JRA 武豊「社会的信用を一日でも早く回復する」も空しく“モヤモヤ”決着……不正ではなく「不適切」。調教師「約7割」が厳しい処分要求も

 先週10日、レース開催があった中山と阪神でJRAが、新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金の不正受給について、2度目の記者会見を実施。問題は一応の“幕引き”をみたようだ。

 JRAの下した見解を一言で表すなら、今回の問題は持続化給付金に対する「不正」な受給ではなく、「不適切」な受給という点に尽きるだろう。

 後藤正幸理事長も「社会の良識に欠ける行為」という見解に留まっており、会見内でも「不正ではなく、不適切」という指摘がわざわざあった。つまり、簡単に言うなら適切ではないが、法には触れていないということなのだろう。

 また、JRAが重い処分に踏み切れなかった背景として、本件がJRAの主催する競馬開催とは関係のないところで起こった事案という点が挙げられる。そうなると事実上、騎手を処分するのは日本騎手クラブであり、調教師は日本調教師会が対応。JRAはあくまで免許を発行しているだけの組織という位置づけになるからだ。

 その結果、処分は非常に甘いものになった。

 最も重い出勤停止となったのは対象170名中、虚偽の申請を行っていた3名だけ。以下は最高でも戒告(16名)、厳重注意(148名)、注意(5名)となるが、要するに“怒られた”だけである。

 会見で質疑応答を行った記者陣は、世論を鑑みても到底納得できないだろう。会見翌日から、メディア各社で様々な報道が行われたが、概ね否定的なものだったことは当然か。

 唯一、今回の注意処分の中で最も重い「戒告」で統一した日本騎手クラブが一番マシな対応と言えなくもないが、武豊騎手会長の「競馬サークルの社会的信用を一日でも早く回復することが、今の我々の責務であると考えております」との言葉も空しく、今回の処分でJRAをはじめとする競馬界が、世間の信頼を少しでも取り戻せたとは到底言い難い。

 一方、合計13名だった騎手に対して、調教師24人、厩舎スタッフ135名という“不適切受給者”を出してしまった日本調教師会は、なかなか足並みが揃わなかったようだ。

 当初、関東本部長の手塚貴久調教師は「これだけ報道されている中で、何事もなく終わらせてしまうのは世間一般に申し訳が立たない。JRAとは別に調教師会として対応しなければならない」と毅然とした態度を取っていた。

 だが、会見後には「不正ではなく不適切という判断。不正ではない以上、(氏名等の公開は)プライバシーにも関わるため控えさせていただきたい」と態度が軟化している。

 一体、何があったのだろうか。

「『JRAとは別に調教師会として対応しなければ』と話していた手塚調教師ですが、どうやら報道があった直後、橋田満調教師から『こっちは何も聞いてない』という話があったようですね。手塚調教師の勇み足というか、大先輩であり、調教師会会長の橋田調教師に相談せずにマスコミに調教師会の方針を話してしまったことが、結果的に調教師会全体の足並みが揃わない状況を生んでしまったようです」(競馬記者)

 この結果、関東のある調教師は「一部の不正受給した人たちのせいで、残りすべての調教師までファンなどから白い目で見られてしまう」と不満の色を隠さない。

「調教師会でも約7割の人が厳しい処分や氏名の公表を求めたそうですが、『調教停止などの厳しい処分をしたら、開催に影響が出てしまう。氏名を公表すれば最悪、開催できなくなって皆が困る』というような理由で、結局うやむやにされてしまったとか……。

取材に応じてくださった調教師の方も『返せばいいって問題ではないし、個人的には全然納得してない』と、やはり印象はファンや世間と同じみたいです」(同)

 しかし、実際にこの結末で納得できる人はごく少数だろう。もっと他に適切な形で対応することができなかったのか……。白毛馬ソダシの桜花賞(G1)制覇など、明るい話題が続く競馬界だが、組織全体の「甘い認識」が露になった本件は、もっと重い教訓として活かされるべきだろう。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。