12日、昨年の三冠を無敗で制したコントレイルが秋の天皇賞(G1)からの復帰に向けて調整していることが分かった。同馬は、1番人気に支持された4月の大阪杯(G1)をレイパパレの3着に敗れ、6月の宝塚記念(G1)を目標にしていたが、疲れが抜けず回避。その動向が注目されていた。
こちらについては、多くのファンも想定内といったところかもしれないが、驚かされたのはエフフォーリア(牡3、美浦・鹿戸雄一厩舎)の菊花賞回避という報せだ。
同馬を所有するキャロットファームから、秋は古馬相手の中距離G1を目標に2戦を予定していることが発表された。近年では1998年セイウンスカイ、2000年エアシャカール、12年ゴールドシップらが皐月賞(G1)、菊花賞(G1)を優勝して二冠を達成している。皐月賞馬のエフフォーリアも同じく変則二冠の期待があったが、それもなくなった。
だが、この選択がはたして正しかったのかどうかはわからない。
エフフォーリアは断然人気に支持されたダービーで、シャフリヤールの急襲の前にわずか10cm差で栄冠を逃がしたとはいえ、皐月賞を3馬身差で楽勝した馬だ。前走で不覚を取ったとはいえ、距離延長への不安は感じさせないだけの走りは見せている。
レース後のコメントでも、陣営のコメントでもディープインパクト産駒の切れに敗れたと見る向きもあり、菊花賞での巻き返しを期待したファンは決して少なくなかったはずだ。
にもかかわらず、秋の中距離路線参戦は、古馬となっての天皇賞・春(G1)にも使わないという意思表示にも受け取れる。
実際、レースを使われた結果、距離が長かったという明確な理由もない。さすがに見向きもされないのでは「一番強い馬が勝つ」といわれている菊花賞の権威も地に堕ちた感すらある。
また、長距離レースへの適性はエフフォーリアより、昨年のコントレイルの方が疑わしかったほどだ。こちらについては、陣営が現在でもベストは2000mと公言しているように、3000mの菊花賞には当初から乗り気ではなかった。
しかし、なぜそれでもコントレイルが菊花賞参戦に踏み切ったのかというと、それは偏に「三冠」の称号を手に入れることこそが、目的だったからだろう。
菊花賞のステップ神戸新聞杯(G2)まで、コントレイルは同世代を相手に文句なしの圧勝続き。距離適性に多少の不安があったとしても勝算があったからにほかならない。現実にはアリストテレスに首差まで詰め寄られての辛勝だったため、レース後にはもう長距離には使わないと、陣営から“絶縁宣言”も出されたほどだ。
とはいえ、無事に無敗で三冠を成し遂げたことにより、コントレイルは父ディープインパクトに続く無敗の三冠馬という栄誉を手にすることに成功。引退後の種牡馬生活を考えると、ライバルとの競争に大きなアドバンテージとなるに違いない。
これに対し、エフフォーリア陣営が菊花賞を目指さなかった最大の理由として、考えられるのはダービーで敗れたため、三冠が懸かっていないことだろう。もし、ダービーを優勝して無敗の二冠を達成していたなら、おそらく2年連続での無敗三冠馬を目指して菊花賞に出走していた可能性が高い。
ただ、古馬中長距離G1となると、国内の選択肢は自ずと秋の天皇賞、ジャパンC(G1)、暮れの有馬記念(G1)が候補となる。最有力候補となりそうなのは勿論、天皇賞だけにコントレイルだけでなく、グランアレグリアやダノンキングリー、凱旋門賞を諦めたレイパパレとの戦いもありそうだ。
さらに、ダービー馬シャフリヤールも全兄アルアインが菊花賞で7着と振るわなかっただけに、回避する可能性も十分考えられる。
諸々の事情を考慮すると、エフフォーリアの菊花賞回避は、同世代を相手に戦うよりも超ハードモードとなるかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。