日本ダービー(G1)の興奮冷めやらぬなか、今週は上半期No.1マイラー決定戦の安田記念(G1)のゲートが開く。
驚いたのは、5月23日に発表された安田記念の登録馬の数だ。その数はフルゲート18頭に対してわずか15頭。G1レースにもかかわらず、フルゲート割れは必至の状況だった。
その理由として考えられるのが、5月16日のヴィクトリアマイル(G1)で圧勝したグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)を恐れて、他馬が“逃亡”したという説ではないだろうか。単勝オッズ1.3倍に推された圧勝劇から、「グランアレグリアには敵わない」と、他の陣営が恐れをなしたのも無理はないというわけだ。
結局、安田記念の出走馬は14頭に決定。大本命・グランアレグリアは4枠5番に決まった。その実力と決定した好枠も手伝って、単勝オッズが再び1倍台の支持を集めても、なんら不思議はないだろう。
前週のダービーでは、エフフォーリアが1.7倍。先々週のオークス(G1)はソダシが1.9倍。今週の安田記念も、1番人気が予想されるグランアレグリアの単勝オッズが1倍台になる、いわゆる“1本かぶり”の気配は、レース前から漂っている。
思い起こせば4月4日の大阪杯(G1)も、1番人気コントレイルの単勝オッズは1.8倍だった。しかしコントレイルも、先に挙げたエフフォーリアもソダシも、多くの支持を集めながら勝利することは叶わず。この辺りが競馬の難しく、面白いところだ。
いずれにせよ、今年ほどG1レースで“1本かぶり”現象が連発するケースも珍しい。そこで過去のG1レースに限定して、単勝1番人気の馬がオッズ1.0倍から1.9倍までの支持を集めた、いわゆる“1本かぶり”のケースを検証してみた。
JRAがデータ提供を開始した1986年から先週の日本ダービーまで、障害レースを含むG1レースのなかで、単勝1.9倍までの1番人気が発生したのは217レース。人気を裏切ることなく勝利したのは102頭で勝率47.0%と、約半数が1番人気に相応しく勝利している。
興味深いのが、同じ単勝オッズ2倍未満の1.9倍までのなかでも、1.0〜1.4倍と1.5〜1.9倍の2パターンでは、その勝率が異なる点だ。
前出の217レースのうち、1番人気1.5〜1.9倍の単勝オッズが発生したのは142レース。そのうち勝利したのは52頭で勝率は36.6%。
対して1.0〜1.4倍の1番人気が出現したのは75レースで、50頭が勝利。勝率は66.7%というデータが残っている。
単勝1.0〜1.4倍の支持を集めても、「約3割負けている」と見る向きもあるだろう。ただし、先にあげた勝率36.6%と比較すれば、その安定感は段違い。1番人気のブレークポイントは単勝オッズ1.5倍未満か以上か?ともいえそうだ。
さらに単勝オッズ1.0〜1.4倍が発生しながらも、1番人気が敗れた過去のレースを検証してみよう。
古くは1990年の宝塚記念(G1)で、単勝オッズ1.2倍の支持を集めたオグリキャップが2着。1998年のスプリンターズS(G1)では、単勝1.1倍のタイキシャトルが3着に沈んだ。
1998年秋の天皇賞(G1)で単勝オッズ1.2倍の支持を集めたサイレンススズカ。まさかの競走中止は“競馬に絶対はない”を証明するレースでもあった。2000年代では、単勝1.3倍のディープインパクトがハーツクライに屈した2005年の有馬記念も代表的だ。
ほか、春の天皇賞(G1)では、ともに単勝1.3倍の1番人気馬が撃沈した過去がある。2012年のオルフェーヴルは、まさかの11着。2013年のゴールドシップも5着と人気を裏切った。
競馬とは残酷なもので、圧倒的人気を集めた馬が敗れたレースこそ、その記憶はしっかりと刻まれている。
安田記念に話を戻せば、1999年には単勝1.3倍に支持されたグラスワンダーが2着。今週の安田記念でグランアレグリアに騎乗するC.ルメール騎手は昨年の安田記念で、単勝1.3倍で挑んだアーモンドアイで2着に終わった。
その雪辱を果たすべく当時、後塵を拝したグランアレグリアで今年の安田記念に挑むルメール騎手。
当日のグランアレグリアの単勝オッズは1.4倍以下か、それとも1.5倍以上か。その経緯を見守り、同馬とルメール騎手との“因縁”めいたドラマを感じながら、じっくりと馬券検討したい。(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。