「騎手やめたら馬主になりたい」武豊と共通の夢を実現!? ウマ娘バブルで評判馬を次々に落札した藤田晋氏、大ヒットゲームの「弱点」克服に前進か

 12日、13日の2日間に渡り、苫小牧のノーザンホースパークで開催された「セレクトセール2021」。注目馬のセリを興味津々で見守るファンの声が、ネットの掲示板やSNSを賑わしている。

 一般人には想像もつかないような高額で、サラブレッドが落札されていく光景に、住む世界の違いを痛感させられたファンも少なくなかっただろう。

 そんな庶民には手の届かない場所で多くの評判馬を落札し、話題を独占していたのが大ヒットゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)を世に送り出したサイバーエージェントグループの代表取締役である藤田晋氏だ。

 藤田氏は5月21日に開催された2歳馬のセリ「千葉サラブレッドセール」にて、唯一のディープインパクト産駒プレミアステップスの19を、最高価格となる4億7010万円で落札したことでも話題になったばかり。

 多数の評判馬が上場される今年のセレクトセールでも、その動向に多くの関係者の興味が集まった。そんな藤田氏は大方の予想や期待に応えたのか、前日の1歳馬セールで早速、計12頭15億4100万円で落札。2日目の当歳馬セールでも「億超え」する馬を落札したように、藤田氏の爆買いの勢いは衰えず、その潤沢な資金力には驚嘆の声が上がった。

 だがその一方で、藤田氏の馬主業参入はある程度予想されていたことかもしれない。

 それは、今年1月に『GOETHE』(幻冬舎)にて公開された武豊騎手と対談の際、武豊騎手が「藤田さんが馬主として凱旋門賞を目指す、というのもありますよ(笑)」という話を振ると、藤田氏は「実は……興味は持っているんです。だんだん夢中になれることが減っていくなか、馬主って相当な趣味なんじゃないかと」と回答。

 続けて「僕も騎手をやめたら馬主になりたいと思っていますよ」と語った武豊騎手に、「やはり魅力あるんですね」と、満更でもないやりとりもされていたのである。藤田氏は、今でもたまに馬券を購入することがあるらしく、競馬に全く興味がなかったわけでもなさそうだ。

 次に気になるのが、馬主となった藤田氏が「ウマ娘」に与える影響だ。

 スペシャルウィークにサイレンススズカ、トウカイテイオーやシンボリルドルフ、メジロマックイーンやライスシャワーなど、過去の名馬がウマ娘として登場するのがゲームの魅力ではあるが、これらのキャラクターに共通しているのが過去の名馬であること。

 比較的最近ではキタサンブラックやサトノダイヤモンドなどもいるものの、多くは一昔、あるいは二昔も前に活躍した顔触れとなっている。勿論、オールドファンにとっては懐かしい名前だが、ライトファンには馴染みが薄いという側面がある。近年活躍した馬が登場すれば、より盛り上がりそうなものの、これには許可を取れなかったという、“大人の事情”がネックとなっている。

 しかし、藤田氏が馬主として参入することにより、競馬界への影響力や発言力が増せば、これまで許可の取れなかった馬のオーナーの態度が軟化することもあり得なくはない。

 そして何より、許可を取らないで済む自身の所有馬から活躍馬が出現すれば、ウマ娘の新キャラクターとしても需要が生まれるだろう。こういったことが実現するようなら、近年の名馬の登場が少ないというウマ娘の弱点克服への大きな足掛かりとなるのではないか。

 YouTubeでレース映像を使用する動画が、著作権侵害で次々と公開中止となる中、AbemaTV(サイバーエージェント系)に競馬中継への参入を期待する声も聞かれるようになった。

 それだけに、藤田氏が馬主となったことの影響は、各方面で大きな変化をもたらしそうだ。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。