JRA無観客競馬で響き渡った怒号、そしてG1「1位降着劇」……川田将雅VS北村友一「因縁」の対決も、ロードカナロア2世がたどり着いた予想外の結末【高松宮記念2020】

 今年3月に行われた春のスプリント王決定戦・高松宮記念(G1)は、数名のジョッキーたちが「何かとゴタゴタしたレース」と記憶しているファンも多いに違いない。

 モズスーパーフレアが勝ったことで松若風馬騎手にとっては初のG1制覇となったが、これは1位入線したクリノガウディーの降着によって繰り上がり優勝したもの。松若騎手としては、今度こそ先頭でG1のゴール板を駆け抜けたいと思っていることだろう。

 また、レース後に「僕の頼りなさで、迷惑を掛けてしまってすみません」と猛省した鞍上の和田竜二騎手は、この件以降、クリノガウディーには騎乗せず。本馬も極度の不振となってしまい、今では「幻のG1馬」と呼ばれてしまっている。

 一方、『みんなのKEIBA』(フジテレビ系)に出演していた、競馬評論家の井崎脩五郎氏が「明らかに普通なら(不利がなければ)勝っていた」と語ったダイアトニックの北村友一騎手にとっても、この高松宮記念は何かと因縁のあるレースだ。

 昨年の高松宮記念は北村騎手にとって、まさに「悪夢」そのものだった。

 騎乗したダノンスマッシュは京阪杯(G3)、シルクロードS(G3)を連勝中。日本がアジアに誇る「龍王」父ロードカナロアが歩んだ軌跡と重ねたファンは、本馬を1番人気に支持した。

 しかし、結果は最後の直線で伸びを欠いての4着……それも3コーナーで内側に斜行したとして、北村騎手が過怠金10万円の処分を受ける、踏んだり蹴ったりの結果に終わってしまった。

 ただ、“悲劇”はそれだけで終わらない。その後、ダノンスマッシュ陣営は高松宮記念の結果を踏まえ、新たな鞍上に川田将雅騎手を抜擢したのだ。

 実は、北村騎手のダノンスマッシュの斜行で不利を受けたのが、アレスバローズの川田騎手であり、ここから本馬の主戦騎手に定着。北村騎手にとっては何とも皮肉な結果となった。

 さらに、北村騎手と川田騎手の“因縁”は、新型コロナウイルスの影響で強いられた今年初の無観客競馬を舞台に「再燃」する。

 前哨戦・阪急杯(G3)のゴール手前、1頭分の進路を巡って北村騎手のダイアトニックと、川田騎手のフィアーノロマーノが衝突した。どちらも1、2番人気という負けられない戦いの中、北村騎手が進路を勝ち取り2着に入線した。

 だがゴール後に審議のランプが灯り、北村騎手のダイアトニックは、川田騎手のフィアーノロマーノの進路を塞いだとして3着に降着……大きな不利を受けた川田騎手の怒りが爆発し「ユーイチ!」という声が、無観客で静まり返った阪神競馬場に響き渡った。

 しかし、その一方でダノンスマッシュの主戦となった川田騎手も苦戦の日々が続く。

 高松宮記念直前の記者会見で「私自身左回りは乗っていないのですが、そこに関しては心配していません」と、かつての主戦・北村騎手をチクリ。この“先制パンチ”まではよかったのだが、肝心のレースでは出遅れて10着に大敗……。

 皮肉にも左回り適性は、次走に乗り替わったD.レーン騎手が京王杯スプリングC(G2)を勝ったことで証明されている。

 その後、再び川田騎手とコンビを組んだ秋のスプリンターズS(G1)では2着と気を吐いたダノンスマッシュだったが、R.ムーア騎手に乗り替わった暮れの香港スプリント(G1)であっさりとG1初制覇してしまった。

 なお、日本馬が香港スプリントを制したのは、ダノンスマッシュの父ロードカナロア以来の快挙となった。

 かつて父も勝利した京阪杯(G3)、シルクロードS(G3)を連勝し、「ロードカナロア2世」と期待されたダノンスマッシュは、北村騎手でも川田騎手でもなく、ムーア騎手によってその期待に応えたというわけだった。