今秋、最も豪華なキャストとスタッフが揃ったドラマと言えば、『共演NG』で間違いないだろう。放送前は、それを制作・放送するのがテレビ東京であり、月曜22時台であることに驚きの声が上がっていたが、12月7日についに最終話を迎える。
テレビ東京が低予算で番組制作していることは、おそらく大半の国民が知っているはずだ。また、月曜22時台は今年6月まで『ドラマBiz』が放送されていた時間帯。終了後はバラエティが放送されていたが、半年足らずでのドラマ枠復活に「どこに勝算があるのか?」と揶揄する声も上がっていた。
新設されたドラマ枠のタイトルは『ドラマプレミア10』。『ドラマBiz』のような経済ドラマに限らず、さまざまなジャンルのプレミア作品を手がけていくというが、今振り返ってみても顔ぶれは豪華だった。
中井貴一、鈴木京香、斎藤工、山口紗弥加らを揃えたキャストだけでなく、スタッフも豪華。企画・原作に秋元康、脚本に大根仁と樋口卓治、演出も大根仁が全話を担当するのだから、テレビ東京にとって特別な作品であることは間違いない。
物議を醸した秋元康ドラマ
秋元の関わったドラマと言えば、2010年代は、そのほとんどがAKBグループか坂道グループ絡み。プロモーション要素の高いファン向けの作品ばかりだったが、それ以外に物議を醸した2作があった。
それが、2017年の『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)と2019年の『あなたの番です』(同)。ともに最近のドラマシーンでは珍しい長編ミステリーであり、過激なシーンを連発させたこともあって、ネット上は考察合戦で大いに盛り上がっていた。
さらに、今年も7月26日の単発ドラマ『リモートで殺される』(同)も秋元が企画・原案を担当。タイムリーかつショッキングなテーマと、本田翼、新田真剣佑、柄本時生、齋藤飛鳥、前田敦子ら若手俳優を揃えたキャスティングで話題を集めていた。
ところが、3作すべて放送後は「犯人は二重人格者だった」「犯人はサイコパスでさしたる犯行動機なし」「犯人は同性愛者で痴情のもつれによる犯行」というラストに批判が殺到した。「それは禁じ手でしょ」という結末に加えて、「続きはHuluで」が追い打ちをかけ、視聴者たちは怒り心頭。そのため、『共演NG』を不安視する声も出ていた。
ただ、ここまで『共演NG』は、秋元の関わったこれら3作とは明らかに異なる作風となっている。見れば見るほど、味わい深く、それでいて笑えた。ただ、それでも最終話は、「また禁じ手のような結末を使うのではないか」という不安は拭えない。
大根仁と樋口卓治の力が安心材料に
あらためて、ここまでの『共演NG』を振り返ると、大根仁と樋口卓治の手がける脚本が冴え渡っていた。
テレビ局とドラマ撮影現場をリアリティたっぷりに描きながら、笑いの中に毒を織り交ぜたセリフで両者の問題点を突いていく。たとえば、「テレビ東洋」を略して「テレ東」と呼んで自虐し、視聴率への皮肉やキャスティングの忖度など、業界の問題点も忘れない。日頃、それらに不満を抱えている作り手にとっても、視聴者にとっても痛快だ。
これまでの実績から大根にばかり注目が集まりがちだが、テレビ業界をのぞき見するような作品だからこそ樋口の存在も大きい。樋口は業界きっての構成作家だけに、テレビ局や制作現場を知り尽くしている。言わば、『共演NG』のリアリティを担保するような存在となっていた。
大根は全話の演出も手がけているだけに、映像のクオリティも折り紙付き。つまり、秋元が関わった3作とは、脚本・演出のクオリティという点で大差があり、だからこそ「今回は結末でガッカリさせられる」という心配はしなくていいだろう。
もちろん、中井貴一と鈴木京香をはじめとするキャストのスキルも安心材料のひとつ。メイン2人だけでなく、斎藤工、山口紗弥加、猫背椿、リリー・フランキー、瀧内公美、橋本じゅんらクセ者俳優から、細田善彦、小沢廉、若月佑美、小野花梨らドラマ内の「共演NG」を演じる若手、さらにドラマスタッフパートを演じる森永悠希、小島藤子、迫田孝也、そしてラス前の第5話で涙を誘った大御所・里見浩太朗までスキがない布陣だった。
アイドルがいないのはもちろん、バーターで実力が劣るような俳優が見当たらないのだ。虚実皮膜の世界観を作り上げるためには、やはり本物のスタッフと俳優を集めなければできないということだろう。言わば当作は、「それだけ誠実に作っていた」ということだ。
三角関係と劇中ドラマの結末は?
最終話は、役が抜けず涙が止まらない大園瞳(鈴木京香)に寄り添う遠山英二(中井貴一)、さらに、それを目撃して怒りをにじませる妻・遠山雪菜(山口紗弥加)。この三角関係はどうなっていくのか。
また、劇中ドラマ『殺したいほど愛してる』の撮影は終盤に差しかかったものの、クランクアップを前に“最大のピンチ”に見舞われ、英二が絶対に許すことができない“過去の事実”が明らかになるという。
当作は「英二、瞳、雪菜の三角関係」「劇中ドラマ」という2点でどんな結末を見せるのか。話は戻るが、その結末は脚本の大根仁と樋口卓治ではなく、「企画・原作」を務めた秋元康の真価が問われるポイントだろう。
秋元は、近年3作とは異なる展開を用意しているのではないか? 期待して22時を待ちたい。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。