ダウンタウン・松本人志のツイッターでの発言が、日本のテレビ業界や各メディアに少なからず影響を与えている。
松本が最初に牙をむいたのは、6月12日放送の『キングオブコントの会』(TBS系)の世帯視聴率を報じたネットニュースに対して。「ネットニュースっていつまで“世帯”視聴率を記事にするんやろう?その指標あんま関係ないねんけど。。。」と苦言を呈した。
さらに、同番組が13~49歳のコア視聴率では横並びトップだったことを挙げ、「低視聴率みたいなミスリードは番組を観てくれた皆さん。後輩達に申し訳ない気がします」と、楽しんでいた視聴者や同番組に参加した後輩芸人に対する思いを語った。
「同番組の視聴率は世帯6.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で、個人は4.1%。3時間という長丁場のため、1時間枠が多かったこの日の他局のレギュラー番組と一概に比較はできませんが、M2(男性35~49歳)は5.4%、F2(女性35~49歳)は6.9%と、同時間帯の他番組を大きく引き離しています。特に顕著なのが、M2の積極視聴です。この時間でM2の個人が5%を超えてくることは、ほぼない。
これは『キングオブコント』のブランド力はもちろん、“松本人志が民放で20年ぶりのコント”という宣伝も大きく寄与したものと思われます。M2、F2は『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)の直撃世代ですからね」(テレビ局関係者)
その1日後、今度は2度目の全国放送となった『千鳥の相席食堂ゴールデンSP』(テレビ朝日系)の世帯視聴率が5.8%だったことを報じた別のネットニュースについて、松本は「これぞ勉強不足のバカライター。コア視聴率はしっかりとってる。じゃないと第二弾あるわけない」と憤慨していた。
「今回の『相席食堂SP』の個人は3.3%。T層(男女13~19歳)=2.3%、M1(男性20~34歳)=2.8%、M2=3.6%、F1(女性20~34歳)=3.2%、F2=3.6%でした。この日、同じ2時間番組でのコアのトップは『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)、『マツコの知らない世界』(TBS系)になっています」(同)
松本はこれまでも、自身に関する報道に相違点などがあればツイッターで反論したり訂正を求めたりしてきたが、視聴率に関する記事にここまで強い口調で異論をぶつけたのは異例だろう。
さらに松本は、この件について20日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)でも「大前提としてネットニュースで視聴率を記事にすること自体、やらなくていいと思う。視聴者には関係ないことなんで」とバッサリ。
その上で、「世帯視聴率が今、高くてもコア視聴率が低いと番組は終わっちゃうんです」「逆に言うとコア視聴率さえ高ければ、世帯視聴率が低くても続くんです。今、重要視されているのは、スポンサーもテレビ局もコア視聴率の方なんです」と説明していた。
『紅白』や『箱根駅伝』の視聴率記事も消滅?
これらの発言以降、メディア各社は視聴率に関する記事について自重気味のところがあるようだ。
「確かに、世帯視聴率だけを報じる記事は心なしか減ったように感じますし、主要ポータルサイトのトップに表示される機会も少なくなったように思います。ただ、業界への影響力が強い松本とはいえ、単にいちタレントの発言で瞬時に“右向け右”と日和ってしまうのもどうかと思いますが……。
また、この論法でいくと、『NHK紅白歌合戦』の視聴率が何%だったとか、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の大みそか特番『笑ってはいけないシリーズ』の視聴率が『紅白』に何ポイントまで迫ったとか、『箱根駅伝』(同)の瞬間最高視聴率が何%といった、これまで“世帯視聴率”が切り取られる形で伝えられていた“風物詩”的なニュースも、コア視聴率のみのピックアップに転換せざるを得ないでしょう。もしくは、極論を言えば、視聴率に関する記事が完全消滅することを意味します」(同)
松本の発言で浜田がピンチになる理由
また、コア視聴率を重視することによって、相方・浜田雅功のレギュラー番組がシビアな目で見られることが明白だという。
「浜田はゴールデンで『プレバト!!』『オオカミ少年』(ともにTBS系)、『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)、『芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~』(テレビ朝日系)の4本を担当していますが、いずれも同時間帯のコアでトップではありません。つまり、松本の論理でいけば、浜田の番組は打ち切りの危険度が増す、ということになります」(同)
では、各番組の現状はいったいどうなっているのだろうか?
