23日、東京競馬場で行われた3歳牝馬No.1決定戦・オークス(G1)は、3番人気のユーバーレーベンが勝利。昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)でソダシ、サトノレイナスに続く3着だった実力馬が、長い2400mで本領を発揮した。
「感動しました。本当に嬉しい。G1……凄いですね」
レース直後に馬上で目に光るものを見せたM.デムーロ騎手にとっては、昨年のNHKマイルC(G1)以来となる、約1年ぶりのG1制覇。「幸せ、とても嬉しい、ありがたいです。いつもありがとうございます」と喜びもひとしおといった様子だった。
一方、昨年のデアリングタクトに続き、無敗の二冠制覇を狙ったものの8着に沈んだソダシ(牝3歳、栗東・須貝尚介厩舎)にとっては、悔いの残るレースになってしまったようだ。
最大のライバルだったサトノレイナスが日本ダービー(G1)へ向かったことで、単勝1.9倍という圧倒的な1番人気に推されたソダシ。世界でも珍しい白毛の女王には、日本だけでなく、世界の競馬ファンからも注目が集まっていた。
しかし、これだけの大本命になると「周囲のマーク」が厳しくなるのが競馬の常だ。
ライバルの騎手たちは、まともにやれば勝利必至の大本命馬に本来の力を発揮させないよう様々な駆け引きを行うが、5番人気のステラリアに騎乗した川田将雅騎手はそんな“刺客”の代表格だったのかもしれない。
「将雅、そんなイジメんな……」とレース映像を通じて指摘したのは、元JRA騎手の藤田伸二氏だ。自身のYouTubeチャンネル『藤田伸二チャンネル』でライブ観戦を行った藤田氏は、主戦の吉田隼人騎手と親交が深いこともあって、やはりソダシに注目。「とりあえず1コーナーまでが、どういう感じか」「ハナには行きたくないだろうな」と気に掛けている様子だった。
だが、まさにその1コーナーでソダシにとっては悪夢のような展開が待っていた。
ハナに立てるほどの好スタートを決めたソダシだったが、吉田隼騎手は内から先手を主張したクールキャットを行かせて得意の先行策に持ち込もうとした。しかし、そこに外から襲い掛かったのが、川田騎手のステラリアだ。
藤田氏の「(川田)将雅、ソダシにプレッシャー掛けに行ったな」という指摘通り、ソダシと併走する形で1コーナーに飛び込むと、じわじわと前に出ながらソダシの進路を限定するコース取り。大本命馬に楽をさせない川田騎手の厳しい騎乗が光った。
「これには藤田さんも『(川田騎手が)スッと前に出ないのは、プレッシャーを掛けに行ってる』と指摘。案の定、ここからソダシに明らかに力みが加わり、吉田隼騎手にとっては大きな誤算だったと思います。仲の良い藤田さんも『将雅、そんなイジメんな……』『ソダシはせっかく折り合いがついてたのに、川田にギリギリで擦られて、ちょっとハミを噛んでるね……』と心配していましたが、結果はまさに悪い予感が的中した形でした」(競馬記者)
これにはレース後、ソダシを管理する須貝尚介調教師も「序盤で併せ馬の形になって引っ掛かった。その分の力みが最後(の失速)に出てしまった」と無念の様子。
昨年のオークスで大本命だったデアリングタクトも序盤の2コーナーで度重なる不利を受け、三冠の中で最も厳しいレースを強いられた。また、「勝負の鬼」と化した川田騎手も単勝1.4倍のクリソベリルで挑んだ昨年のチャンピオンズC(G1)の1コーナーで似たような不利を受けている。
先週のヴィクトリアマイル(G1)は単勝1.3倍のグランアレグリアが圧勝したが、G1で大本命馬が力通りに勝つことが如何に難しいのか……改めて思い知らされた一戦だった。(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。