30日、東京競馬場で行われる日本ダービー(G1)は、競馬に携わる人間にとって最大の目標。ダービーに始まりダービーに終わるともいわれるように最高峰のレースである。
有力馬の1頭と目されていたダノンザキッドの骨折回避により、今年は17頭の精鋭によって競われる府中の芝2400m戦。
主役を張るのは皐月賞馬に輝いたエフフォーリア(牡3、美浦・鹿戸雄一厩舎)で間違いない。昨年8月のデビューから、その強さは増すばかり。レースを重ねるごとに2着馬との着差を広げ、前走の皐月賞(G1)はキャリア最大となる3馬身差で圧勝した。
「ダービーホースですよ――」
特に驚きだったのは、C.ルメール騎手の「ダービー馬」認定発言だろう。エフフォーリアが快勝した2月の共同通信杯(G3)でキングストンボーイに騎乗していたルメール騎手は、そのあまりの強さにあっさりと“白旗”宣言。トップジョッキーが残した異例のコメントは大きな反響を呼んだ。そんなダービー馬(仮)への騎乗に色気もあったものの、藤沢和雄調教師からストップが掛けられたとも噂されている。
ルメール騎手としては、自身がコンビを組む可能性もあったライバルに未練もあっただろうが、ダービーには「紅一点」のサトノレイナス(牝3、美浦・国枝栄厩舎)とのコンビで挑む。
同馬を管理する国枝調教師は、9冠馬アーモンドアイの活躍でも知られるが、不思議なことに牡馬クラシックのタイトルには縁がない。牝馬のサトノレイナスで挑戦するというのも“国枝流”といったところだろうか。
勿論、この「挑戦」にはダービー優勝を渇望する里見オーナーの夢や、出るなら乗りたいと即答したルメール騎手の後押しがあったことは容易に想像することができる。
「1600mではスピード不足だったので2400mはちょうどいい。能力は高いし、勝つ自信があります」
『夕刊フジ』が報じた記事の内容によると、最終追い切りに騎乗したルメール騎手は「勝利宣言」とも受け取れるコメントを残している。
ダービー馬と評したエフフォーリア相手に「勝利宣言」は、“手のひら返し”のような印象もあるが、単なる“リップサービスか否か”は本人のみ知るところだ。
ただ、「1600mではスピード不足」といったコメントには違和感がある。
なぜなら4月の阪神開催は、レコードが頻発したように超高速馬場だったからだ。良馬場で行われたマイル重賞は阪神牝馬S(G2)、桜花賞(G1)、マイラーズC(G2)の3レース。それぞれ勝ちタイムは1分32秒0、1分31秒1(レコード)、1分31秒4という好時計が記録された。
3歳春に古馬重賞のタイムを大幅に上回ったことも、今年の3歳牝馬がハイレベルとされる裏付けとなったが、これはスピード不足の馬には対応が難しかったという根拠ともなるだろう。ルメール騎手のコメントと矛盾するが、サトノレイナスが相当なスピードの持ち主でなければ、対応できなかったはずだ。
また、同馬はライバル・ソダシと過去に2度の対戦があり、昨年の阪神JF(G1)をハナ差、今年の桜花賞はクビ差でソダシが連勝。いまだサトノレイナスに先着を許していないソダシだったが、初経験となった芝2400mのオークス(G1)で8着に惨敗。スタミナ不足を露呈したばかり。
勿論、2000m超の重賞で勝利のなかったクロフネ産駒のソダシには、戦前から距離不安を危惧する声が出ていたのも事実。そのままディープインパクト産駒のサトノレイナスに当てはめることは難しい。
その一方で、少なくともレコード決着の桜花賞を勝ち負けしたサトノレイナスを「スピード不足」と評したルメール騎手の真意を読み解くことができないのも確か。
この矛盾の正体がサトノレイナスに対する「過大評価」によるものなのか、それともコメントの通り、すでに類稀なスピードを見せる現状ですら物足りなさを感じてしまうほどの「超大物」ということなのか。
いずれにしても、日曜の夕方にはその答えが明らかとなる。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。