今週行われる菊花賞は皐月賞、日本ダービーに続く3歳クラシック最終戦の大一番。皐月賞は芝2000m、日本ダービーは芝の2400m、そして菊花賞は更に600m伸びて芝の3000mで行われる。
競馬はブラッドスポーツと呼ばれるように、血統が大きな要素を占めている。短距離向きの血統、中距離向きの血統、ダート向きの血統、そして長距離向きの血統などがあり、菊花賞が行われる芝3000mの長距離適性があるかどうかがレースを勝つために必要である。
その長距離適性は大きく分けて血統や気性に影響されるが、コントレイルは陣営も語っているように3000mといった長距離戦は不向きという。つまりディープインパクト以来となる無敗の三冠がかかったこのレースではあるが、コントレイルにとって長距離というのは一つの弱点として周知されているのである。
とは言いつつも、鞍上の実績やコントレイルの能力は歴然であり、圧倒的な力の差があることで長距離適性を克服して勝利するかもしれない。しかしながら、逆にこの長距離戦で抜群の適性を誇ることで、コントレイルを逆転できる可能性を秘めている馬がいるかもしれない。
そこで今回は、出走馬の血統、戦績、気性、そして関係者のコメントなどから、この菊花賞の逆転が期待できる長距離向きの馬を探してみた。コントレイルを逆転できるかどうか、コントレイルの相手として馬券に組み込めるかどうか 、興味深いデータが浮かび上がったので、ぜひご覧いただきたい。
■コントレイル
父:ディープインパクト
母:ロードクロサイト
母の父:Unbridled’s Song
父ディープインパクトは自身も菊花賞や天皇賞(春)を勝利。産駒も菊花賞と天皇賞(春)を合わせて5勝している。特に菊花賞は過去4年で3勝と抜群の成績。芝3000m以上は勝率7.7%・連対率22%と高い。母ロードクロサイトはJRA未勝利で出走は短距離のみ。Unbridled’s Songは、産駒がJRAの芝2200m以上は16戦未勝利で2着が1度のみだが、母の父としてはトーホウジャッカルが菊花賞を勝利している。ただしコントレイルと同じ父ディープインパクト産駒のダノンプラチナはマイルまでだった。Mr.Prospector系の短~中距離向き種牡馬で、どちらかといえばこの距離はマイナス。実績と能力は飛びぬけているが、血統的に長距離適性は後退する。ただし折り合いに不安のない気性と日本ダービーの内容から、距離延長はプラスにならないが大きなマイナスにもならない。
■サトノフラッグ
父:ディープインパクト
母:バラダセール
母の父:Not For Sale
父ディープインパクトは過去4年の菊花賞3勝。芝3000m以上は勝率7.7%・連対率22%と安定。母バラダセールはアルゼンチンオークス(ダート2000m)の勝ち馬で、産駒が芝2500mでも勝利している。Not For Saleは母の父としてダノンファンタジーなどを輩出。2勝目をあげた芝2000m戦後に、鞍上のマーフィーは「距離が延びる方がいい」とコメントしており、距離延長で期待が高まる。
■サトノインプレッサ
父:ディープインパクト
母:サプレザ
母の父:Sahm
父ディープインパクトは過去4年の菊花賞で3勝。芝3000m以上は勝率7.7%・連対率22%。母サプレザは外国馬ながら日本のマイルチャンピオンシップに3年連続で出走し最高3着。芝1800mを超える距離を使ったことがなく、また母の父SahmはMr.Prospector産駒で距離延長はマイナス。また折り合いに難がある馬で、ペースが落ち着くこの距離はプラスとは言えない。
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■レクセランス
父:ディープインパクト
母:エクセレンス2
母の父:Champs Elysees
