9月に入り、夏競馬も今週がラストウィークとなる。
来週からは多くの競馬ファンが待ち望んだ秋競馬に突入する訳だが、この時期に関係者が頭を悩ませるのが「3歳未勝利馬」への対応だ。
夏競馬と同様に、今週が最後となる今年の3歳未勝利戦。一昨年までは、秋の4回阪神、4回中山の最終日まで3歳未勝利戦を実施していたのだが、昨年からは夏の2回札幌、2回新潟、2回小倉の最終日までと、1ヵ月ほど期間が短くなった。
さらに、3歳以上の未出走馬および未勝利馬が、新馬競走を除いた平地競走において3走連続して9着以下になった場合、2ヵ月間平地競走に出走できないというルールも追加。いわゆる「スリーアウト」ルールと言われるものだが、これらによって3歳未勝利馬の状況は以前より過酷になっているのである。
そして今回、早々に出走できない状況を見極め、「秘策」に打って出たのが矢作芳人調教師だ。
地方競馬で唯一の芝レースがある盛岡競馬。7日(月)、その芝レースをターゲットに出走してくるのが、リスグラシューの妹リリレフア(牝3歳、栗東・矢作芳人厩舎)である。
本馬はデビューからの2戦をともに4着と健闘していたが、今年の2月に左前膝の形を整えた方が良さそうとの診断で、骨のクリーニング手術が実施された。
その後、8月になってようやく復帰を果たしたが、結果は8着と惨敗。6着以下に敗れた事によって、近2週は非当選除外を受けていた。
今週の3歳未勝利戦で敗れた馬や、本馬のように出走すら叶わなかった馬。それらの競走馬が再度JRAで出走するには、以下のような方法がある。
[1]未勝利の身でありながら、1勝クラスへ格上挑戦する。
[2]地方競馬へ転厩して3勝し、JRAへの再転厩を目指す。
[3]JRAに所属しながら、地方指定交流競走で1着になる。
上の1勝クラスでも能力が勝る馬であればJRAで格上挑戦をする事も可能であるし、地方競馬へ転厩して3勝すればJRAへの再転厩も可能だ。
しかし、矢作調教師が決断を下したのが[3]である。
「格上挑戦と言っても1勝クラスの馬との兼ね合いから、思うようにレースが使えない事もしばしば。もちろん、その間も預託料などはかかっていますし、出走できても格上相手に通用しない可能性も高いですからね。地方競馬へ転厩した場合も何とか3勝して中央に出戻ったとして、その後に勝てないなら馬主の負担は増すばかりですから……」(競馬記者)
上記のような理由もあり、可能性を見出せない馬は「引退」という選択をせざるを得ないのが現実なのである。
しかし、矢作調教師が選択した方法であれば、中央の格上挑戦で強い馬を相手にする必要もなく、地方転厩での3勝に時間を要する必要もない。地方指定交流競走で他の中央馬も参戦はしてくるのは当然だが、恐らく約半分は地方所属馬。中央での格上挑戦よりは、ハードルは低い可能性が高いだろう。
「ここに目を付けたのは、さすが矢作芳人調教師ですよね。競走馬の状態はもちろん、オーナーの金銭的負担なども考えての選択なのではないでしょうか。リーディング1位なだけあって、馬のあらゆる可能性を探っているのだと思いますよ」(同)
名伯楽によって貴重なチャンスを得たリリレフア。偉大な姉に少しでも近づく為にも、ここは絶対に負けられない。