パチンコ店で「カルチャーショック」の冷やかし!? 女性スタッフの「心を奪った珍客」が来店


 今や、日本を代表する娯楽「パチンコ」。

 演出やゲーム性は時代の流れとともに進化し、エンターテイメント性に富んだ娯楽として確固たる地位を築き上げました。今では海外の方々も「パチンコ」という文化に興味を示しており「日本に行ったらパチンコをやってみたい」という声も多くなっております。

 私が働いていたホールでも「海外からの旅行客」と思われる方が度々来店されておりました。遊技台を物珍しそうに眺める方や、カウンターに並ぶ豊富な景品に興味津々の方など、日本独自の文化を肌で感じて楽しんでいたのです。

 中には、実際にパチンコにチャレンジしようとする方もいらっしゃいましたが、当然ながら遊技方法を知らない方がほとんどで、訳も分からず困り果ててしまう事も珍しくありませんでした。

 都心部などのインターナショナルな地域のホールであれば、海外の方に向けた外国語の遊技マニュアルが完備されていると思います。しかし、私のいたホールは地方で観光地でもなかったので、海外の方が来るのは本当に稀でマニュアルなどありませんでした。

 ですので、海外の方がホールで遊技をご希望の際は、スタッフが1から全てレクチャーしておりました。英語圏のお客様であれば、英語に精通したスタッフが対応して問題なく遊技していただけるのですが…。

 英語以外の言葉を話す方にパチンコをレクチャーするのは非常に大変です。今回は私が実際に体験した海外のお客様にまつわるエピソードをご紹介しましょう。

 ある日、いつものようにホールを巡回していると、女性スタッフが声のトーンを上げて「かっこいい外人さんが来店しました♪」と嬉しそうにインカムで報告してきました。

 他の女性スタッフも「ええ!すごい気になる!」「今どこにいますか?」とテンションが上がった様子ですっかり浮かれ気分となっており、女子会のような和やかな空気がホールを包み込んでいたのです。

「ほんとだ!かっこいい!」「スタイルめっちゃいい!」と盛り上がる女性スタッフの話を聞いていると、男の私でも「どんな方だろう」と興味が出てきてしまいます。さりげなく海外の方がいる場所へと足を運びました。

 するとそこには、ゆうに190cmはあるであろう長身のイケメンがいらっしゃったのです。パッチリとした二重まぶたに長いまつ毛、高々に突き出た鼻筋。男の私でも惚れ惚れするような容姿でした。

 背中には大きなリュックを背負い、手にはキャリーバッグを持っていて、観光で日本を訪れたと一目でわかりました。好奇心に満ちた面持ちで、ホール全体をゆっくりと観察していたのです。

「打たずに帰っちゃうかな?」「打つなら遊技方法教えてあげないと!」と黄色い声援は未だに鳴りやみません。いつまでも付き合っていられないので私はホール巡回に戻りました。

 しばらくして、「海外のお客様へのレクチャー入りまーす」と、女性スタッフが嬉しそうにインカムをいれました。英語が達者なスタッフだったので、「特に問題ないだろう」と気にもとめずにいたのですが…。

 いつまでたってもレクチャーが終わらないので、私はてっきり「イケメンだからってイチャイチャしている」と思って、「A子さん、レクチャーに時間かけすぎじゃないですか?」とちょっと意地悪な感じでインカムをいれました。

 すると「英語が分からないみたいで伝わりません…銀次さん対応代わってくれませんか?」と、私に助けを求める思いもよらぬインカムが返ってきたのです。

 困っている部下を助けるため、私はすぐさま対応を代わりました。ただ、私は日本語しか話せません。話を聞いてもサッパリ分かりませんので、スマートフォンを持って対応に臨んだのです。

「翻訳機能」を使えば、お客様との会話も成立します。しかし、それにはまず「どこの国の言葉」を話されているのかを知る必要があります。お客様も自分が話す言葉を伝えたくて仕方がない様子で、必死に何かを訴えておりましたが、私の耳には呪文にしか聞こえませんでした。

 そこで私は、欧米の方っぽいという印象を信じて「この文が読めたら手を挙げてください」とヨーロッパの言語で入力しました。これが功を奏して、遂にお客様が「スペイン語」を話していると判明したのです。

 ようやく会話ができる事にお客様は喜び、拳を高々と天に付き上げました。私も一緒になって喜びましたが、翻訳機能を使って1から教えなくてはならないため、内心は「ちゃんと伝える事ができるだろうか」と不安で一杯でした。

 一連の流れは直ぐに理解していただけましたが、パチンコのシステム自体を説明するのは本当に苦労しました。かれこれ1時間はお客様に付きっきりで対応していたと思います。

「苦労したけど、やっとパチンコを楽しんでいただける」と使命を果たした達成感さえ覚えた矢先でした…。

 お客様は直ぐに席を立ち、リュックを背負って帰り支度を始めたのです。

 私は呆気にとられました…。なぜならば、お客様はレクチャーを受けただけでお金は1円も使っていないからです。「あれだけ頑張ってレクチャーした意味はあったのだろうか」と自問自答を繰り返しましたが、海外の方の考えは日本人の私には理解できないのかもしれません。

 きっと、これが「カルチャーショック」というものなのでしょう。去り際に「Gracias(ありがとう)」と言って爽やかに去っていくイケメンの姿は、本当に清々しかったのを今でも覚えております。

 ホール側の立場とすれば、お金を使わない方に1時間を費やす事は「ムダ」とも言えるかもしれませんし、当時はそう思っておりました。しかし、今は違います。海外の方にも「パチンコ」を楽しんでいただこうという姿勢が、ホールスタッフとして「あるべき姿」なのではないでしょうか。

(文=ミリオン銀次)