4日、函館競馬場で行われた巴賞(OP)で、C.ルメール騎手の2番人気サトノエルドール(牡5、美浦・国枝栄厩舎)が勝利。
2着に7番人気マイネルファンロン、3着には6番人気ナイママが入り、3連単の払戻は4万230円。武豊騎手が騎乗した1番人気のワールドウインズは5着に敗れた。
この勝利により、C.ルメール騎手は7年連続で7度目となるJRA年間100勝を自身最速で達成。昨年に続いて今年もこの男がリーディングを手にすることが、ほぼ既定路線となりそうだ。
かといって、単純にいい馬に乗っているだけでリーディングを取れる訳でもない。
優勝劣敗が常の世界だけに、結果を残せないものは容赦なく淘汰されていく。ルメール騎手にこれまで実力馬の依頼が集中することは、それに見合うだけの信頼を勝ち取っているからに他ならない。
巴賞にしても表面的な結果では、2番人気の馬で勝利を挙げただけのように思えるが、内容的には、各馬に騎乗した騎手の手腕が問われたレースでもあった。
「スタートは遅かったけど、1コーナーでハミを取ってくれた。ペースが遅かったので早めにポジションを上げて行きました」
ルメール騎手がそう振り返ったように、ペース判断が勝負の決め手となった。
11頭立ての芝1800m戦。サトノエルドールとルメール騎手のコンビは、スタートで後手を踏んで最後方からの追走。これに対し、ハナを奪ったマドラスチェックの刻んだレースラップは1000m通過が61秒5のスローペース。開幕したばかりの函館は、まだまだ馬場状態が良好で前に付けた馬に有利。後ろからの馬は苦しい競馬を強いられた。
だが、そこで即座に動く判断が出来るところがルメール騎手の巧さだろう。ペースが遅いと見ると、前半800m過ぎから徐々に進出する。3コーナー過ぎには早くも3番手の好位までポジションを押し上げた。
最後の直線に入ってもサトノエルドールの脚色は衰えず、ゴール前で粘るマイネルファンロンを交わしてクビ差交わしてゴール。馬の強さよりも騎手の巧さが印象に残るレースだった。
「逃げたマドラスチェックは久々の芝で、ジョッキーも手探りの状態で乗っていましたからペースが緩んだのも当然でした。もし、ルメール騎手が後方のまま動かなければ、俗にいう“行った行った”の展開で、おそらく前の馬が残ったでしょう。
ですが、サトノエルドールがまくりを仕掛けたことにより、先行勢は息を入れる余裕がなくなりました。ペースが緩んだタイミングを見逃さずに勝負を仕掛けたルメール騎手の好判断が光りましたね」(競馬記者)
また、同じような展開でルメール騎手の好判断が光った代表的なレースといえば、レイデオロで制した2017年の日本ダービー(G1)が思い浮かぶ。
このときは横山典弘騎手のマイスタイルが超スローで逃げたため、後方待機組は脚を余して末脚不発の展開。そんな中でルメール騎手とレイデオロのコンビは、スローを見越してポジションを上げる。一気に先団へ取りつき、直線2番手から押し切った。
これに対し、1番人気を背負ったM.デムーロ騎手のアドミラブルは後方待機策が仇となり、上がり3ハロン最速の脚を駆使しながらも、3着まで追い上げるのが精一杯。先手を打ったルメール騎手と、後手に回ったデムーロ騎手の明暗が分かれる結果となった。
ちなみに、巴賞はこの日のWIN5対象レースの3つ目。1→1→2→8→4番人気の組み合わせで59万7030円の払戻しとなった。2番人気のサトノエルドールが敗れ、5番人気マイネルファンロンが勝利していたなら、100万円台に突入していたかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。