パチンコ新装初日に起きた「珍事件」!? 新人スタッフを襲った「悲劇の黒幕」は…


 パチンコ店は、遊技台のトラブルなどが起きないように、メンテナンスやチェックをこまめに行っております。これはお客様へ快適に遊技できる環境を提供するために必要不可欠です。

 しかし、どれだけ事前準備を行っても「トラブルが起きやすい日」がございます。

 それは「新台入替の初日」です。

 入替を行う遊技台の数にもよりますが、数百台クラスの大規模な入替を要する場合は、作業に何時間も掛かります。スタッフの人出が足りない場合は、台の設置業者に依頼して手伝ってもらわなければなりません。

 新台入替の前日に店休日を設ける事が義務付けられている地域では、丸一日を入替作業に使う事ができます。しかし、店休日のない地域は、閉店後から次の日の開店時間までに入替作業を完了させないといけません。その労力は、ご理解いただけるのではないでしょうか。

 私の勤めていたホールには店休日がありませんでした。大規模な入替の際は、夜に出勤して次の日の開店時間までぶっ通しで仕事をする事もありました。そのような状況で、数百台クラスの入替を長時間やっていると「何かしらのミス」が起きても不思議ではありません。そのミスが、なんてことはない些細なものであれば問題ありませんが…。

 中には遊技が不可能となる重大なミスによって「深刻なトラブル」へと繋がってしまう事もあるのです。

 今回は、私が「新台入替の初日」で体験した「大事件」になりかけた印象深いエピソードをご紹介いたします。

 その日は、年に数回あるかどうかの超大型の新台入替の初日。私は前日の閉店後から朝まで入替作業を行い、夕方に遅番として出勤するという超過酷なスケジュールでした。

 昼間に睡眠をとったとはいえ、重労働の疲れは癒えません。新装初日の遅番では勤務開始から既にフラフラでした。しかし、疲れていると言って適当に業務をするわけにはいきません。己に喝を入れて親切丁寧な接客を心がけていたのです。

 この日は、私が教育係をしている新人スタッフも出勤しておりました。真面目で仕事を覚えるスピードも早く、ほとんどの対応を一人でこなせる子でした。無論、まだ分からない仕事がありますので、困ったら私が助けに行って指導していたのです。

 そんな新人スタッフが、パチンココーナーからお客様に呼び出しを受けて対応へ向かいました。私はその様子を遠目から見守っていたかったのです。しかし、この日は大型入替という事でお客様も多く、新人スタッフを気に掛ける余裕がないほどに忙しかったのです。

 仕事のできる子だったので「問題ないだろう」と思っていたのですが、いつまでたっても対応が終わらない様子。私は、心配になって現場へと向かったのですが…。

 そこには怒り狂うお客様と、半泣き状態でトラブル対応を行っている新人スタッフの姿があったのです。

 私は慌てて現場へ向かうと、お客様から「この台痛くてまともに打てねーぞ!こんな不良品置いてんじゃねえよ!」とキツイ口調で言われました。

「痛くて打てないってどういう事だ?」と状況を呑み込めなかった私は、直ぐに新人スタッフから事情を伺ったのです。すると、「お客様からハンドルから電流が流れて痛くて遊技できないと言われたので、ハンドルに不具合がないか確認したんですが…。何をやっても直らなくて、お客様が怒ってしまいました」との事。

 試しにハンドルを触ってみると、バチっという音と共に強烈な痛みが私の手を襲ってきました。「軽い静電気だろう」と思っていただけに驚きました。これではとてもハンドルを握れませんし、お客様が怒るのも無理はありません。

 ハンドルを直せずにいる新人スタッフへの苛立ちも相まって「妙な電気流して遠隔やってるんだろ!」と、強い口調でまくし立てておりました。更には「いつも特定の常連ばかり出しやがって!」という根も葉もない事を言う始末。もはや怒りは頂点へと達していたのです。

 実は、私はこの時点で「トラブルの全貌」は分かっておりました。それは後述いたしますが、とりあえずは「これ以上お客様を待たせるのはまずい」と思い、直ぐにハンドルの問題を解決してお客様へ台を開放したのです。すると「なんだ、そんな早く直せるなら最初からお前に頼めばよかったわ」と、トーンダウンして下さり、大事にならずに一安心したのでした。

 今回のトラブルは、遊技台に付属されている「アース線」を島に接続していなかったのが原因です。角台の近くにある吸い殻を回収するモーターの電気が、ハンドルを伝って流れてしまっていたのでしょう(ホールが全面禁煙となる前の話です)。

 本件の新人スタッフは、ある程度のトラブルは対応できますが、アース線の存在はまだ教えていませんでした。お客様に怒られた経験も初めてという事もあり、非常に落ち込んでいたのです。涙を浮かべながら「すみませんでした…」と言っておりました。

 私は「今回のトラブルの対処法は教えてなかったし仕方ないよ」「台の取り付けでアース線を付け忘れた奴が悪いんだから気にしないで」と必死になってフォローを入れたのです。「仕事終わったら美味しいご飯をご馳走してあげるから、今日の事は忘れよう」と励まし、ようやく笑顔を取り戻しました。

 今思うと、新人スタッフには本当に申し訳ない事をしました…。

 なぜならば、アース線を付け忘れたのは、この私だったからです。

 もちろん、事実を伝え謝ろうとしました。ただ、お客様が予想以上にお怒りになっていた事、それによって、新人がひどく落ち込んでしまったので、白状するタイミングを逃してしまったのです。私は罪悪感で一杯となり、必要以上に優しく接するようになったのは言うまでもございません。

 そんな新人スタッフも、私がホールを去る頃には立派なホールリーダーとして成長しておりました。今度会う際には、あの頃のザンゲ話を肴にして、朝まで飲み明かしたいですね。

(文=ミリオン銀次)