。
そんなとき、「先に教えてくれよ」と言いたくなったことは、競馬ファンなら誰でも一度くらい経験があるのではないだろうか。
ただ、我々一般のファンには関係者から直接情報を入手する術はなく、どうしてもメディアの発信することを鵜呑みにするしか手立てがないのはもどかしい。
こればかりはどうしようもないことなのだが、競走馬の馬主となると話は別だ。彼らは調教師や騎手など、所有馬の関係者と密接な関係にあり、表に出ない情報を知る機会も圧倒的に多いだろう。
そんな馬主ならではの“特ダネ”を手に入れるチャンスがあったと振り返ったのが、「ニシノ」「セイウン」の冠名で知られる西山茂行オーナーだ。
西山オーナーは、競馬ファンと気さくに交流する馬主としても知られるちょっとした有名人。自身のブログ『西山牧場オーナーの(笑)気分』やTwitterを介し、所有馬に関する情報なども発信しており、競馬ファンから多くの支持を得ている。
普段から何かとタメになる情報を手にすることが可能なこの“情報源”だが、特に注目を集めたのは5日に更新された「幸騎手に脱帽!」というタイトルの投稿である。
この日のTwitterで「すごい馬券作戦。誰にも教えない(笑)」とツイートした話は、非常に興味深い内容だった。
(まじ、すごい話を書きますよ)
インパクトのある前置きから始まった話の対象は、日曜小倉2Rの2歳未勝利戦。このレースには、西山オーナーの所有馬ニシノデフィレが出走していた。
同馬の過去3戦はすべて幸英明騎手が騎乗。セイウンコウセイを高松宮記念優勝に導いた幸騎手だけに信頼も厚く、西山オーナーとしては当然今回も幸騎手でと考えていたようだ。
ところが、ニシノデフィレの宮本博調教師からは「幸(騎手)は今回先に頼まれている馬がいるので断られました。社長、岩田(康誠騎手)はどうですか?」という意外な知らせ。岩田康騎手とも相性は悪くないということでOKを出したとのこと。
とはいえ、5番人気のニシノデフィレに対し、断られた相手の幸騎手が騎乗するタムロキュラムンは12番人気の大穴。
「幸はきちんと頼まれた順に乗るんだなあ。相変わらず義理堅い男だ。」
このときは、西山オーナーもそれくらいの感想だったらしいのだが、当日の競馬中継を見るとニシノデフィレよりタムロキュラムンのデキの方がよく見えたと振り返っている。そこで脳裏に浮かんだのは、幸騎手が上位人気のニシノデフィレを断ってまで人気薄の馬を選んだことが、はたして義理だけが理由だったのかどうかという疑問だろう。
もし、幸騎手が勝算ありと考えての騎乗馬選択だったとしたら……。
そしてこの裏事情を知っているのは、宮本調教師と西山オーナーのみで調教師の宮本師は立場的に馬券を買えない。馬券を買えるのは一人だけだったものの、愛馬が出走するレースで「他の馬の馬券を買ってはいけない」と自重したのもオーナーの人柄だろうか。
レースは、“予想通り”幸騎手のタムロキュラムンが12番人気の大穴を開けて、ニシノデフィレは7着に敗退。単勝でも6760円、馬単は10万9420円、3連単の払戻は84万690円という高配当の使者となった。
「わししか知らない情報だったのに買えない。ニシノデフィレが出走していなければ買えたのに」とは西山オーナーの言葉。続けて「あっ、ニシノデフィレがいなければ知り得ない情報か。(笑)」と複雑な心境を語っている。
もし、購入していたら大儲けも夢ではなかったかもしれないが、所有馬への愛ゆえにチャンスを逃してしまった。
この裏話に対し、ファンからは「なんでレース前に教えてくれなかったんですかー!!」と聞かれ、「教えるわけないじゃん」と軽妙なやりとりで返した西山オーナー。今後はそこを何とか教えていただけないものだろうか(笑)
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。