先週は今年デビューするキタサンブラック、ドレフォン、シルバーステート、イスラボニータなどの新種牡馬を紹介した。どれも魅力的な馬ばかりだが、この新種牡馬の壁となる最大の存在を忘れてはならない。それがディープインパクトだ。
残り2世代となったディープインパクトだが、現2歳世代は113頭が競走馬登録されている。その1頭であるコマンドラインは早くも新馬戦を快勝し、その素質の高さから来年の日本ダービー候補と評価も高い。しかし、まだまだ粒ぞろいの素質馬がおり、これから秋に向けて続々デビューを控えている。
ディープインパクト産駒はここまで日本ダービーを7勝し、コントレイルがクラシック三冠を、さらにジェンティルドンナが牝馬三冠を達成するなど、その活躍は史上最高種牡馬と名高い。当然のことながら、来年のクラシック戦線に向けても中心は譲れないところだろう。
そんな2021年のディープインパクト2歳世代をチェックし、その中で来年のダービー候補となり得る注目の20頭を紹介する。なお今回は血統・厩舎・生産者・誕生日などを踏まえ、独自の指標で日本ダービー候補としての評価を採点する。
(4つの指標で各項目5点満点 最大20点)
■2021-2022年デビューのディープインパクト産駒 期待馬20頭
1位:ディーンズリスター【19点】
血 統【5】母ラヴズオンリーミー(母父Storm Cat)
厩 舎【5】矢作芳人(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】2/14
ラヴズオンリーユーの全弟で期待は大。サンデーレーシングにて1億5000万円(1口375万円×40口)で募集された期待馬。実は話題のコマンドラインより評価は上だ。サンデーレーシングの同馬紹介文には「父(ディープインパクト)が晩年に残した最高傑作」と絶大な評価。当然ノーザンファームの生産馬は満点の5点。さらに血統も文句なしで、矢作厩舎はコントレイルとディープブリランテで日本ダービー2勝と非の打ち所がない状況。2月生まれはディープインパクト産駒の日本ダービー馬7頭中1頭に該当。
2位:サンセットクラウド【18点】
血 統【4】母ロードクロサイト(母父Unbridled’s Song)
厩 舎【5】矢作芳人(栗東)
生 産【5】ノースヒルズ
誕生日【4】3/7
昨年の三冠馬コントレイルの全弟だが、同馬は芦毛なので母ロードクロサイトの血が強く出ている可能性がある。その場合は短距離向きになりそうで、日本ダービーの2400mは長いかも。ノースヒルズの生産馬で5点。名門矢作厩舎も満点評価だが、コントレイル以外の兄姉が今一つの成績なので、全弟だからといって過度な期待はできない。とはいえ兄同様の能力があれば兄弟制覇も現実に。
3位:コマンドライン【17点】
血 統【5】母コンドコマンド(母父Tiz Wonderful)
厩 舎【3】国枝栄(美浦)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】2/20
サンデーレーシングで募集額1億4000万円。ノーザンファームの生産馬は満点の5点。血統的にも全兄アルジャンナが結果を出しており馬場適性は上々。ただし国枝厩舎の活躍馬は牝馬に集中し、3歳のG1レースも牡馬は未勝利で減点。2月生まれはディープインパクト産駒の日本ダービー馬7頭中1頭に該当。すでに新馬戦を勝利し順調度は一番。
3位:ダノンマイソウル【17点】
血 統【3】母フォエヴァーダーリング(母父Congrats)
厩 舎【5】矢作芳人(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】2/18
セレクトセールで4億円。ダノンのディープインパクト産駒はこのランキングに4頭が揃うなど素質馬が揃ったが、その中でもっとも高額だった馬。母父CongratsはA.P.Indy産駒でアメリカのG2を2勝と実績は今一つ。BMSでハートレーが重賞勝利も他に目立った活躍馬は不在で距離も2000m以下向き。半姉モンファボリはFrankel産駒で短距離向きだったが、ディープインパクトに変わって距離適性がどう出るか。厩舎の評判は高く、先日ゲート試験に合格し再放牧。デビューは秋以降とのこと。