父ディープインパクトは過去4年の菊花賞で3勝。芝3000m以上は勝率7.7%・連対率22%。母エクセレンス2はフランスオークス3着などの実績があり、母の父Champs Elyseesは、日本でもファインモーションやエアエミネムでお馴染みのDanehill産駒。総合的に見てディープインパクト産駒ではあるものの、2000mあたりがベストの血統。
■ディープボンド
父:キズナ
母:ゼフィランサス
母の父:キングヘイロー
父キズナは天皇賞(春)に2度出走し、ともに1番人気で4着と7着。昨年デビューの新種牡馬だけに産駒は芝3000m以上に出走がなく、今回が初の挑戦。キズナの父ディープインパクトは長距離向きの産駒と中距離向きの産駒がはっきりしており、産駒がJRAの芝2000mで19戦1勝、2200m以上で未勝利だったStorm Catが母の父であるキズナはマイル~中距離向きの印象。ディープボンドの母ゼフィランサスは1200~1800mで勝利し、キングヘイローは菊花賞5着など芝2000m以上で11戦未勝利、母の父としての活躍馬もマイル以下に集中と強調材料はない。ただ鞍上の和田竜二騎手は「スタミナがあって距離は伸びた方がいい」とコメントしており、穴馬候補に一考か。
■キメラヴェリテ
父:キズナ
母:ルミエールヴェリテ
母の父:Cozzene
父キズナは産駒も自身も芝3000m級での長距離実績はなし。本馬の母ルミエールヴェリテは産駒が合計8勝もすべてダートで芝は未勝利。CozzeneはJRAの芝2200以上で23戦1勝のみで、母の父としてイスラボニータなど活躍馬を出すも、実績は2000m以下に集中しており長距離戦は分が悪い。血統的にも実績的にも今回の条件は厳しい。
■マンオブスピリット
父:ルーラーシップ
母:サンデースマイル2
母の父:サンデーサイレンス
父ルーラーシップは産駒キセキが菊花賞を勝利と適性は十分。母サンデースマイル2はイギリスで生産されたサンデーサイレンス産駒で、産駒が合計18勝しているがすべて1800m以下、2000m以上は16戦して未勝利。母の父サンデーサイレンスはディープインパクトなどを輩出した大種牡馬。ただし同馬に騎乗したスミヨンとルメールは「距離は2000mぐらいまで」とコメントしており、総合的に見てもこの条件はマイナス。
■ロバートソンキー
父:ルーラーシップ
母:トウカイメガミ
母の父:サンデーサイレンス
父ルーラーシップは2017年の菊花賞馬キセキを輩出。母の父サンデーサイレンスは多数の菊花賞馬を輩出。ただしこれまでデビューした8頭の母トウカイメガミ産駒は、芝2000m以上で10戦未勝利。同じルーラーシップ産駒の兄クラークキーも芝1800m以下【4.3.0.6】に対し芝2000m以上は3戦未勝利。ロバートソンキーも勝利は1600mのみで、神戸新聞杯3着は評価しつつも距離延長はプラスではなさそう。
■バビット
父:ナカヤマフェスタ
母:アートリョウコ
母の父:タイキシャトル
父ナカヤマフェスタは菊花賞12着。産駒は芝2500m以上で【4.2.3.28】で勝率10.8%・連対率16.2%となかなかの数字。父ステイゴールド産駒は菊花賞と天皇賞・春を合計6勝とその血は侮れない。母アートリョウコは未出走。タイキシャトルは1200~1600mで活躍し、産駒は芝2500m以上で47戦1勝2着1回、母の父としては日本ダービー馬ワンアンドオンリーを出すが、同馬は3000m以上で3戦してすべて7着以下と長距離は不向き。陣営は「本質的には中距離向き。先々は1800m以下が主戦場」と語っており、この条件はマイナスだろう。
■ヴェルトライゼンデ
父:ドリームジャーニー
母:マンデラ
母の父:Acatenango
