NHKマイルC(G1)は2番人気シュネルマイスター(牡3、美浦・手塚貴久厩舎)が優勝。2着ソングラインをハナ差で退けたC.ルメール騎手の見事な手綱さばきのほか、3着までをサンデーレーシングが独占するなど、なにかと話題の多い一戦となった。
ほかにも話題となったのが、優勝馬シュネルマイスターの血統背景だ。
1996年の創設当初から、タイキフォーチュンやシーキングザパール、エルコンドルパサーら外国産馬が圧倒的な強さを見せたNHKマイルC。
当時は「マル外ダービー」といわれたレースも、近年は日本産馬が大健闘。シュネルマイスターは2001年のクロフネ以来、20年ぶりの外国産馬による勝利。さらに同馬の優勝は、ドイツ産馬によるJRA史上初のG1初制覇をもたらしただけでなく、父であるキングマン(Kingman)の存在を知らしめる結果となった。
キングマンは、今年のチューリップ賞(G2)でメイケイエールと同着優勝のエリザベスタワーの父でもある。
産駒の活躍によってにわかに注目を集めている種牡馬キングマン。現役時代は欧州年度代表馬にも輝いた世界的名馬でもあり、通算成績は8戦7勝(2着1回)とほぼパーフェクトだった。
英国G1のサセックスSを制したほか、あのタイキシャトルも勝利したフランスG1のジャック・ル・マロワ賞でも優勝。両G1レースを同一年で制覇した例は過去になく、史上初の快挙を達成したキングマンは、欧州マイルG1を4連勝した“名マイラー”でもあった。
しかし、喉の病気を発症したキングマンは、ジャック・ル・マロワ賞から約1ヶ月後の2014年9月に現役引退。種牡馬入りした2015年はまだ4歳と若く、初年度の種付け料は55,000ポンド(約840万円)で、143頭の繁殖牝馬と交配した。
その後、キングマン産駒は2019年に欧州の6つの重賞を含む28勝を記録するなど一気にブレイク。ドイツ生まれのシュネルマイスターを例に出すまでもなく、種牡馬としての活躍は欧州全土に広がっており、2019年は75,000ポンド(約1,150万円)だった種付け料は、2020年には倍増の150,000ポンド(約2,300万円)まで跳ね上がったという。
そこで、欧州で生まれた後、日本にやってきたキングマン産駒に目を向けてみたい。
5月9日現在、キングマン産駒のJRA戦績を調べると、2016年産の現5歳世代は43戦を消化。2018年デイリー杯2歳S(G2)4着のダノンジャスティスは、すでに中央競馬の登録を抹消しているものの、JRA在籍時に3勝をマーク。産駒全体ではヨークテソーロの1勝をあわせた4勝を挙げている。
一方、2018年産の現3歳世代に目を向ければ、ここまで29戦を消化して5勝、2着2回、3着1回。勝率17.2%、連対率24.1%、複勝率27.6%という好成績を残している。
世代間での大きな違いといえばやはり賞金だ。現5歳世代の賞金合計6502万円に対して、現3歳世代のそれは1億9456万円と一気に3倍増。エリザベスタワーはチューリップ賞を制してキングマン産駒として初重賞制覇。さらにシュネルマイスターは産駒としてG1初制覇をもたらすなど、最近の活躍には目を引くモノがある。
こうなると、気になるのが2021年デビュー組だろう。
あと1ヶ月も経てばメイクデビューの季節がやってくる。キングマン産駒で確認できているのが、モンゴリアンキング(牡2、栗東・安田隆行厩舎)だ。生産者はエリザベスタワーと同じ社台ファームで、すでに栗東でゲート練習を消化するなどデビューは早そう。楽しみな一頭といえる。
エリザベスタワーは父キングマンが活躍した英国の有名な時計台「ビッグ・ベン」の正式名称から。そしてシュネルマイスターはドイツ語で「スピードの達人」という意味だという。そして、モンゴリアンキングの馬名の由来は、モンゴル国と父キングマンから連想。いわゆる「モンゴルの王様」という意味である。
国際色豊かな馬名が揃う注目のキングマン産駒。2021年で10歳になったキングマン自身は、種牡馬の世界ではまだまだ若いだけに、新たな血が日本の競馬界を盛り上げてくれそうだ。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。