4月25日のマイラーズC(G2)を制したケイデンスコール(牡5、栗東・安田隆行厩舎)は、6月6日に東京競馬場で行われる安田記念(G1)を予定していることがわかった。
同馬は2歳時に新潟2歳S(G1)を優勝し、2019年のNHKマイルC(G1)では、14番人気の低評価ながら2着に好走。同レースで先週のヴィクトリアマイル(G1)を圧勝したグランアレグリアに先着するなど、マイル戦でトップクラスの実力を見せたが、以降は二桁着順の敗退を繰り返すなど低迷した。
だが、そんな悩める実力馬に約2年3カ月ぶりとなる勝利をプレゼントしたのが、岩田康誠騎手だ。初コンビを組んだ20年10月のポートアイランドS(L)は11着に終わったが、2度目のコンビとなった同年11月のオーロC(L)で6着に入って見せ場を作る。
そして、今年1月に中京競馬場で行われた京都金杯(G3)では、12番人気の低評価を覆して勝利した。次走の中山記念(G2)も2着に入ると、マイラーズCを勝利。凡走続きだった馬が、今年は3戦2勝2着1回の完全連対という別馬のような安定感だ。この復活劇に岩田康騎手の存在が好影響を与えていたことは、低迷していた馬の復活した成績からも伝わってくる。
その一方で、マイラーズCの鞍上は岩田康騎手ではなく、古川吉洋騎手だった経緯も見逃せない。
岩田康騎手は24日の阪神6Rで返し馬の際、藤懸貴志騎手に対して馬ごと幅寄せしてラチ沿いに追い詰めて威嚇、暴言を吐いたという。この「粗暴な行為」の伏線は阪神2Rの3歳未勝利。外側にいた馬の斜行被害に遭った藤懸騎手が立ち上がり、その直後にいた岩田康騎手があおりを受けたことが関係していたようだ。
ベテラン騎手が若手騎手を“恫喝”するという前代未聞の行為。JRAは「競馬の公正確保について業務上の注意義務を負う者としてふさわしくない非行のあった者」として、岩田康騎手には即日騎乗停止処分を下した。
ただ、後輩の手本となるべきベテラン騎手の常軌を逸した行為は、これを目撃していた複数の騎手から問題視され、裁決委員に通報という事態にまで発展したほど悪質な内容だったともいえる。
元JRA騎手・藤田伸二氏は自身のYouTubeチャンネル「藤田伸二チャンネル」で騒動の詳細をファンに説明。「俺は馬に飯を食わせてもらっていた。馬を武器に使わなかった」など、岩田康騎手の行為に疑問を投げ掛けていた。
そんななか、同騎手はわずか4日の騎乗停止明けに“豪華な馬質”でスタンバイ。復帰初日の9日は、2番人気クリノガウディーで勝利したメインレースの鞍馬S(OP)では右手を大きく挙げてガッツポーズ。これには藤田氏も「中京メインの奴のガッツポーズ…あんなんしてホンマにええの?」「呆れて言葉も無い………悲しい奴だ…」とつぶやいた。
「一部のファンからは、結果がすべての世界なのだから勝てば官軍という声もありますが、ガッツポーズに関して“反省していない”と感じたファンも多かったようです。騎乗馬については騎手の起用を決めているのは、オーナーサイドや調教師ですから世論が反映されなくても不思議ではないでしょう。
岩田康騎手としては意趣返しのような意味合いではなく、純粋に嬉しくて出た可能性もありますが、相変わらずノーコメントを貫いたことはあまりイメージがよくありませんでした。せめて何か一言でもあれば、少しは印象も違ったかもしれません」(競馬記者)
確かに岩田康誠騎手はその手腕に定評のある一流騎手だが、気の毒なのは代打を任されたマイラーズCでケイデンスコールを見事な勝利に導いた古川吉騎手だろう。初騎乗ながら勝利という満点回答で応えていただけに、G1の舞台で継続騎乗とならなかったのは残念だったに違いない。
競馬界を震撼させた持続化給付金不正受給疑惑に強い不信感も残る対応。関係者の公表もないまま、風化してのフェードアウトを目論んでいるのではないかと勘繰る声も出ている。
「激甘処分」ともいわれる岩田康騎手への対応も含め“ぬるま湯体質”が浮き彫りとなったJRA。やったもん勝ちのような現状に、厳しい処分も少なくない一般社会の感覚とは大きく異なっていると感じざるを得ない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。