父ドリームジャーニーは、産駒が菊花賞と天皇賞・春を合計6勝しているステイゴールドを父に持つ。自身は菊花賞5着・天皇賞(春)3着と長距離G1を勝てなかったが、有馬記念と宝塚記念を勝利。産駒は芝2400m以上で85戦2勝と勝率は低いが、今年2月のダイヤモンドS(G3・芝3400m)をミライヘノツバサが勝利した。母マンデラは昨年の菊花賞馬ワールドプレミアの母で、ヴェルトライゼンデは菊花賞馬の弟にあたり適性は十分。Acatenangoはジャパンカップを勝ったランドの父で、母の父としてケンタッキーダービーやドバイワールドカップを勝利したアニマルキングダムを輩出。自身も産駒も芝2400mを中心に活躍した。骨折&熱発明けの神戸新聞杯はコントレイルを上回る上がり最速を記録しており、血統背景からも逆転の可能性を秘めている。
■ガロアクリーク
父:キンシャサノキセキ
母:ゴールドレリック
母の父:Kingmambo
父キンシャサノキセキは芝1200mの高松宮記念連覇。1600mを超える距離での出走経験がないが、産駒は芝2400~2600mで【3.1.3.25】と勝率9.3%は悪くない。ただしその距離での勝利はウインブルーローズ一頭のみのもので、しかも2勝クラスまでの成績。オープンクラスでの勝利はなく、やはり適距離とはいいがたい。母ゴールドレリック産駒に目立った活躍馬はなく、KingmamboはJRAの芝2500m以上で34戦1勝と勝率は2.9%。ただし母の父としてはスズカマンボが天皇賞(春)を勝利している。本質的にはMr.Prospector産駒で距離延長はマイナス。スプリングSを勝った時の鞍上ヒューイットソン騎手は「距離は2000mくらいが限界かも」と語っており、今回の条件は厳しいといえるだろう。
■ビターエンダー
父:オルフェーヴル
母:ビタースウィート
母の父:Afleet Alex
父オルフェーヴルはステイゴールド産駒で三冠馬。菊花賞では3分2秒8でレコードタイムに0.1秒差の好時計。産駒は距離を問わず活躍しており、長距離戦の勝率も10%を超えている。母ビタースウィートはダート短距離で3勝をあげ、産駒は芝の中距離で勝利している。Afleet Alexはアメリカの3歳クラシック二冠馬だが、Mr.Prospector~アフリートと続く血統でダートの短距離向き。日本ではダートで4勝、芝で1勝と、やはりダートで結果を残しており、芝3000mの条件を後押しするタイプではない。先々ダート中距離路線に転向すれば要注目の一頭。
■ディアマンミノル
父:オルフェーヴル
母:イソノスワロー
母の父:デヒア
父オルフェーヴルはステイゴールド産駒で2011年の菊花賞馬。産駒も長距離適性があり、他の種牡馬より好材料。母イソノスワローは現役時代未勝利だが、産駒はトラストワンが中距離で活躍するなど好成績。ただしデヒアはJRA芝2000m以上で82戦して未勝利、2200m以上だと18戦してすべて6着以下。母の父としても日本の活躍馬はマイル以下に集中。ディアマンミノルは芝2200~2400mを連勝中だが、明らかに父オルフェーヴルの影響が強い。メルボルントロフィーで騎乗した酒井騎手の感想では「距離は2400mぐらいが良さそう」とのこと。
■ブラックホール
父:ゴールドシップ
母:ヴィーヴァブーケ
母の父:キングカメハメハ
父ゴールドシップは菊花賞、天皇賞(春)を勝利したほか、3000mの阪神大賞典を3勝し、芝3000m以上は7戦5勝というステイヤー。種牡馬デビュー2年目で産駒は3000m以上の経験がないが、芝2600mで14戦2勝、勝率14.3%・連対率35.7%・複勝率50%の好成績。ヴィーヴァブーケは桜花賞2着など、短距離で活躍したブルーリッジリバーが母。母の父キングカメハメハは距離不問の万能種牡馬だが、牝系は短距離系統でこの距離はマイナス。ただ初めての距離で父の血が騒げば上位争いも…
■ヴァルコス
父:ノヴェリスト
母:ランズエッジ
母の父:ダンスインザダーク
