視聴率は独走。ネット上の記事もSNSの動きも常にトップクラス。コロナ禍で昨夏からの放送延期を余儀なくされた影響をまったく感じさせない快進撃を見せている『ドラゴン桜』(TBS系)。
序盤から快進撃の理由として、16年前の平成版から変わらぬユニークな勉強法と、令和版から導入された『日曜劇場』らしい対立構図と熱さなどが挙げられていたが、中盤から終盤にかけて生徒役への注目度が急上昇している。
あらためて平成版を振り返ると主要生徒役は、山下智久、長澤まさみ、新垣結衣、小池徹平、サエコ、中尾明慶の6人。当時すでに山下、長澤、小池、中尾はドラマ・映画の出演を重ねたスターであり、そこに伸びしろ十分の新垣とサエコを加えていたのだが、人気や知名度をベースにしたキャスティングだったことがわかるだろう。
その点、令和版の主要生徒役で人気や知名度が高いのは、ジャニーズ事務所のKing & Prince・高橋海人(22歳)と元欅坂46センターの平手友梨奈(19歳)のみ。子役として活躍した加藤清史郎(19歳)はイギリス留学していたこともあって、この約5年間、その名は聞くことがほとんどなかった。
南沙良(19歳)、鈴鹿央士(21歳)、細田佳央太(19歳)、志田彩良(21歳)の4人はドラマ出演の実績は少なく、人気や知名度をベースにしたキャスティングではない。そのため放送前は、「平成版に比べると令和版の生徒は地味」と言われていたが、実際に彼ら7人は業界内でどんな評価を受けているのか。
そして、「平成版の山下、長澤、新垣を超える」と言われている人材はいるのだろうか。
映画業界の逸材たちがドラマに進出
令和版の主要生徒役7人をあらためて挙げていこう。
高橋海人は世代交代が急速に進むジャニーズの中でトップを走るKing & Prince の中でも、俳優組として期待されている1人。南沙良は4年前の女優デビュー時から映画業界で「将来を嘱望される逸材」と言われていた。平手友梨奈は今年、映画2作に出演するなど“憑依型”女優として定着しつつある。
さらに加藤清史郎は「“子ども店長”時代からの子役キャリアを留学でいったんリセットできたことが大きい」と行動力に称賛。鈴鹿央士は俳優デビュー作の映画『蜜蜂と遠雷』で、細田佳央太は初主演映画『町田くんの世界』で、ともに新人賞を総なめにしていた。志田彩良も今秋に早くも2本目の主演映画を控えている。
つまり、アイドルとして活躍し、バラエティにも出演する高橋以外は、映画業界で評価を受けている人材が揃っているのだ。「活動実績も映画が中心で、ドラマにはこれから進出していく」という段階であり、高橋と平手以外のメンバーは『ドラゴン桜』スタートの段階では人気や知名度を度外視して選ばれている。
令和版の『ドラゴン桜』は、主要生徒役を演技力や才能をベースに選んでいることがわかるだろう。目先の人気や知名度に頼らなかった制作サイドの骨太な姿勢が今回の好結果につながっているのではないか。
アイドルが足かせになりそうな高橋
では今春の令和版で、「平成版の山下、長澤、新垣を超える」と言われているのは誰なのか。
前述したように映画業界で評価を集める実力派が多い中、真っ先に名前が挙がるのは南沙良。CM業界での人気も高い上に、「事務所、誕生日、ポッキーのCM出演」という新垣結衣との共通点もあり、「連ドラ主演に一直線」と言われている。
また、鈴鹿央士と細田佳央太は、奇しくも「菅田将暉のようなスター性と個性を併せ持つ、世代を超えた俳優になってほしい」という同じような期待の声を聞いた。単に主演俳優を務めるだけではなく、その上を求められていることがわかるだろう。
さらに平手友梨奈は「大女優に化けるかもしれない」、加藤清史郎は「子役のとき以上に人気者になれる可能性が高い」、志田彩良は「陽も陰も演じられるから朝ドラ主演に合いそう」など、これらはすべてこの2カ月弱で聞いた声であり、期待の大きさがうかがえる。
そして高橋に関しては、「ジャニーズ事務所のアイドルというキャラクターが俳優としての足かせになりかねない」という声を複数人から聞いた。本物志向の視聴者が増える中、アイドル活動とかけもちをしている状態では、他の6人と比べたとき、俳優としては明らかに不利なのだ。
もはや「ジャニーズ事務所のアイドルだからドラマ主演を続けられる」という時代ではなくなった。もちろん高橋が他の6人以上に思い切った役に挑み、演技力を見せつけていけば、主演俳優を続けていくことができるだろう。
ただ現状では、南、平手、加藤、鈴鹿、細田、志田のほうが俳優としての将来を嘱望されているのは間違いない。5年後、10年後、彼ら7人がどんなポジションにいるのか。平成版のメンバーを超えられるのか。
切磋琢磨していくであろう彼らを長い目で見守っていくことも、学園ドラマの楽しみと言える。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。