税理士法人を探していると、個人に近い小規模な事務所から、全国に拠点を持つ大規模な法人まで、規模の幅が大きいことに気づく。規模は事務所選びの分かりやすい指標に見えるが、「大きいほど安心」「小さいほど親身」といった単純な図式では捉えにくい。実際には、自社の事業規模や課題に対して、対応できる業務の幅と、関係を続けやすい体制とがどう噛み合うかが問われる。
本記事では、税理士法人を小規模・中堅・大規模の3区分で整理したうえで、特に中小企業との相性が問われやすい中堅規模(30〜100名)に注目し、その特徴を4つのメリットに分けて解説する。
結論:税理士法人の規模は「対応領域の広さ×継続性」で評価する
税理士法人の規模を判断するときに有効なのは、所員数の多寡そのものではなく、2つの軸で捉える視点である。1つ目は対応領域の広さで、税務顧問だけでなく、相続・事業承継・M&A・補助金といった領域を、社内でどこまで完結できるかを指す。2つ目は継続性で、担当者が固定されてリレーションが続きやすいかと、担当者が不在になっても組織でバックアップできるかの両立を意味する。
この2軸で見ると、中堅規模(30〜100名)の事務所は、中小企業に対して優位性が出やすい構造を持つ。専門領域ごとにチームを組めるだけの人数があり、かつ担当者と経営者の距離が遠くなりすぎない。小規模事務所の機動力と、大規模法人の対応領域の広さの、中間のバランスを取りやすいのが中堅規模だ。
もちろん規模だけで優劣が決まるわけではなく、同じ規模でも事務所ごとに得意領域や体制は異なる。だからこそ、対応領域の広さと継続性という2軸を起点に、自社の事業規模や相談したい内容に照らして見極めることが欠かせない。以下、規模区分の特徴を整理したうえで、中堅規模ならではの4つのメリットを順に見ていく。
税理士法人の規模区分と特徴
税理士法人の規模に明確な定義はないが、ここでは所員数を目安に、小規模・中堅・大規模の3区分で整理する。日本税理士会連合会の統計によれば、税理士の登録者数や税理士法人の数は近年も増加傾向にあり、法人化の動きが続いている。そのなかで、事務所ごとに対応できる業務の幅や体制には差があり、規模はその傾向を読み取る一つの手がかりになる。
参考:日本税理士会連合会
小規模(〜20名):機動力と密着度
所員数20名以下の事務所は、代表者や少数の有資格者が中心となって運営されることが多い。経営者と直接やりとりしやすく、意思決定が早いのが強みだ。
日常の記帳代行や申告、税務相談には機動的に対応できる一方、相続・事業承継・M&Aといった専門性の高い領域や、繁忙期に複数案件が重なる場面では、対応できる範囲が限られることもある。創業まもない企業や、業務がシンプルで密着した支援を求める事業者に向きやすい。
中堅(30〜100名):専門領域の社内チーム化
所員数30〜100名規模の事務所は、業務領域ごとに専門チームを組めるだけの層を備えている。税務顧問に加えて、相続・事業承継・補助金・コンサルティングなどを社内で分担しやすく、担当者を固定しつつ、不在時には組織でバックアップする体制も組みやすい。
中小企業が直面する複合的な課題に、外部の専門家を別個に手配せずに対応できる点が特徴だ。事業の成長に伴って相談内容が広がる企業との相性がよい。
大規模(100名超):業界別専門組織と広域展開
所員数100名を超える事務所は、全国や海外に拠点を持ち、国際税務や上場支援、業界別の専門組織を擁することが多い。大企業や上場準備企業、海外展開を伴う案件など、難度や規模の大きい依頼に組織として対応できる。豊富な人員を背景に、専門分野ごとに細かく担当を分けられるのも強みだ。
一方で、規模が大きいぶん、担当者と経営者の距離が遠く感じられたり、案件の規模によって対応の優先度が変わったりする場合もある。中小企業にとっては、用意された体制が自社の規模に対して過剰になり、費用や対応のスピード感が見合わないこともある。自社がどの専門組織に対応してもらえるのかを、相談時に確認しておくとよい。
中堅規模(30〜100名)の税理士法人が中小企業から選ばれる4つのメリット
ここからは、中堅規模が中小企業に対して持ちやすい優位性を、4つのメリットに分けて整理する。いずれも、小規模事務所と大規模法人の中間というだけでなく、中堅という規模だからこそ実現しやすい構造に注目する。
メリット1 専門領域の社内チーム化(税務/コンサル/補助金等)
