6日に東京競馬場で行われた春のマイル王決定戦・安田記念(G1)。昨年に続く連覇を目論んだグランアレグリアの野望を阻止したのは、8番人気の伏兵ダノンキングリー(牡5、美浦・萩原清厩舎)だった。
昨年はアーモンドアイを破り、最強マイラーに名乗りを上げたグランアレグリア。初距離だった2000mの大阪杯(G1)こそ、切れを削がれる重馬場に苦戦して4着に敗れたが、マイルに戻った前走のヴィクトリアマイル(G1)で格の違いを見せる大楽勝。秋の天皇賞を前に負けられない戦いだったが、今年は自身が大金星を許す側となってしまった。
ダノンキングリー陣営にとって最高の結果を導いてくれたのは、間違いなく川田将雅騎手の好騎乗だ。
「たくさんともに競馬をしてきましたし、見ていたので、いろいろイメージする中で競馬を迎えられました」
川田騎手のコメントから伝わるように、これまでライバルに騎乗してダノンキングリーの走りを見続けていたことが大きかった。これが初コンビながらも、息のあったコンビを誕生させたのだろう。
きわめて“優等生的”なコメントを出した川田騎手に対し、ダノンキングリーを管理する萩原調教師が同馬を「マイルに対応できましたが、正直、どの距離が一番いいのかつかめていません」と評したことは、グランアレグリア陣営にとっては屈辱的な内容だったかもしれない。
既にG1・5勝を挙げているグランアレグリアは、最強マイラー候補としても名前が挙がるほどの存在である。その相手を破ったダノンキングリーの最適距離はマイルといっても過言ではないほどだ。にもかかわらず、敗れた相手から適性距離がまだつかめていないと言われてしまっては立場がない。
勿論、グランアレグリアは中間の調整で左前脚の爪を気にするといった一頓挫、C.ルメール騎手は「手応えが前回と全く違っていた」「呼吸的にも苦しそうでした」「直線も反応が普段より遅かった」と振り返ったことからも、本調子にはなかった可能性はある。
だが、馬の状態を優先する藤沢和雄調教師が出走を決断したからには、能力を出せるだけの仕上がりにあったはず。“負けて強し”を印象付けたレースではあったものの、敗れたことに変わりはない。
そこで注目されるのが、2頭の秋の対戦だ。
グランアレグリア陣営は秋の天皇賞制覇が今年の最大目標。そして、マイルの安田記念で初G1勝利を決めたダノンキングリーは、日本ダービー(G1)で2着に入っているように、距離の融通は利くタイプ。マイルから2000m辺りが適性だろう。
そのため、2頭が秋に歩むローテーションは、再戦によるリベンジマッチが濃厚と考えられる。
ダノンキングリーが昨年、最下位に終わった秋の盾で再び女王の前に立ちはだかることになるのか。それともグランアレグリアがリベンジマッチで今度こそ最強を証明してみせるのか。
いずれにしても我々競馬ファンからすれば、新たな楽しみが増えたことを歓迎したいところである。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。