21日、東京競馬場で行われたフェブラリーS(G1)は、1番人気のカフェファラオが勝利。ただレース後、ファンの話題をさらったのは9番人気ながら2着に激走し、三連単10万馬券を演出した8歳馬のエアスピネル(栗東・笹田和秀厩舎)だった。
「わずかな着差なので、自分の乗り方次第だったかと思うと悔しい」
レース後、そう悔しさを語った鮫島克駿騎手だが、昨年はフェブラリーSと同日の裏開催の小倉大賞典(G3)で自身の重賞初制覇を飾った。そして、今年は表開催でG1初制覇まであと一歩の競馬……来年のこの日も、この騎手の名を覚えておいた方が良さそうだ。
一方、エアスピネルにも”燃える理由”があったのかもしれない。
前夜には海の向こうで3歳馬のピンクカメハメハがサウジダービーを制し、その名を世界に轟かせた。本馬の父リオンディーズは、エアスピネルの同世代として何度もしのぎを削った間柄だったからだ。
8歳を迎えた今でこそ、ダートのG1で9番人気というエアスピネルだが、元はG1で1番人気に推されるほどのエリートだった。
秋華賞馬エアメサイアの最高傑作として2015年にデビューしたエアスピネルは、武豊騎手を背に新馬戦とデイリー杯2歳S(G2)を連勝。2歳王者を決める朝日杯フューチュリティS(G1)では単勝1.5倍の圧倒的な1番人気に推された。
しかし、そんな若きエリートの夢を打ち砕いたのが、リオンディーズだった。最後の直線で、先に抜け出したエアスピネルをゴール前で強襲。図ったように差し切ったレース後、武豊騎手が鞍上のM.デムーロ騎手に向かって「空気の読めないイタリア人」と嘆き節だったのは有名な話だ。
あれから約6年が経過したこの日、未だ悲願のG1制覇を目指すエアスピネルは3度目のG1・2着となった。24歳と若い鮫島克騎手が悔しがるのはもちろんだが、すでに老兵のエアスピネルはもっと悔しいのかもしれない。
ただその一方、2歳のG1で2着した馬が、8歳になってもG1で2着したことは「驚異的」と言えるだろう。これだけ長い活躍には、笹田和秀調教師を始め関係者の尽力があってこそだが、エアスピネル自身の中にもその「理由」が眠っている。
「かつてサンデーサイレンスの前に日本競馬を席巻したノーザンテーストには、『産駒は3度成長する』と言われるほど豊富な成長力がありました。有名なところではドリームジャーニー、オルフェーヴル兄弟、ダイワメジャー、ダイワスカーレット兄妹など、若い頃から一線級で息長く活躍した名馬たちにもノーザンテーストの血が入っており、エアスピネルにもその血が流れています」(競馬記者)
例えば、昨年のフェブラリーSで、最低人気ながら2着に激走したケイティブレイブもまた、エアスピネルと同世代であり、その血統にはノーザンテーストが名を連ねている。2004年に他界しているが、今の競馬界にも大きな影響を与えている歴史的な大種牡馬だ。
エアスピネルの叔父にあたり、やはりノーザンテーストの血を継いだエアシェイディは2歳時にホープフルS(当時OP)を勝ちながら、8歳時の有馬記念(G1)で3着、9歳時の日経賞(G2)でも2着するなど長くファンに愛された馬だった。
「以前より状態はすごく良かった」
2着に激走したフェブラリーSのレース後、鮫島克騎手からそう評価されたエアスピネル。8歳を迎えても老いてますます盛ん……G1制覇への悲願は熱く燃え上がっている。