1つ目は、複数の専門領域を社内のチームで分担できることである。中小企業の相談は、税務顧問にとどまらず、相続や事業承継、補助金・助成金の活用、資金繰りや経営の相談まで広がりやすい。これらを別々の専門家に依頼すると、窓口が分散し、情報共有の手間も増える。
中堅規模の事務所は、領域ごとにチームを置くことで、こうした相談を一つの窓口で受けやすい。複数の専門家に別個に依頼する負担を減らせる点は、限られた人手で経営を回す中小企業にとって実務的な利点になる。
メリット2 担当者固定×組織的バックアップ
2つ目は、担当者を固定しながら、組織としてのバックアップも効かせられることである。小規模事務所では担当者との関係を築きやすい反面、その担当者が退職・不在になると業務が滞るリスクがある。中堅規模では、担当者を固定して関係の継続性を保ちつつ、チーム内で情報を共有しておくことで、担当者の交代や不在時にも引き継ぎがスムーズに進みやすい。属人化を防ぐ仕組みがあることで、担当が変わったとたんに品質が落ちる、といった事態を避けやすくなる。
経営者にとっては、自社の事情を一から説明し直す負担が減り、長期にわたって安定した関係を築きやすい。事業の成長や代替わりといった節目を、同じ事務所と継続して乗り越えられる点も、継続性を重視する企業にとっては見逃せない利点だ。あわせて、長期的な関係を見据えるなら、所員の年齢構成にも目を向けておきたい。中途入所者や国税OBなど経験層の厚さに加えて、若手も含めた世代の幅があれば、担当者の交代や代替わりを経ても、関係を継続しやすい。
メリット3 高難度案件(事業承継・M&A・組織再編)の内製対応
3つ目は、難度の高い案件を社内で完結させやすいことである。事業承継やM&A、組織再編といった案件では、株価評価やデューデリジェンス(DD、買収前の調査)、バリュエーション(企業価値評価)といった専門的な作業が必要になる。これらを社内で内製できる体制があると、外部委託に伴う情報共有のロスや時間を抑えられる。
大手ほど組織が大きくないぶん経営者に親身に向き合いやすく、それでいて難しい局面ではチームでバックアップできる。この両立が、中堅規模の事務所で実現しやすい。難しい案件を想定する場合は、こうした体制が整っているかを事前に確認しておくとよい。
メリット4 情報管理体制への投資余力(ISO等)
4つ目は、情報管理の体制に投資する余力があることである。ISO9001(品質マネジメント)やISO27001(情報セキュリティマネジメント)といった第三者認証の取得・維持には、運用の手間とコストがかかる。これらを継続的に運用するには、一定の組織規模と体制が前提になりやすい。中堅規模以上の事務所では、こうした投資に振り向ける余力が出やすく、顧客の財務・税務情報を扱う体制を、認証という客観的な形で示せる。
とくに税理士法人は、申告データや決算書、給与情報といった機密性の高い情報を日常的に預かるため、その管理体制は本来きわめて重要な観点だ。口頭の説明だけでなく、第三者の審査を通じて運用が確認されているかどうかは、情報の取り扱いに敏感な企業にとって、確認しておきたい判断材料になる。
中堅規模(30〜100名)の税理士法人の例
ここからは、前章の4つのメリットに沿って、中堅規模で中小企業を支援している税理士法人を紹介する。順位付けではなく、同じ観点で比較できるよう整理した。まず比較表で概要を示し、その後に各社を順に紹介する。各社の情報は執筆時点の公式サイト等の公開情報に基づくため、最新の状況は各社サイトで確認してほしい。
TOMA税理士法人
1000年続くコンサルティングファームを目指すことを掲げ、中小企業の長期的な成長に伴走する総合型のグループである。グループ全体で約200名規模の体制を公表し、税務・会計に加えて、法務や労務、人事といった経営の周辺領域を、グループ内の士業連携でカバーする点が特徴とされる。
中小企業にとっては、税務の相談を起点に、経営課題の広がりに応じて窓口を増やさずに相談できる構造が魅力になりうる。専門領域を横断する相談を、一つのグループのなかで完結させたい企業に向いているとされる。具体的なサービス範囲や担当体制は、相談時に確認しておきたい。
参考:TOMA税理士法人(公式サイト)
ベンチャーサポート税理士法人
