23日、JRA(日本中央競馬会)は昨年11月7日の東京4Rで1位入線したソーヴァリアント(牡3歳、美浦・大竹正博厩舎)から、JRAが禁止薬物に定めるカフェインが検出された件で、管理する大竹調教師に24日から8月23日までの2カ月間の調教停止処分とすることを発表した。
なお、大竹厩舎で管理する58頭は、すべて手塚貴久厩舎へ転厩することも同時に発表されている。
昨年11月から半年以上が経過していながら「異例」ともいえる2カ月間の調教停止処分という、非常に重い処分で決着した本件。本来なら大竹厩舎に処分に値するだけの重大な過失があってもおかしくないが、JRAの審判担当となる福田正二理事のコメントによると「現在までに原因の解明までは至っていない」とのこと。
また、美浦トレセンの松窪隆一公正室長が「事案発生から約8カ月が経つこともあり、いったんの区切りをつけるべきと考えた」と話すなど、なんとも中途半端な状況での処分決定となったようだ。
こういった背景もあり、JRAの発表直後からネット上の競馬ファンの間ではSNSや掲示板などで「原因が特定できてない段階なのに、処分が重すぎる気が」「(現状)管理責任だけで2カ月間の調教停止って」「警察はまだ捜査を続けてるのに処分?」といった今回の決定について疑問の声が相次いでいる。
ただ、そういった声はファンの間だけではなさそうだ。現場の記者が語る。
「ちょっと驚きましたね。JRAサイドによると、過去にも同様のケース(原因不明の禁止薬物事案、1989年のセンターアビー、1993年のファーストサクセス)があった際にも2カ月間の調教停止処分としていたことで、今回も同様の処分となったそうです。
ただ、ここまで処分がずれ込んだということは当然、大竹厩舎に非がない可能性が考慮されていたからで、ここに来て原因が特定できないから過去の事例に倣って2カ月間の調教停止という処分には、関係者の間でも『大竹厩舎が気の毒』という声もありますね」(競馬記者)
記者曰く、関係者がそういった印象を持つのも、過去に今回のソーヴァリアントと同様に、レース後にカフェインが検出されながらも、“無罪”となった事例があったからだという。
「実は2015年にも小西一男厩舎(美浦)のピンクブーケという馬から、12月のレースを勝った後にカフェインが検出されました。ただ、その時は捜査を行った結果、米国産の飼料添加物の製造過程でカフェインが混入したとのことで『小西厩舎に非はない』として処分は行われませんでした。
ちなみに当時、小西厩舎のスタッフが購入した、カフェインが混入された競走馬用のサプリメントはトレセン内のJRAファシリティーズで販売されていた物だそうです。当然、競走馬理化学研究所の検査をすでにパスしていた物でした(後日、製造元の不手際並びに報告の欠陥があったことが判明)。
また、製造過程で禁止薬物が混入したケースといえば、やはり156頭という前代未聞の競走除外となった2019年のグリーンカル事件が思い出されますね。特にグリーンカルの流通・販売を行っていたのは主にJRAファシリティーズなどの4社。文字通りJRAの関連会社ということもあって、現場とJRAとの間で大きなわだかまりの残る結果となりました」(同)
そういった過去があっては、今回の大竹厩舎の処分に現場が戦々恐々となるのも当然か。
あくまで可能性だが、もし今回のカフェイン検出が上記のケース同様、製造元などの不手際によって起こったことと判明すれば、大竹厩舎はいわば“地雷”を踏んでしまっただけで、小西厩舎同様、処分を受ける必要がなかったことにもなりかねない。
無論、福田理事が「警視庁に捜査を依頼するとともに、必要な調査を尽くしてまいりました」とコメントしている通り、約8カ月も調査を重ねてきたのだから、JRAもありとあらゆる可能性を考慮した上での処分決定だろう。
ただ、もし本件が6年前の小西厩舎のピンクブーケの件と同様、ソーヴァリアントが摂取した物の中に米国など海外が製造元となる製品が絡んでいれば、やはり捜査に限界があってもおかしくはない。
いずれにせよ、本件はまだ完全には決着しておらず、警察が捜査を継続する以上、大竹厩舎の“逆転無罪”もあり得るということだ。もしそうなった場合、現場とJRAの溝はますます深まることになるかもしれない。(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。