『青天を衝け』ディーン・フジオカが演じる五代友厚とは?朝ドラで“五代ロス”が話題に

 日本経済界の先駆者として活躍した渋沢栄一がモデルの大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)。吉沢亮が演じる主人公は徐々に実業家としての熱を帯び始め、ディーン・フジオカが演じる五代友厚との交流も迫ってきた。

 ディーン・フジオカは2015年度下半期の朝ドラ『あさが来た』でも五代を演じ、絶大な女性人気を得て「五代ロス」というパワーワードを生んだ。それから約6年後、今度は大河ドラマで再び五代役を務めている。そもそも、五代はどのような人物像で、『あさが来た』ではどういう役割だったのか。史実を紐解きながら、見ていきたい。

西洋に通じ、関西経済を牽引した「西の五代」

 五代は江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した薩摩藩の武士で、後に実業家となり、渋沢と共に日本の近代化を推進した人物だ。「西の五代、東の渋沢」と呼ばれていたことぐらいは知っている、という人も多いのではないだろうか。

 薩摩藩は薩英戦争を機にイギリスなどとも交友があり、五代は遊学や使節団としてヨーロッパ各国をめぐっていた。早い時期から開国派として西洋の文化や技術を取り入れる活動をしていたため、『青天を衝け』22話で、おのぼりさん状態だった幕府が、パリで薩摩藩に恥をかかされてしまったのも仕方ないことだろう。

 その後は、明治新政府の参与職外国事務掛などの役職を兼任したことで、大阪に造幣寮(現・造幣局)の誘致をしたり、大阪株式取引所(現・大阪取引所)や大阪商法会議所(現・大阪商工会議所)などを次々に設立し、関西の経済を盛り立てた。

朝ドラではあさを導き、支えた五代

 では、『あさが来た』ではどんな役割を担っていたのだろうか。ヒロインの今井あさ(波瑠)は幼い頃に父と姉と大阪へ行き、嫁ぎ先へのあいさつ回りをした際、人混みの中で武士とぶつかる。それが、五代との出会いだった。それから、2人は事あるごとに顔を合わせるようになっていく。

 もともと算術が得意だったあさは、大阪の両替屋の加野屋に嫁いでから商いに興味を持ち、商人たちが集まる会所で、実業家に転身した五代と再会した。女性にしては珍しく商いに興味津々なあさを好ましく思った五代は、相場の仕組みや今後の日本の変化などを教えた。

 五代に感化されたあさは、商いに真剣に取り組むようになる。はじめは煙たがられていたが、やがて加野屋の一員として認められるようになり、新政府設立による倒産からも免れることができた。

 その後、五代は大阪発展のために為替会社や通商会社などを設立し、大阪にとってなくてはならない存在となる。実業家として頭角を現すあさが九州の石炭事業に着手した際も、五代の支えで軌道に乗せることができた。

 このように、あさが実業家として成長していく陰には五代の姿があった。同じ志を持つ者同士、何か通じるものがあったのだろう。しかし、恋仲になれないのが朝ドラのいいところ。五代はあさの夫とも交流を重ねて信頼関係を築き、むずがゆい三角関係へと発展していった。

あさの夫との友情と切ない結末

 あさの夫の白岡新次郎(玉木宏)は商売人としての才能がなく、商いを通じてあさとの信頼関係を強めていく五代は、少しやっかいな存在でもあった。しかし、楽しそうに仕事に取り組むあさを止めることはできない。

 やがて、新次郎は顔の広さで大阪商人の集結に欠かせない人物となり、あさと同様に「大阪の恩人」となる五代との親交を深めた。北海道の開拓事業関連で五代の不正がニュースになると、新次郎はいち早く動いて真相を解明し、五代を守った。

 その後、自分の命が長くないと察した五代は、新次郎に「もう、あささんには会いたくない。この弱った姿を見せたくない」と弱音を吐き、「これからは、あささんを支えてほしい」と頼んだ。

 新次郎は五代との約束を守り、あさを支えるために加野屋の新会社社長に就任。五代はあさに病気のことを伏せたまま、養生のために東京へ向かい、49歳で亡くなった。

あさが来た』での五代は、紳士で人々の信頼が厚く、志が高くて先見の明もある、何でもデキる人というイメージだった。そして、よきアドバイザーとしてあさを導きながら、ほのかな恋心のようなものも抱く、名前のつけづらい関係性を育んでいた。

 五代の友人の大久保利通(柏原収史)が暗殺された際には、あさに慰めを求めるシーンもあり、2人の微妙な関係が前に進んでしまうのではないかとハラハラした人もいただろう。

 しかし、あさは五代の悲しみを受け止めながら、「今後は自分が大久保の代わりに五代の心の友になる」と宣言。五代の想いは友情という形で成就した。何とも切ない結末である。

『あさが来た』では、あさを鼓舞してストーリーを進める重要な役割と、新次郎を嫉妬させるライバル役を兼ねていた五代だが、『青天を衝け』ではどういう役割を担うのだろうか? 渋沢と共に「富国強兵」を目指して日本経済を引っ張っていく役どころだが、人間性の部分についてはまだまだ謎が多い。

 渋沢と戦友になる前に、何か一悶着を起こすのか? それとも、同じ敵に立ち向かう同志として心を燃やすのか? 『あさが来た』『青天を衝け』の両作で脚本を手がける大森美香氏が、どんな五代を描くのか楽しみだ。

(文=安倍川モチ子/フリーライター)