3位:トゥデイイズザデイ【17点】
血 統【3】母キトゥンズクイーン(母父Kitten’s Joy)
厩 舎【4】池江泰寿(栗東)
生 産【5】ノースヒルズ
誕生日【5】4/8
日本ダービー3勝のノースヒルズ生産馬は5点満点。半兄ヴィヴァン(父ハーツクライ)は新馬戦でシャフリヤールと同タイムの2着。ディープインパクトと母父Kitten’s Joyの相性は悪くないが距離に不安も。池江厩舎はオルフェーヴルで日本ダービーを勝利するも、2017年の63勝をピークに46→45→38勝と年々成績が降下。今年もまだ重賞未勝利と不振なのは懸念材料。4月生まれはディープインパクト産駒の日本ダービー馬7頭中2頭に該当。
3位:リアド【17点】
血 統【3】母タイタンクイーン(母父Tiznow)
厩 舎【5】友道康夫(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】2/17
アドマイヤの近藤利一氏がセレクトセールで4億7000万円で落札するも、オーナーは大塚亮一氏に変わった。セレクトセールの4億円超え落札馬は過去の傾向から目立った活躍馬はいない。兄姉の成績や血統的にも2000mがギリギリといった印象。ノーザンファームの生産馬、ワグネリアンとマカヒキで日本ダービーを制した友道厩舎で期待が高まるも、あと一押しに欠ける印象。
3位:ジャスティンパレス【17点】
血 統【4】母パレスルーマー(母父Royal Anthem)
厩 舎【3】杉山晴紀(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【5】4/12
セレクトセールで1億9000万円、そしてノーザンファームの生産馬。半兄Palace MaliceはアメリカのG1ベルモントSの優勝馬という良血。ただし本馬の全姉パラッツォレジーナは日本で4戦未勝利。杉山厩舎はデアリングタクトでブレイクも、ディープインパクト産駒の管理は同馬が初めて。また牡馬クラシックでも活躍馬は不在と経験不足が否めない部分はある。
8位:コリエンテス【16点】
血 統【3】母イスパニダ(母父Pure Prize)
厩 舎【4】堀宣行(美浦)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】3/23
シルクレーシングで1億円の募集馬。ノーザンファームの生産馬は満点の5点。母系にStorm Catの血がありキズナに近い配合も、日本の馬場適性は未知数。堀厩舎はドゥラメンテで日本ダービーを勝利し、さらにモーリス、サリオスなどを管理した名門。ただしディープインパクト産駒7頭の日本ダービー馬はすべて関西の厩舎で関東の厩舎は減点。3月生まれはディープインパクト産駒の日本ダービー馬7頭中1頭に該当。
8位:キラーアビリティ【16点】
血 統【3】母キラーグレイシス(母父Congaree)
厩 舎【3】斉藤崇史(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【5】1/27
キャロットファームで総額1億円の募集馬。ノーザンファームの生産馬は満点の5点。兄姉で活躍馬はなく、母父Congareeは日本でも産駒が少なく未知数。斉藤厩舎はクロノジェネシスが活躍も、牡馬クラシックで活躍馬は無し。1月生まれはディープインパクト産駒の日本ダービー馬7頭中2頭に該当。順調なら宝塚記念当日にデビュー予定。
8位:ダノンギャラクシー【16点】
血 統【4】母ベネンシアドール(母父キングカメハメハ)
厩 舎【3】国枝栄(美浦)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】2/26
コマンドラインとともに国枝厩舎が管理するディープインパクト四天王の一頭。ファンの中にはこっちの方が上との意見も。セレクトセールで税込3億円を超える落札額。全姉がジャパンCで2着のデニムアンドルビーなら馬場適性も血統的にも申し分なし。母父キングカメハメハはブラストワンピース、インディチャンプ、デアリングタクト、ソダシなど活躍馬多数。国枝厩舎の評価はコマンドラインを参照。