「『トリニクって何の肉!?』は幾度となくリニューアルを重ねて、人気特番『芸能人格付けチェック』(テレビ朝日系)の亜流ともいえる現在の企画に落ち着いていますが、コアのトップは裏の『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)。また、『オオカミ少年』は世帯・個人・コアともに民放最下位ですし、『ジャンク』は個人視聴率でテレ東とほぼ互角の争いをしています」(同)
では、毎回のように「同時間帯トップ!」と報じられる『プレバト!!』はどうなのだろうか?
「10日放送の『プレバト!!』は世帯11.9%、個人6.6%と表面上は人気番組のように見えますが、コアはまったく獲得していません。T層=1.0%、M1=0.7%、M2=1.6%、F1=2.2%、F2=2.9%となっています。対して、この日の『THE突破ファイル』は2時間ということもありましたが、世帯こそ9.2%ですが、個人5.7%で、T層の4.3%をはじめ、F1=5.9%、F2=8.4%とコアを独占。ちなみに、男女4~12歳の層は『Kids』というのですが、これは10.0%と、ゴールデンはもちろん、日曜のテレ朝のヒーローものでもあまり見たことがない高視聴率を記録しています」(同)
『めざまし8』もコア視聴率は低迷
さらに、松本の「コア視聴率重視」発言は、これまで世帯視聴率の高さでもてはやされてきた番組が次々にマークされることを意味するという。
「たとえば、TBSの日曜朝から昼の『サンデーモーニング』『サンデー・ジャポン』『アッコにおまかせ!』はいずれも高視聴率と言われていますが、実際はF3(女性50歳以上)とM3(男性50歳以上)でもっているのが正直なところです。コア層の視聴率で見ると、それぞれ『シューイチ』(日本テレビ系)、『ワイドナショー』(フジテレビ系)、『スクール革命!』(日本テレビ系)がトップに立つことになります。
また、平日朝の高視聴率ワイドショー『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)も年配の視聴者の支持が厚いだけで、コアのトップは『スッキリ』(日本テレビ系)です」(同)
他にも、知名度は高いがコア視聴率が振るわない番組は山ほどあるという。
「『めざまし8』『ノンストップ!』『バイキングMORE』という朝から昼にかけてのフジテレビの報道・ワイドショーもそうですし、『NHKのど自慢』や『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日系)といった日曜昼の長寿番組も同様です。さらに、『ナニコレ珍百景』『ポツンと一軒家』『ザワつく!金曜日』といったテレ朝の人気番組も、コアのトップは他局に明け渡しています。
つまり、松本の『スポンサーもテレビ局も(重視するのは)コア視聴率の方なんです』という主張が“パンドラの箱を開けた”と言われる所以は、それまでグレーにされていた視聴率に対する考え方を一刀両断してしまったところにあるわけです。さらにいえば、視聴者のメインは年配層ですが、若年層も少なからず楽しんでいるような番組もテレビから追放してしまうような、危険性のある発言だったということです」(同)
『アタック25』後番組も若者向けに
確かに『のど自慢』を若者が観てもいいし、現にオンエア中は出場者に対するツッコミでツイッターが盛り上がる。つまり、年齢を問わず誰でも平等に観られるのがテレビの良さだったはずだが、今回の発言は視聴者の世代を分断してしまう可能性もはらんだものだったということだ。一方的な報道に対する憤りゆえの主張とはいえ、今後も大いに波紋を呼ぶことになるだろう。
「さらに言えば、M3層に該当する57歳の松本の発言によって、今後は自分の同世代が観られる番組が減ることにもなりかねない」(同)
そんな中、46年もの歴史を持つ『パネルクイズ アタック25』(テレビ朝日系)が今秋で終了すると報じられた。報道によると「後番組は若年層をターゲットにした番組になる予定」だという。女性の4人に1人が70歳以上という超高齢社会で、テレビ業界は数少ない若者の争奪戦を繰り広げているわけだ。今後、テレビはどうなっていくのだろうか?
(文=編集部)