30日に行われる帝王賞(G1)に交流G1連勝中の地方馬カジノフォンテン(牡5歳、船橋・山下貴之厩舎)が出走する。
管理する山下師は「中間は予定通りのメニューを消化。いい状態で臨める」と自信をのぞかせている。同馬の相棒である張田昂騎手は、28日に通算500勝のメモリアルを達成。人馬ともに最高の状態で、上半期最後の大一番に挑む。
そんなカジノフォンテンの前に立ちふさがるのが中央馬。同馬を東京大賞典(G1)において、クビ差で差し切ったオメガパフューム(牡6歳、栗東・安田翔伍厩舎)、ドバイWC(G1)2着で昨年のチャンピオンズC(G1)優勝馬チュウワウィザード(牡6歳、栗東・大久保龍志厩舎)を筆頭に強敵が揃った。
だが、カジノフォンテンのライバルは中央馬だけではない。同じく船橋所属のミューチャリー(牡5歳、船橋・矢野義幸厩舎)も怖い1頭である。
同馬は、2年続けてフェブラリーS(G1)に参戦するなど、中央馬相手に何度も勝負を挑み続けてきた地方馬である。また、カジノフォンテンの同期であり、何度も地方競馬で対戦し、互いに切磋琢磨してきたライバルである。本格化前とはいえカジノフォンテン相手には何度も先着した経験がある。
しかし、ミューチャリーはカジノフォンテンと異なり、中央交流戦では19年JDD(G1)3着が最高順位。掲示板歴は6度誇るが上位3頭以内になかなか入線できていないのが現状だ。
それには、ミューチャリーの戦法が関係している。同馬の戦法は、基本的に追い込み。出脚がつかないタイプのため、デビュー戦以来同馬のレースに毎回騎乗している御神本訓史騎手が追い込み戦法を教え込んできた。
御神本騎手の教育が功を奏し、地方馬同士のレースなら豪快な追い込み競馬で勝ち星を量産してきたが、中央馬相手だとそうはうまくいかない。
そもそも、ダート競馬は加速が難しいため、基本的にスピードに乗って先行した馬が有利である。中央馬が交じったハイレベルなレースの場合、その傾向が顕著である。また、地方の競馬場は基本的に直線コースの長さが短い。勝負どころで先頭集団が射程圏内の位置にいなければ勝ち切るのは難しい。
カジノフォンテンの場合、スタートが速く前目につけることができる器用なタイプ。高い競走能力に相まって地方競馬に合った脚質であることがG1連勝劇を生んでいる。
そんな、ミューチャリーだが、5月に行われた南関重賞の大井記念で新たな戦法を編み出した。
それが、捲りである。
同馬の弱点の1つに道中で位置を取りに行くと終いの脚が鈍くなる点があった。昨年の川崎記念(G1)では好位でレースを進めたが自慢の末脚が不発に終わった。そのため、どうしても直線一気の競馬に徹する他なかった。
しかし、大井記念では勝負どころで徐々に位置を上げて、4コーナーでは2番手まで浮上。直線に入ると更に加速し、2着に6馬身差をつける圧勝。相手が南関東競馬所属馬であったため、中央交流G1に比べレベルが低いことは否めない。しかし、相手の中には元々中央競馬で活躍していた馬や4月にカジノフォンテンと接戦を演じたタービランスなどの強豪がいたのも事実である。
それら強豪を新戦法でねじ伏せた。それもかしわ記念(G1)から中1週の強行軍でやり遂げたのは“強い証”だろう。
管理する矢野師は「精神的に大人になってきた感じで、力もつけてきている」と成長をアピール。確実にミューチャリーは変わってきている。ミューチャリーの大井2000m持ち時計はメンバー3位。また、半年前の東京大賞典は首位と0秒2差。走る下地は揃っている。
中央馬という高い壁と同期ライバルの躍進に辛酸を舐め続けてきたミューチャリーだが、逆襲の時はきた。成長した今回、悲願のG1勝ちへ突き進む。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。