日本競馬界の悲願、凱旋門賞(G1)制覇――。
1969年のスピードシンボリから始まったこの挑戦は、世界とのレベル差を痛感させられる「2桁着順」という結果から始まった。
それから30年後の1999年には、エルコンドルパサーが2着と健闘。当時ヨーロッパ最強と謳われたモンジューに対し半馬身差の接戦に持ち込んだレースは、多くの競馬ファンに悲願達成の実現が間近に迫っていることを感じさせた。
しかし、それから約22年。2000年代に入りナカヤマフェスタとオルフェーヴルが2着(延べ3回)と健闘したが、2021年現在も未だにその悲願は達成されていない。
今年も凱旋門賞(10月3日)まで3カ月を切ったが、何と言っても注目は宝塚記念(G1)の勝ち馬クロノジェネシス。2000年以降で接戦を演じたナカヤマフェスタとオルフェーヴルはどちらも宝塚記念を制しており、今年の同レースを2馬身半差で圧勝したクロノジェネシスにも勝利への期待がかかるのは当然だ。
クロノジェネシスの凱旋門賞挑戦には、日本のトップジョッキーである福永祐一騎手も言及。吉本興業所属の漫才コンビ・ビタミンSのお兄ちゃんが持つYouTubeチャンネル『お兄ちゃんネル』で持論を展開している。
「100m走が日本だとしたら、向こうは100mハードル。走り方一緒なわけないやん」
馬券攻略に役立ちそうな話など他にもボリュームある内容になっているので、詳細はそちらでご覧いただきたいが、欧州のレースを「ハードル競走」に例えたのは福永騎手ならではだろう。
人工的に作られた日本の高速馬場とは違い、欧州は自然をそのまま生かした馬場。路盤の保水性が高く、軟らかいことに加え、芝は沈み込む洋芝と日本よりも重たい。簡単に言えばパワーを要し、時計のかかる馬場である。
福永騎手は過去の事例を持ち出し「エルコンドルパサーみたいに長期滞在して徐々に馬を慣らしていって……まあディアドラもそうだけど、みんなやっぱり途中で馬が変わっていった」と、欧州の特殊な馬場に適応することの重要性を語っており、前哨戦を使わずに凱旋門賞に直行することが発表されているクロノジェネシスについては「短期決戦に行く場合は、やっぱ人為的に変える必要がある」と、人が教え込む必要性も論じた。
地元馬では1950年のタンティエームが4カ月ぶり、1965年のシーバードが約3カ月ぶりの出走で凱旋門賞に優勝しているが、殆どの勝ち馬は前哨戦などを使い短い間隔で出走。ましてや、クロノジェネシスについては初めての地で、ぶっつけ本番というは馬場への適応に不安が残る。
過去に日本馬が2着となった4回も、全て前哨戦を叩いていた。凱旋門賞に敗れたディープインパクト(3位入線から失格)が、宝塚記念からの直行だったことも気にかかる。
ただ、クロノジェネシスの父バゴは、凱旋門賞の勝ち馬。日本の主要血統であるディープインパクト産駒とは、そもそもの適性も違うことも事実だ。
福永騎手は「ボコボコしたところならさ、人間だって突っ込んで走れないでしょ。躓かんとこうと思ったら体を起こすやん」とパリロンシャン競馬場の馬場を解説。続けて「外国(欧州)の馬ってのは基本的に頭高いよ。日本の馬、アメリカの馬はやっぱ頭が低い。スタートして躓くことがあっても、普通に走ってて(日本なら)躓くことないやん。特にディープの子供は頭が低いから……」と、ディープインパクト産駒が欧州向きではないことを示唆した。
一方で、クロノジェネシスに対しては「血統的にはバゴやし、お父さん凱旋門賞馬やし、まあ血統的にはそのこなせる下地は当然あるし、牝馬だけど馬格もあるしパワーもあるから、いいと思うけど。走り方を少し向こうの馬場にアジャストさせるように変えていければ」とチャンスを見込む。
凱旋門賞馬の父を持つ日本馬が、この悲願に挑戦するのは今回が初。クロノジェネシス好走のカギは、自身の適応力にかかっていそうだ。
(文=北野なるはや)
<著者プロフィール>
某競走馬育成牧場で働いた後、様々なジャンルの仕事で競馬関連会社を転々とする。その後、好きが高じて趣味でプログラミングを学習。馬券には一切のロマンを挟まないデータ派であるが、POG(ペーパーオーナーゲーム)では馬体派という奇妙な一面も持つ。