「必要以上にお客様と仲良くしてはいけない」
会社によってルールは異なると思いますが、パチンコ店員が特定のお客様と必要以上に仲良く接する事を禁止しているホールがほとんどだと思います。
不特定多数のお客様が遊技されている中で、必要以上に接客してしまうと「あの客だけ特別扱いしている」「出る台を教えているのではないか」といった「あらぬ誤解」を生みかねません。お店の印象が悪くなる原因にもつながります。
私の勤めていたホールも、お客様との接し方にはルールが定められており、連絡先を交換したり、「個人情報に関わる会話」というものは固く禁じられておりました。無論、お客様から話しかけられたりした際は快く応答しますし、接客の範疇でコミュニケーションをとる事はホール店員の立派な業務の一つだと思います。
お客様とのコミュニケーションを行う理由は、楽しく遊技していただくために他なりません。しかし、時にお客様を怒らせてしまったり、気まずい空気となってしまう事もあるでしょう。
私は長い事ホール店員をやってきましたが、お客様とのコミュニケーションで「ヤラかした経験」も少なからずございます。今回は、ひょんな事から「悲劇」を招いてしまったエピソードをご紹介しましょう。
ホール店員は、呼び出しランプの対応やジェットカウンターでのメダル計数など色々な場面でお客様から声を掛けられます。「○○円使ってこれしか出なかったよ」「今日は調子がいい」など様々です。スタッフは状況に応じてシチュエーションに合った対応を心がけなくてはなりません。
負けているお客様に満面の笑顔で会話してしまえば、「俺が負けてるのがそんなに面白いか!」と反感を買ってしまいます。この場合は「申し訳ない」と伝わるように神妙な面持ちで接するのがベストです。
逆に、大量の出玉を獲得して喜んでいる方や、大当りして嬉しそうに話しかけてくださる方には、これ以上ない笑顔で対応するべきでしょう。私も接客のプロとして、状況に応じて適切な対応をとる事には自信があったのですが…。
実は、私が笑顔で対応した中で、お客様を悲しませる結果となってしまった事が一度だけございます。
私のいたホールでは、パチンコ台の盤面で生じたトラブルを対応した際は、「サービス玉」としてヘソに数玉入れるルールがございました。このような対応をとるホールは数多く存在していると思います。
サービス玉を入れてもらった時は「当たらないかな」なんて淡い期待をしてしまうものです。そう思う方は多いのではないでしょうか。
ある日、私はお客様に呼ばれてトラブルを対応し、サービス玉をヘソへ入れました。すると入賞時にけたたましい音が鳴り、筐体が激しくフラッシュしたのです。
すると、お客様は「店員さん!これ相当アツい演出なんですよ!」と興奮した様子で話しかけてきました。私も「それは良かったです」と笑顔でお応えして、その場を離れようとしたのですが…。
「5万も負けてて泣きそうになってたんです…店員さんがくれたチャンスに賭けるしかないんです!一緒に見守っててください」と言われてしまい、離れるに離れられなくなってしまったのです。
私は自分で入れた「サービス玉」の行く末をお客様と一緒に見守る事にしました。すると、数多くのチャンスアップが絡み、更には激アツと呼ばれる演出が出現して期待度は最高潮に達したのです。
お客様のテンションもMAXになっており「これ絶対当たったよ!ありがとう店員さん!」と握手を求めだす始末。相当負けが込んでいて、嬉しかったのでしょうが…。
私は内心「これだけ盛り上がって外れたらどうしよう…」という不安で一杯でした。リーチはクライマックスを迎え、当否が決する場面となりました。「頼む!当たってくれ!」と強く祈りました。他人の遊技でこれだけ大当りを願ったのは後にも先にもこの時だけです。
当否の瞬間。「ボタンを押せ!」というアナウンスが流れると、お客様は力強く拳を握りつつ、「いやー助かったー」と勝利を確信したような余裕の表情でゆっくりとボタンを押したのでしたが…。
プスン…最高潮の盛り上がりを見せていた液晶は静まり返り、テンパイ図柄と異なる図柄が真ん中に停止していたのです。
「え?ウソでしょ?」と驚きを隠せない様子のお客様。「あ!復活か!」と逆転演出を期待するも、台は無情にも次回転に突入しまったのでした…。
現実を受け入れられない唖然とした表情でこちらを向くお客様。私は、もはやどんな表情をして、どんな言葉を投げかければいいのか分かりませんでした。気まずい空気に耐えられなくなった私は「失礼しました」と深々に一礼して立ち去ったのです。
この一件以降、私が「サービス玉」を入れた際に、必要以上のコミュニケーションをとる事がなくなったのは言うまでもありません。
皆さんもホール店員にサービス玉を入れてもらう機会があるかと思いますが、店員を巻き込むことなく一人で当否を楽しむ事をオススメいたします。どれだけ熱い展開になっても、外れてしまえば相当気まずいですから。
(文=ミリオン銀次)