7月に入り、「荒れる」ことでお馴染みの夏競馬が本格的に始まった。4日に行われた3歳重賞のラジオNIKKEI賞(G3)では、早速3連単の払戻が31万6180円と大波乱。多くのファンの頭を悩ませたことだろう。
一般的にメインレース終了時点で、収支がマイナスのファンの大半が考えることは1つ。最終レースを的中させ、マイナスをプラスにして巻き返すことである。
しかし、ラジオNIKKEI賞の後に行われた福島最終12Rでは、“逆転”を目論んで馬券を購入した一部のファンにとって阿鼻叫喚のハプニングが発生した。
原因となったのは、ホウオウルバン(牡3歳、美浦・池上昌和厩舎)である。
単勝オッズ10倍以下の馬が6頭いる混戦模様の一戦であったが、同馬は5番人気の支持を受けた。
同馬を管理する池上師は、「前走は疲れがあった。今回はチークピーシーズを着用。福島1700mは少し忙しいかもしれないが、地力の高さと馬具効果でカバーできれば」と、レース前には期待の大きさが読み取れるコメントをしていた。
しかし、同馬はスタートで後手を踏み、最後方からの追走を強いられる。徐々にポジションを上げていくのかと思いきや、勝負どころに差し掛かってもむしろ離される一方。池上師が少し忙しいとレース前に懸念していたが、少しばかりではなかった。結果的に最下位こそ免れたがタイムオーバーを適用されるほどの大敗を喫した。
その一方、レース後には同馬に期待していた一部のファンからは不満の声が噴出した。怒りの矛先は、見方によっては勝つ気のない無気力騎乗に見える、後ろから回って来ただけのポツン騎乗となった戸崎圭太騎手と池上師である。
ネットやSNSでは、「こんな状態でよく出そうと思ったな」「公正競馬とは何なのか」といった過激な意見も見られたほどだった。
しかも、ホウオウルバンは今回が約3ヶ月ぶりの実戦。確かに連戦による疲労で余力が残っていなかったという訳でもないだろう。池上師が話していたように、前走時のような疲労はないと考えるのが自然である。
実際、前走時の最終追い切りが美浦南Wで一杯に追って「71.5-55.9-41.9-14.0」であったのに対し、今回は同じコースで「66.8-51.7-38.3-12.9」を馬なりでマーク。少なくとも数字的には、前走より走れる状態にあったと考えられる。
そこで、浮上してくるのが、同馬が今回初めて着用した馬具のチークピーシーズである。チークピーシーズとは「頭絡の頬革にボア状のものを装着したもので、左右を見えにくくして前方に意識を集中させる効果を期待して用いられる」(JRA公式サイトより)という矯正馬具の一種である。
現役の有名馬では、オジュウチョウサン(牡10歳、美浦・和田正一厩舎)などが、この馬具を愛用している。最近では、ギベオン(牡6歳、栗東・藤原英昭厩舎)が、金鯱賞(G2)で大金星をあげたが、チークピーシーズを着用した効果もあったと考えられている。
ただ、こうした馬具の使用に一定の効果が見込める一方、逆効果も考えられる。田辺裕信騎手はかつて、自身のコラムにて「(マイナス効果は)警戒しすぎることでしょうか。効果がありすぎて進んでいこうとしない馬もいる」とコメントしている。
三冠馬で有名なオルフェーヴルは、12年天皇賞・春(G1)にて、チークピーシーズ同様の効果が見込めるブリンカーを初めて着用。しかし、レース本番では、なかなか進んでいこうとせず、単勝1.3倍の支持を集めながら11着と惨敗した。
今回のホウオウルバンもレースでの行きっぷりが、明らかに悪かった。現段階では故障や心房細動といった発表もされていないため、もしかしたらこれまで装着したことのなかったチークピーシーズが原因でレースに集中できなかったという可能性も考えられる。
タイムオーバーの規定により、ホウオウルバンは8月4日までレースに出走することはできないが、また競馬場で元気な姿を見せてくれることを祈るばかりだ。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。