父ノヴェリストは今年種牡馬デビュー4年目だが、いまだ芝3000m以上に出走した産駒がいない。その4年で芝2500m以上は2勝のみなので、長距離向きの種牡馬とは言えない。母ランズエッジはディープインパクトの妹で、母の父は1996年の菊花賞馬ダンスインザダーク。産駒は3000m以上でG1を3勝するなど重賞10勝と抜群の長距離適性。芝3000m以上の勝率13.7%・連対率23.3%・複勝率32.6%はすべての条件でトップ。母の父としてもユーキャンスマイルやアルバートが3000m以上の重賞を勝利と適性は抜群。前走でも騎乗した三浦騎手は「距離が延びるのはいい」と語っており、父の適性に疑問はあるものの、ダンスインザダークの底力で上位争いも。
■アリストテレス
父:エピファネイア
母:ブルーダイアモンド
母の父:ディープインパクト
父エピファネイアも母の父ディープインパクトも菊花賞馬。エピファネイア産駒のデアリングタクトが秋華賞を勝利したが、エピファネイア産駒は芝2500m以上を16戦して【5.1.1.9】、勝率31.2%・連対率37.5%・複勝率43.8%と抜群の長距離適性を見せている。しかもディープインパクト産駒は過去4年で菊花賞3勝、母の父としてもキセキが勝利して過去4年の勝ち馬すべてに絡んでいる。もっとも活躍が期待される超新星だ。
■ターキッシュパレス
父:Golden Horn
母:Regency Romance
母の父:Diktat
父Golden Hornはイギリス生産馬で9戦7勝。凱旋門賞、イギリスダービーなど実績は抜群。母Regency Romanceは9戦1勝で目立った成績はなく、Diktatはマイル以下が主戦場で日本の安田記念に出走して2着の実績がある。母の父としてクルーガー、サクセッションが日本の重賞を勝利しているが活躍馬は1800m以下が中心。神戸新聞杯後に富田騎手が「スタミナはあるので距離が延びるほど良さが出そう」と評しているが、良馬場の時計勝負は厳しく雨が降れば馬券に一考。
■ダノングロワール
父:ハーツクライ
母:ソーメニーウェイズ
母の父:Sightseeing
芝2400~2500mで3勝と実績はすでに長距離戦にシフト。父ハーツクライは現役時代に菊花賞も天皇賞(春)で5着以下だったが、産駒はフェイムゲームやウインバリアシオンが長距離重賞で活躍し、3000m以上で連対率25.6%・複勝率33.3%など好成績。母ソーメニーウェイズはアメリカで10戦5勝。母の父Sightseeingは目立った活躍馬はいない。芝2400mで初勝利時に鞍上のマーフィーが「先々はもっと延びても良さそう」と語っており、ここで長距離適性が開花する可能性も。
以上を踏まえると菊花賞の芝3000mがプラスに出る馬、マイナスに出る馬、プラスでもマイナスでもない馬に分かれた。それらをまとめると以下のようになる。
◎プラスに出る馬
6番 ヴェルトライゼンデ
7番 ダノングロワール
9番 アリストテレス
10番 サトノフラッグ
14番 ヴァルコス
15番 ブラックホール
×マイナスに出る馬
1番 ディアマンミノル
2番 ガロアクリーク
4番 マンオブスピリット
5番 サトノインプレッサ
11番 バビット
17番 キメラヴェリテ
18番 ビターエンダー
△可もなく不可もない
3番 コントレイル
8番 ディープボンド
12番 レクセランス
13番 ロバートソンキー
16番 ターキッシュパレス
近年の長距離戦はスローペースが多く、スタミナを要求されないため長距離血統でなくても結果を残すケースは多い。しかし今年はキメラヴェリテとバビットの逃げ争いで流れが速くなり、ある程度のスタミナが要求されそうだ。
この菊花賞でスタミナと長距離適性を重視するならば、サトノフラッグ、ヴェルトライゼンデ、アリストテレス、ダノングロワール、ブラックホール、ヴァルコスの6頭はぜひ押さえておきたいところ。馬券の軸がコントレイルであれば、相手に加えることをオススメする。