先週の宝塚記念(G1)は、C.ルメール騎手騎乗のクロノジェネシスが優勝した。
北村友一騎手の負傷により、代打のルメール騎手はクロノジェネシスに初騎乗ながら冷静にエスコート。戦前は海外遠征明け初戦や、ルメール騎手自身が宝塚記念を未勝利であることが不安視されていた。しかし、蓋を開けてみれば、それらを払拭する圧巻の2馬身差Vであった。
そんな好調なルメール騎手は30日に、地方競馬の上半期総決算・帝王賞(G1)に騎乗。パートナーはダート重賞を連勝中のクリンチャー(牡7歳、栗東・宮本博厩舎)だ。
同馬は18年の京都記念(G2)優勝や凱旋門賞(G1)にも出走するなど芝で活躍していた馬だったが、新境地を求めてダートへ転向した。ここまでダートで10戦して掲示板を外したのが1回のみと安定感は抜群。それだけに、ルメール騎手が騎乗すれば待望のG1勝ちも夢ではない。
しかし、残念ながらルメール騎手がクリンチャーに騎乗しても、“鬼に金棒”とはならない可能性が高い。
なぜなら、ルメール騎手が地方競馬を苦手としているからだ。ルメール騎手は、昨年7月から今月までの1年間、JRAダート重賞で計9レースに騎乗して「3-1-1-4」という成績。勝率33.3%、複勝率55.6%と非常に優秀だ。
一方、昨年の帝王賞から1年間で地方のダート重賞には計13レース騎乗したものの「0-2-3-8」と冴えない。騎乗レース数が少ないとはいえ、得意としているJRAの重賞に対し、地方は未勝利と振るわない。最後のダートグレード重賞勝利は、昨年5月の兵庫CSまで遡る。
競馬は「馬7割、騎手3割」と言われているように騎手が全てではない。ただ、騎乗した馬が弱かったため、成績が悪いだけという声もあるだろう。
ただ、当該期間におけるルメール騎手の騎乗馬は、JBCレディスクラシック(G1)のローザノワール(6番人気)を除き、全て単勝オッズ3番人気以内の人気馬ばかり。
昨年のチャンピオンズC(G1)優勝馬チュウワウィザードや海外でも好走実績豊富マテラスカイなど勝ち負けを期待できる馬もいた。
また、中にはJRA重賞では考えられないような不可解な騎乗もあった。
昨年9月に船橋競馬場で行われた日本テレビ(G2)で、ルメール騎手はアナザートゥルースに騎乗。同馬は、その年の同競馬場で行われたダイオライト記念(G2)をルメール騎手とのコンビで制している点などが評価され、1番人気に推された。
8枠14番の大外から好スタートを決めた同馬は、サルサディオーネと過激とも見てとれる先行争いを演じた。このレースの前半3Fが、「11.8-10.2-11.8」であることから、2頭の主導権争いが如何に苛烈であったかが伝わってくる。結局、同馬はオーバーペースがたたり、後半に失速し5着。馬に無理をさせない、冷静なレース運びに定評のあるルメール騎手としては“らしくない”騎乗だった。
ルメール騎手が地方競馬になると成績が下降する理由として、小回りコースやダート競馬がそもそも苦手など様々な説がある。
現在、重賞連勝中と勢いのあるクリンチャーだが、ルメール騎手とのコンビを手放しで歓迎するにはいかないかもしれない。
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。