8位:サトノアヴァロン【16点】
血 統【3】母サトノシュテルン(母父Distorted Humor)
厩 舎【4】須貝尚介(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】3/7
母サトノシュテルンは未勝利も、Mr. Prospector、Danzig、Northern Dancerのクロスが内包された良血馬。母父Distorted Humorの産駒はダートで活躍馬が多く、BMSとしてはスマイルカナやサトノフェイバーが重賞を勝利も距離適性的に日本ダービー向きとは言い難い。ノーザンファームの生産馬は満点の5点。須貝厩舎はソダシ、ゴールドシップなど活躍馬多数も日本ダービーは未勝利。今週デビュー予定だったが腰の違和感で放牧。デビューは秋以降になりそうだ。
8位:ローマンネイチャー【16点】
血 統【4】母キューティゴールド(母父フレンチデピュティ)
厩 舎【3】高野友和(栗東)
生 産【4】白老ファーム
誕生日【5】1/18
シルクレーシングで募集総額1億2000万円だから相当な期待馬だ。全姉ショウナンパンドラはジャパンCを制しており、白老ファームはオルフェーヴルやイスラボニータを生産したが、牡馬のディープインパクト産駒でG1馬はゼロ。同馬の全兄セントオブゴールドは、シルクレーシングで募集総額1億円にも関わらずいまだ2勝のみであり、兄姉で活躍したのはショウナンパンドラのみというのは気になる点。母父フレンチデピュティはBMSでマカヒキが日本ダービーを勝利。1月生まれのディープインパクト産駒は2頭が日本ダービーを勝利。高野厩舎は宝塚記念に出走するレイパパレとショウナンパンドラでG1を勝利。牡馬クラシックはあまり縁がなかったが、期待の一頭に違いない。順調なら宝塚記念当日にデビュー予定。
8位:フォーグッド【16点】
血 統【3】母ウィキッドリーパーフェクト(母父Congrats)
厩 舎【3】国枝栄(美浦)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【5】4/26
セレクトセールで9600万円という、ノーザンファーム生産の良血牡馬らしからぬ評価。母父Congratsの産駒は日本で結果が出ず、芝では1勝のみでダート向き。全兄ハートレーはサンデーレーシングで1億円で募集されたがホープフルSを含め2勝止まり。その他の兄姉も活躍せず、そのあたりが低価格に繋がったか。
14位:チェルノボーグ【15点】
血 統【3】母コンテスティッド(母父Ghostzapper)
厩 舎【5】藤原英昭(栗東)
生 産【4】社台ファーム
誕生日【3】5/15
金鯱賞を勝利したギベオンの全弟。ただし社台レースホースのギベオンは募集総額1億円、対して同馬は8000万円と2割ダウン。社台ファームのディープインパクト産駒は、日本ダービーどころか3歳牡馬クラシックの勝ち馬はいない。兄姉の成績や母父Ghostzapperの傾向から2000mまでが適性距離の印象。藤原厩舎は今年シャフリヤールで日本ダービーを勝利し、兄ギベオンも管理している。ただし5月の遅生まれで、馬の成長を優先する藤原調教師の方針から日本ダービーに間に合うか微妙(ギベオンは2月生まれ)。
14位:ショウナンアデイブ【15点】
血 統【3】母シーヴ(母父Mineshaft)
厩 舎【3】高野友和(栗東)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【4】2/1
昨年のセレクトセールで5億1000万円(税込5億6100万円)で落札された馬。全兄サトノスカイターフ(父ディープインパクト)はクラシックに間に合わず、今も1勝馬のまま。母父Mineshaft産駒は日本国内ではダートでしか勝利していない(芝は20戦全敗)。BMSとしてもダートに偏重しており日本の芝でどうか。ノーザンファーム産駒で2月生まれは魅力だが、セレクトセールの高額馬は走らないジンクスも気になる。
14位:ディサイド【15点】
血 統【3】母ラヴェリータ(母父Unbridled’s Song)
厩 舎【3】高野友和(栗東)
