日本馬産界を牽引する社台ファームとノーザンファームの若き副代表、吉田哲哉氏と吉田俊介氏が新型コロナウイルスに感染、陽性反応が出ていたことがこのほど判明した。幸い2人は発症することなく、現在隔離用ホテルに滞在している。
「社台ファームに馬を見に行こうとしたんですが、今回はちょっとと入場を断られたんですよ。セレクトセールまで4カ月を切って、これからが馬見の本格シーズンです。何かあったんじゃないかとは感じたんですが」
JRA(日本中央競馬会)に所属するある調教師が北海道馬産地の“異変”を感じたのは3月10日前後のことだった。関係者によると、哲哉氏と俊介氏はPCR検査で先週陽性と判明。2人とここ2週間接触した家族、社員らもPCR検査を行ったところ、幸いにして父君である吉田照哉氏、勝己氏をはじめ家族、従業員、関係者から陽性反応が出ることはなかったようだ。
しかし、セリ前の馬見が本格化するシーズンを前に社台ファームでは調教師、オーナーらの入場を規制しているという。
陽性反応が出た2人は道内、道外での会議にともに出席していたことから、感染ルートはこうした外部だったのではないかとみられている。
「会議の日時など具体的なことは分かりませんが、そこを中心にコロナウイルスが拡散している恐れは否定できません。そのため社台、ノーザン両ファームでは家族、従業員にPCR検査を受けさせたのでしょうが、その会議に出席した後にどれだけの人間と会っていたのか、それが分からないのが怖い。
北海道のコロナ感染状況は一時期ほどではありません。しかし、5月の札幌トレーニングセールを皮切りにセリの季節が始まります。トレーニングセールを前に育成牧場にはオーナー、調教師が馬見に訪れ始めています。北海道の感染状況は既に落ち着いて大騒ぎから脱却しているだけに、これがきっかけになって馬産地で感染が拡大したら、今年のセリが台無しになってしまう」
日高の生産者は影響力の大きい2人の陽性確認に心配を隠さない。
JRAは昨年の無観客開催開始時にオーナーには調教師、騎手らとの会食をはじめとする接触を差し控えるよう各馬主協会を通じて連絡、防疫対策の強化に乗り出した。
しかし、その後、言い出しっぺのJRA職員の感染が確認されて報道された以外にも、競馬サークルではコロナに関係する小さな不祥事が相次いでいる。
昨年春の福島開催では日曜のレース終了後、某大オーナーが預託している栗東の調教師が銀座に繰り出していたことをJRAが察知。この調教師を2週間トレセン立ち入り禁止処分にしている。
また、某調教師は北海道に馬見に出かけた後、札幌すすきので飲食をしていたことが判明。これも同じように2週間トレセン立ち入り禁止の処分にしている。さらに某調教師はJRAからの接触制限に関する通知を読み間違えて重賞制覇後にオーナー、騎手らと談笑しているところを競馬媒体に撮影され、これが咎められてこの3月から2馬房を削減されている。
しかし、こうした小さな不祥事が報道されることはほぼなかった。
問題はこうした不祥事が表に出ないJRAの隠蔽体質である。いま世間で大騒ぎとなっている持続化給付金“不正”受給騒動でもJRAは受給したとされる調教師、騎手、調教助手、厩務員らの実名は伏せたままだ。
緊急事態宣言が解除された区域の競馬場では、一般客の一部入場が再開された。だが、それ以前の無観客開催中も出走オーナー、一部関係者らは入場を許されていた。社台、ノーザンファームの若き副代表は、陽性判明までの2週間に競馬場に出入りしていなかったのだろうか。
そういった心配をよそに春のクラシックの蹄音が聞こえ始めた。将来のダービー馬候補が打ち揃い、生産者にとっては数年来の投資が実を結ぶかどうか、息を飲むシーズンも間もなく開幕する。