外食大手のコロワイドは9月9日、定食チェーン、大戸屋ホールディングスに対する敵対的TOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。締め切り日としていた8日までに200万株を集め、TOBの下限である151万株を上回った。コロワイドの持ち株比率は19.16%から46.77%に高まった。取得費用は約61億円。
コロワイドは取締役全員の解任を目的として11月上旬の臨時株主総会の開催を求めたことも公表した。株主総会で現在の取締役11人全員を解任し、自社が推す取締役候補7人を選任するよう提案する。新社長にはコロワイド創業家の蔵人賢樹専務を据える。
一方で、「円滑な再建に向けコロワイドの方針に理解を示す複数の役員の留任を含めた会社提案の提出を大戸屋に打診している」としている。大戸屋経営陣が15日までに総会の開催と、コロワイドの人事案に賛成すれば、一部の経営陣を取締役候補に加えることを検討する。
「株主が決めたことだ。結果を受け入れるしかない」。コロワイドのTOB成立を受け、大戸屋の窪田建一社長は8日夜、涙をにじませながらこう言葉を絞り出した。
大戸屋のホワイトナイトは見つからなかった
外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めてのことだ。コロワイドは、難航していた買収を1年がかりでやっと、前に進めた。
19年10月、コロワイドが大戸屋の筆頭株主として突如、登場した。創業家から大戸屋株式の18.66%を取得(その後、19.16%まで買い増した)。11月、子会社化を持ちかけた。コロワイドは居酒屋「甘太郎」や焼き肉チェーンの「牛角」など夜間営業が中心。昼が主力の定食の大戸屋を取り込むことを狙った。
しかし、交渉は難航した。今年6月の定時株主総会で、コロワイドは経営陣の刷新を株主提案したが、委任状争奪戦(プロキシファイト)の末、否決された。株主総会から2週間後の7月9日、コロワイドは大戸屋のTOBを発表した。買い付け価格は1株3081円。TOB発表前の株価に46%のプレミアムを上乗せした。TOB成立の条件の下限は45%、上限を51.32%とした。
7月20日、大戸屋はTOBへの反対を表明。敵対的TOBに発展した。ここから、敵対的TOBに対抗するためのホワイトナイト(白馬の騎士)探しの行脚が始まる。ホワイトナイトが見つからなければ飲み込まれてしまう。
投資ファンドや株主である取引先企業に打診したが断られた。新型コロナウイルスで大きな打撃を被った外食企業は、ファンドにとって魅力的な投資先ではない。取引先企業は、外食大手のコロワイドに睨まれるのは得策ではないと、腰が引けた。
8月14日、大戸屋は有機・無添加食品の通信販売会社、オイシックス・ラ・大地と業務提携した。ただし、これは資本提携ではないから、ホワイトナイトにはなり得ない。コロワイドのTOBが成立するのは、ほぼ確実の情勢となった。
取得株の下限は引き下げたが買い付け価格は据え置き
事態は急変する。当初のTOB期限だった8月25日の時点では目標に届かなかった。コロワイドは期限を9月8日に延長。取得株の下限を当初の45%から40%に引き下げた。買い付け価格3081円は据え置いた。
カギを握るのは個人株主である。株主総会では個人株主が反対したため、コロワイドの株主提案は否決された。そこで46%のプレミアムをつけ、個人株主が、すんなり、TOBに応じることを狙ったが、株主の6割を占める個人株主の動きは鈍かった。
個人株主が買い付け価格の引き上げを求めていることは明らかだったが、コロワイドは、そうしなかった。コロワイドがTOBの期限を9月8日に延長すると発表したのは8月25日。その日の終値は2700円。TOBの買い付け価格3081円より381円安い。2700円で手に入れて、TOBに応じれば、利ザヤが抜ける。こんなおいしい話はない。
利にさとい短期の投機筋が大戸屋株に殺到した。26日の売買高は48万9800株。前日の5万4200株の9倍以上に膨れ上がった。その後も、10万株を超える商いが連日続いた。大戸屋株の通常の商いは2~3万株程度だったから、いかに大商いだったかがわかる。短期筋がTOBに応じ、コロワイドは薄氷の思いでTOBの成立にこぎつけた。
コロワイドは面目は保ったが、当初目標としていた過半数の株式を握ることには失敗した。大戸屋の子会社化に向けて、次はどんな手を繰り出すのか。
(文=編集部)