生 産【5】ノースヒルズ
誕生日【4】3/5
ノースヒルズのディープインパクト産駒で母父Unbridled’s Songはコントレイルと同じも、芦毛なので母側の血が濃い印象。母ラヴェリータはダートで活躍し、産駒もダートでしか結果を出していない。特に同じディープインパクト産駒の兄姉3頭は未勝利もしくはダートで1勝のみ。
14位:アプリシティー【15点】
血 統【3】母イルーシヴウェーヴ(母父Elusive City)
厩 舎【2】尾関知人(美浦)
生 産【5】ノーザンファーム
誕生日【5】1/9
ノーザンファームの生産馬で、セレクトセールには上場されずシルクレーシングで1億2000万円の募集馬。全兄はアドマイヤビルゴ。尾関厩舎はグローリーヴェイズとレッドファルクスを管理するも、3歳クラシックは牡馬も牝馬も未勝利。母イルーシヴウェーヴにとって同馬は4頭目のディープインパクト産駒だが、これまでの3頭はいずれもクラシックに参戦できず。さらに骨片除去手術があってデビューは秋以降となりそうで、日本ダービーを目指すならギリギリといったところか。
18位:ダノンジャッカル【14点】
血 統【3】母インディアナギャル(母父Intikhab)
厩 舎【3】中内田充正(栗東)
生 産【3】ケイアイファーム
誕生日【5】4/16
唯一ランクインしたケイアイファームのディープインパクト産駒。全兄はダノンプレミアムで4月生まれも同じ。ただし他のディープインパクト産駒の兄は多くても2勝止まりで、どっちのタイプに出るか。母父Intikhabは日本・香港・イギリスなどでG1を6勝したスノーフェアリーを輩出も、インディアナギャル産駒はダノンプレミアム以外が今一つ。中内田厩舎は2歳のG1は勝つも、3歳に入るとG1で結果が出ないのも気がかり。
18位:ダノンフォーナイン【14点】
血 統【3】母タミーザトルピード(母父More Than Ready)
厩 舎【4】音無秀孝(栗東)
生 産【3】千代田牧場
誕生日【4】3/10
セレクトセールで1億8000万円の評価。千代田牧場はホエールキャプチャ、ダノンプラチナがG1を勝利しているが3歳クラシックは活躍馬不在。生産馬の重賞勝利も1600~1800mに集中している。音無厩舎は皐月賞、菊花賞を制しており、日本ダービーで3歳クラシック完全制覇。牝系は産駒が日本で活躍した名種牡馬がこれでもかと配合されているが、2000mですら長くマイル以下がベストの印象。順調なら宝塚記念当日にデビュー予定。
20位:レッドランメルト【13点】
血 統【3】母クイーンズアドヴァイス(母父Orpen)
厩 舎【3】国枝栄(美浦)
生 産【2】社台牧場
誕生日【5】1/29
東京ホースレーシングで6800万円の募集馬。他のクラブの億超え募集馬と比較するとかなりお得。国内で母父Orpenの産駒は少ないが、BMSとしてサトノダイヤモンドがいるなら適性は大丈夫そう。ゲート試験に一度不合格しており、気性的な問題があるかも(その後合格して放牧)。社台牧場から大舞台での活躍馬はいないが、ノーザンで育成するようなのでもしかしたら化けるかも。中小牧場ながら日本ダービーを制したロジャーバローズ(飛野牧場生産・ディープインパクト産駒)のような下剋上を見たい。
以上、来年の日本ダービーを目指すディープインパクト産駒20頭を紹介した。1位はディーンズリスターだが、それ以外の馬も差がなく、最後は仕上がりや順調度、そして日本ダービーまでの成長度が結果に繋がるだろう。
また国枝厩舎と矢作厩舎と高野厩舎の多さに驚かされる。国枝厩舎は4頭、矢作厩舎は3頭、そして高野厩舎も3頭いる。全体では関西馬14頭に対し関東馬は6頭なので、傾向としては関西に期待馬が集中していることもわかる。これは藤沢和雄厩舎が来年2月をもって定年で厩舎が解散となる影響だろうか。
とはいえ、関東を代表する堀厩舎は1頭、木村哲也厩舎はこの中には入っていないのが気になるところ。夏競馬が始まり本格的に2歳戦がスタートするが、ここで紹介した20頭がどんな走りを見せてくれるか今から楽しみだ。(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。