JRA・G1の1番人気連勝クリソベリル勝てば「34年ぶり」更新。34年前、皇帝シンボリルドルフ、三冠牝馬メジロラモーヌから託された7連勝のバトン……デビュー5連勝「無敗の2歳王者」を襲った悲劇

 今週も、1番人気が勝つのだろうか。

 6日、中京競馬場で行われる今年のチャンピオンズC(G1)は、連覇を狙うクリソベリル(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)が圧倒的な1番人気になることが予想される。

 ここまで9戦8勝。敗れたのは今年2月のサウジCだけと、国内では無敵を誇るクリソベリル。前走のJBCクラシックでも2馬身半差で完勝しており、以前から「この秋、一番堅い本命」とさえ言われていた存在だ。

 そんなダートの絶対王者には、意外な大記録が懸かっている。

 今秋、JRAではスプリンターズS、秋華賞、菊花賞、天皇賞・秋、エリザベス女王杯、マイルCS、ジャパンCと7つのG1が行われたが、すべて1番人気が勝利。本命党にとっては天国のような状況だが、穴党にとっては「こんなことってあるの?」と言いたくなるような地獄に違いない。

 しかし、実は過去に1度だけJRA・G1における「1番人気7連勝」という記録がある。1985年の菊花賞から、翌86年桜花賞まで1番人気が7連勝しており無論、JRAの最多記録だ。つまり、今回は新記録が懸かっているのだ。

 グレード制が導入されて間もない1985年の秋。菊花賞を1番人気で制したのは皐月賞馬のミホシンザンだった。続くマイルCSでは当時の最強マイラーのニホンピロウイナーが完勝、ジャパンCでは皇帝シンボリルドルフが昨年3着のリベンジを果たしている。

 続く阪神3歳S(現・ジュベナイルフィリーズ)は、牡馬のカツラギハイデンが優勝。当時は牝馬限定戦ではなく、関西の2歳王者決定戦だった。なお同日に行われた朝日杯3歳S(現・フューチュリティS)はダイシンフブキが勝利している。年末の有馬記念はシンボリルドルフが4馬身差の圧勝で、史上初の7冠馬に輝いた。さらに年が明けた4月、桜花賞でバトンを受け取ったのが、後の三冠牝馬メジロラモーヌである。

 そして、見事ファンの期待に応えた本命馬達から“記録”を託されたのが、皐月賞を迎えたダイシンフブキだった。

 二冠馬ミホシンザン、最強マイラー・ニホンピロウイナー、皇帝シンボリルドルフ、さらには史上初の三冠牝馬メジロラモーヌという豪華絢爛な歴史的名馬たちが紡いだ「一番強い馬が勝つ」という流れ……。当時、記録が注目されていたのかは定かではないが、もし意識していれば尋常な重圧でないことは想像に難しくない。

 しかし、当時のダイシンフブキはプレッシャーを十分に跳ね返せるだけの大器だった。

 前年に1度バトンを引き継いでいるように、すでに2歳王者だったダイシンフブキ。しかも、ここまでデビューから負けなしの5連勝で皐月賞トライアルの弥生賞(G2)を制覇。1番人気に推されて当然の存在だった。

 レース運びも完璧だった。好位を追走し、最後の直線では手応え良く先頭に並びかける。当時のファンは誰もが、またも本命決着を覚悟したことだろう。

 しかし、そこからズルズル後退したダイシンフブキは、レース中に骨折していたことが判明……そのまま無念の引退となったのだ。

 あの悲劇から34年。再び本命馬たちは重圧を跳ね返し、バトンを7回繋いだ。

 果たしてグランアレグリア、デアリングタクト、コントレイル、アーモンドアイ、ラッキーライラックから“新記録達成”を託されたクリソベリルは、先頭でゴール板を通過できるだろうか。勝ち負けも大事だが「まずは無事に」とエールを送りたい。