早いもので、6月も半ばを過ぎようとしている2021年の競馬界。
27日の宝塚記念(G1)を終えるとJRAの上半期が終了するなか、ここまで川田将雅騎手が芝コースでマークした成績が、にわかに信じ難い結果になっている点をご存知だろうか。
今年1月から6月半ばの先週まで、芝限定では153レースに騎乗している川田騎手。その成績は48勝、2着15回、3着19回。勝率は驚異の31.4%で、連対率41.2%、複勝率53.6%と抜群の成績を残している。
全国リーディングを争うジョッキーと比較すると、その差は歴然。
1位に君臨するC.ルメール騎手の同時期の芝限定騎乗数は198鞍。川田騎手と同じ48勝を記録するも勝率は24.2%と、大きな差がついている。
3位の福永祐一騎手は、176鞍のうち26勝で勝率14.8%。こちらもその他の騎手と比べれば素晴らしい成績だが、川田騎手の成績には遠く及ばず。
普通の騎手は「複勝率」が30%台なら、上出来の数字である。しかし芝限定ながら、川田騎手の「勝率」31.4%は、まさに異次元の成績。今年の上半期の川田騎手は、まさに芝の“鬼”と化しているのだ。
芝のレースでは10回のうち3回は勝利する勝率と、半分以上の割合で馬券に絡む複勝率。もはや「バグっているのでは?」と、データを疑いたくなるほどの好成績を残している今年上半期の川田騎手。
1985年10月15日生まれの同騎手にとって、35歳で迎えた2021年シーズンは、騎手人生のなかでもキャリアハイのシーズンとなる可能性が高い。
ここで比較したくなるのが、ジョッキー界の“生きる伝説”武豊騎手だ。
武豊騎手は、先日も南関東牝馬クラシックの関東オークス(G2)を制覇。今年で52歳を迎えたレジェンド騎手について、その活躍ぶりは説明不要だろう。
そんな武豊騎手のキャリアハイはいつか?という点は、賛否両論あるかもしれない。しかしここは仮に、川田騎手と同じ35歳の武豊騎手と比較してみたい。
武豊騎手が35歳を迎えたのは2004年のこと。
同年2月には、史上最速・最年少となる34歳11ヶ月でJRA通算2300勝を達成。自身の誕生日をまたいだ8月、同通算2400勝をマークしたのは35歳5ヶ月のとき。
結果、2004年は211勝を挙げて、JRAの年間最多勝記録を更新。同時に最多勝利騎手、最高勝率騎手、最多賞金獲得騎手、騎手大賞など、2004年のJRA賞を“総ナメ”。他にも関西競馬記者クラブ賞や関西テレビ放送賞を受賞するなど、35歳の武豊騎手は、まさに全盛期を迎えていた。
前出の川田騎手と同様に、1月から6月半ばまで、当時35歳の武豊騎手の2004年1月から6月19日までの芝限定成績を調べると、196鞍に騎乗して38勝、2着30回、3着19回。勝率19.4%、連対率34.7%、複勝率44.4%という記録が残っている。
その数字を見れば一目瞭然だろう。今年の川田騎手の芝限定成績は、勝利数をはじめ勝率、連対率、複勝率すべての部門で、全盛期の武豊騎手を超える成績を残しているのだ。
一方で、当時の2人を比較すると、数字だけでは語れない点もある。それはC.ルメール騎手の存在だ。
武豊騎手“一強”時代ともいえる2000年代前半の競馬界。事実、2004年の全国リーディングを振り返れば、211勝の武豊騎手に続く2位は145勝の柴田善臣騎手で、その差は66勝もついていた。
3位は127勝を挙げるも、前年2003年にJRA移籍を果たしたばかりの安藤勝己騎手。4位は121勝の藤田伸二騎手で、5位横山典弘騎手は116勝、6位後藤浩輝騎手は101勝と100勝ラインを突破。倍以上の差をつけていた武豊騎手の“一強”時代の感は否めない。
翻って昨今の競馬界の、C.ルメール騎手の活躍ぶりはご存知のとおり。当然、騎乗馬が同騎手に集中するなど、騎手たちのパワーバランスが大きく異なる事もあり、35歳の武豊騎手と川田騎手を単純に比較できない面もある。
武豊騎手が35歳の当時、仮にC.ルメール騎手のような、いわば武豊騎手と双璧をなすスーパージョッキーが存在していたら、武豊騎手への騎乗依頼は減っていたかもしれない。当然、武豊騎手が騎乗する“馬質”についても、言うに及ばずだろう。
しかし裏を返せば、昨今のこうしたパワーバランスのなかでも、芝限定ながら川田騎手が勝ち続ける姿勢、結果を残し続けている姿は、より一層称賛されるべきではないだろうか。
「芝なら将雅(ゆうが)」は、競馬ファンにとって新たな格言になるかもしれない。
川田騎手の芝コースでの“神”騎乗は、いつまで続くのか。残りわずかとなった上半期はもちろん、下半期を迎える7月以降も継続して、2021年シーズン最後まで注目したい。(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。