ようやくプロ野球の季節がやってきた。当初は3月20日予定だった今年のシーズン開幕は、新型コロナウイルスの影響で約3カ月遅れとなる本日、幕を開ける。延期を重ねるなど紆余曲折を経て、開幕に漕ぎつけたかたちだが、今年は例年とは異なり、いくつかの特別ルールが採用されている。そんなコロナ禍のシーズンが各球団に与える影響は多方面にわたる。
大きな変更点を挙げれば、延長が10回まで(従来は12回まで)、シーズンは120試合制(同143試合)、出場選手登録人数は31人(同29人)、外国人選手の登録枠は5人(同4人)となったことだろう。そのほかにも、出場登録の抹消や登録など細かい変更点もある。そして、順位に強く影響を及ぼしそうなのが、ほぼ毎週6試合を消化するというスケジュール面だ。野球解説者は、その影響をこう語る。
「近年は試合数が増加しても、試合間隔は比較的ゆとりを持って組まれていました。それが今年は、ひと昔前までの“死のロード”と呼ばれたような過密日程で試合をこなさないといけない状況です。特に投手陣、もっと言えばリリーフ陣への負担が大きいシーズンになります。そういった意味では、戦力の層が厚く先発投手陣の駒が揃っているチームが上位に来る可能性が高いといえるでしょう。外国人登録枠が増加する関係で、外国人の質も例年より大きなウエイトも占めると考えられます」
巨人と阪神、ソフトバンクと楽天を優勝候補に推す声が多い理由
すでに多くの野球解説者たちが予想順位を発表しているが、セ・リーグで多く優勝候補に挙げられているのは読売ジャイアンツ(巨人)と阪神タイガースの2球団。パ・リーグでは福岡ソフトバンクホークスと東北楽天ゴールデンイーグルスとなる。その理由はどこにあるのか。前出の解説者が続ける。
「セ・リーグは、今年に関しては例年よりも戦力が拮抗しています。正直、どこの球団が優勝してもおかしくありません。そんななかでも巨人と阪神は投手陣の層が厚く、面白い若手も出てきています。巨人は山口俊(米トロント・ブルージェイズ)、阪神はラファエル・ドリス(同)、ピアース・ジョンソン(米サンディエゴ・パドレス)の抜けた穴が大きいですが、セ・リーグはどの球団も昨シーズンの主力が抜けている点は同じです。編成面を考えると、過密スケジュールを乗り切る上でも替えが利く選手がおり、投手陣に不安が少ないのがこの2球団です。
広島(東洋カープ)はドラフト以外ではめぼしい新戦力がおらず、上積みが少ない。横浜(DeNAベイスターズ)は、筒香嘉智(米タンパベイ・レイズ)の抜けた穴は簡単に埋まらないでしょうし、投手陣が未知数です。東京ヤクルトスワローズも、バレンティンが抜けてドラフトで即戦力投手は補強したものの、計算しづらいチームです。
中日(ドラゴンズ)も打線は強力で投手陣も若手が出てきていますが、シーズンを通して先発ローテーションを回せるかは怪しいところです。外国人の質という意味でも、5枠への増加の恩恵を受けるのは、金銭面で余裕がある巨人と阪神でしょう。特に阪神の新外国人は例年になく“当たり”の予感がしますし、貧打が解消されれば久しぶりの優勝が見えてきます。
一方、パ・リーグもソフトバンクと楽天の金銭的に余裕がある2球団の戦力が抜けています。松井裕樹が先発に周り、則本昂大、涌井秀章、岸孝之と合わせて計算できる先発を4人要する楽天は、ソフトバンクと肉薄する可能性があると見ています。ソフトバンクは高橋礼、松本裕樹、高橋純平といった伸び盛りの若手の働きが優勝への鍵となるでしょう」
巨人、阪神の死角
もっとも、セ・リーグの人気2球団にも死角がないわけではない。阪神番記者が、シーズンを通しての懸念点を明かす。
「米ロサンゼルス・エンゼルスで大谷翔平とチームメイトだったジャスティン・ボーアは、メジャー通算で100本近いホームランを打った久しぶりの大物助っ人です。ほかの外国人も含めて久しぶりに優勝への期待ができるチーム編成ですが、外国人を含む選手たちが、本拠地の暑さに耐えられるか、という不安は残ります。
今年は新型コロナウイルスの影響で高校野球甲子園大会が中止となり、7月、8月の暑い時季での甲子園開催試合が多く、日程的なハンディがあるという見方もできます。例年でも夏バテする選手がいるなか、今年のような異常な過密日程の場合、体調管理が難しく、シーズン最後に響いてくる可能性もあります。特に他球場と比べても甲子園の暑さは異常ですから。ホーム球場のアドバンテージという意味では、今年は冷房が効くドームを本拠地とする球団が受ける恩恵は大きいとみています」
セ・リーグでドームを本拠地とする球団は、巨人と中日だ。今年も優勝の最右翼とみられている巨人だが、今月頭にはコロナトラブルも発覚している。巨人の番記者が明かす。
「シーズン開幕前に主軸の坂本勇人と大城卓三が新型コロナに感染して、暗雲が漂いました。大なり小なり影響はあるでしょうが、2人の状態も含めて今年はチーム状態の判断が難しいです。新型コロナの影響で、選手への取材が困難で、少し前までは球場への出入りすらできませんでした。そのため選手の準備や、新戦力の性格や適応具合といった把握が正確にはできていません。特に、大枚をはたいて獲得した外国人、エンジェル・サンチェスの活躍で順位が変わりそうですが、今年は現場でもなかなか情報を掴めず、すべての面で予測がしづらい状況です。
あと個人的に心配しているのは、過密日程で選手たちの息抜きの場がなく、精神的に息詰まってしまう部分があるのでは、ということです。近年の巨人は、選手のプライベート管理も厳しいですが、当然、飲み歩くのが好きな選手もいますから。万一、坂本や大城が再びコロナに感染などとなると、世間の目も厳しくなるので、例年以上に選手への注意喚起が行われています」
損する球団は?
とはいっても、戦力的な面でも財政的な面でも潤沢な資金力を持つこの2球団は不測の事態が起きても対応できる点は強みとなる。では、コロナ禍における開幕で損する球団はどこになるのか。
今季は7月10日以降に制限つきで観客入場が可能になるが、5000人が上限となる。8月1日には、各球団の収容人数の50%前後まで解禁される見込みだが、まだ先行きは不透明だ。「今年は我慢のシーズン」と話すのは、広島の球団OBだ。
「去年の広島は、約170億円の売上高に対して動員収入とグッズ販売を合わせた売り上げが100億円近くを占め、割合いが大きくなっています。45年連続で続いた黒字も、今年はストップすることが濃厚で、来季以降の予算や補強費、ドラフトなどにも強く影響してくるでしょう。加えて、あの満員のマツダスタジアムの雰囲気はチームの成績にも大きな追い風でしたが、今年は収容人数が制限されるなかで、これまで維持してきた圧倒的なホームアドバンテージを受けることが難しくなるのも痛い点です。市民球団で財政的な余裕もないため、コロナウイルスの影響をもっとも受けると思いますね」
コロナの年として、後世の記憶に残るであろう今シーズン。最後に笑うのはどの球団だろうか。
(文=中村俊明/スポーツジャーナリスト)