会社名が示すとおり、起業・会社設立支援に特化した総合士業グループである。会社設立支援と法人顧問の実績は累計で3万9000社を超え、全国に50を超える拠点、グループのスタッフは合計1700名規模で、各拠点は中堅規模で運営されている。税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士・弁護士の各士業が同一グループ内で連携し、会社設立後の融資、節税、助成金まで一貫して相談できる点が特徴だ。
多数の設立支援で蓄積したノウハウを生かし、創業から事業の軌道化まで伴走するスタイルで、スタートアップや成長初期の企業との相性がよい。一方で、相続や複雑な組織再編など特定の専門領域への対応は、自社の課題に照らして相談時に確認しておくとよい。
参考:ベンチャーサポート税理士法人(公式サイト)
小谷野税理士法人
東京を拠点とする中堅規模の総合系税理士法人で、本記事で挙げた4つのメリットをひととおり備える事務所の一例といえる。公認会計士・税理士等30名を含む総員約80名が所属し、税務顧問に加えて事業承継・相続・M&A・DD・バリュエーション・組織再編までを社内でワンストップに対応する。担当者を固定しつつ組織で支える体制に加え、国税OB在籍2名、外部顧問1名という布陣も公表している。
情報管理の面では、品質マネジメントのISO9001を2001年に、情報セキュリティのISO27001を2011年に取得し、いずれも長期にわたり継続している。専門領域の幅と継続性、情報管理への投資の3点を備えた中堅事務所として、確認しておきたい一社だ。
FAQ:税理士法人の規模選びでよくある質問
規模を切り口に税理士法人を検討する際に、中小企業の経営者から挙がりやすい3つの疑問について、要点を整理する。
中小企業(売上1〜10億円)には、どの規模の税理士法人が向いていますか?
一概には言えないが、事業規模や課題の幅によって目安は変わる。業務が記帳・申告中心でシンプルなうちは、機動力のある小規模事務所でも十分対応できることが多い。一方、相続や事業承継、補助金活用、資金調達など、相談したい領域が複数にまたがるようになると、専門チームを社内に持つ中堅規模の事務所のほうが、窓口を一本化しやすい。
本記事で挙げた4つのメリット(専門チーム化/担当固定×組織バックアップ/高難度案件の内製/情報管理への投資余力)のうち、自社にとってどれが重要かを基準にすると、適した規模感を絞り込みやすい。
所員数が多い税理士法人は、担当者が頻繁に交代しますか?
組織の規模と担当者の交代頻度は、必ずしも相関しない。規模そのものよりも、担当者を固定する仕組みがあるかどうかが問われる。
「担当者固定制」を明示している事務所では、規模が大きくても、特定の担当者が継続的に関わる体制を取っていることが多い。むしろ中堅規模以上の事務所では、属人化を防ぐ仕組み化によって、担当変更が生じた場合でも引き継ぎがスムーズに進み、サービスの質が維持されやすい。担当者の固定方針と、不在時のバックアップ体制をあわせて確認しておくと安心だ。
小規模事務所と中堅税理士法人で、顧問料に大きな差はありますか?
顧問料は事務所ごとに設定されるもので、規模との直接的な相関は明確ではない。同じ規模でも、依頼する業務の範囲や訪問頻度、企業の取引量によって金額は変わる。ただし、対応領域の幅や専門チームの有無は、料金の構成に反映されやすい。複数領域に対応する中堅規模の事務所では、その分のサービスが料金に含まれる場合もある。
比較する際は、規模だけで判断せず、どこまでの業務が顧問料に含まれるのかを確認したうえで、同じ条件で見積もりを取るのが現実的だ。
まとめ:税理士法人の規模選びは2軸4メリットで判断する
税理士法人の規模は、所員数の多寡で優劣を決めるものではなく、「対応領域の広さ」と「継続性」という2つの軸で評価すると、自社との相性が見えやすくなる。この視点で見ると、中堅規模(30〜100名)の事務所は、専門領域の社内チーム化、担当者固定と組織的バックアップの両立、高難度案件の内製対応、情報管理体制への投資余力という4つのメリットを備えやすく、中小企業との相性がよい構造を持つ。
もっとも、規模はあくまで手がかりの一つであり、同じ規模でも得意領域や体制は事務所ごとに異なる。
大切なのは、規模の数字だけで判断せず、自社が求める対応領域と関係の続けやすさに照らして選ぶことだ。現時点の課題だけでなく、数年先の事業の広がりまで見据えて規模感を考えておくと、長く付き合える相手を選びやすい。どの規模感が合うか迷う場合は、中小企業向けの無料相談などを活用し、自社の課題を具体的に伝えたうえで確認することをおすすめする。
※本稿はPR記事です。