31日に東京競馬場で行われる日本ダービー(G1)。今年は、皐月賞馬コントレイル(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)が頭一つ抜けた存在だ。ここまで4戦4勝と無敗だけに、圧倒的な人気に推されることが予想される。
『netkeiba.com』の事前オッズでは単勝1.6倍。最大のライバルと目されるサリオスには、距離延長などの不安があり、コントレイルの単勝1倍台が濃厚だ。
しかし、単勝1倍台といっても「何が起こるかわからない」のが競馬である。
実際に、昨年の日本ダービーは皐月賞馬のサートゥルナーリアが単勝1.6倍に支持されながらも4着に敗退。コントレイルと同じようにホープフルS、皐月賞のG1・2勝を含む4戦4勝の無敗馬だったが、スタートでやや出遅れると不完全燃焼のままレースを終えてしまった。
レース後、最も大きな敗因として挙げられたのは、東京競馬場が未経験だったことだ。
地下馬道を通って本馬場入場に入ったところでイレ込んでしまい、それがスタートの出遅れに繋がったというのが大勢の見解である。だが、コントレイルは昨年11月に東京競馬場を経験し、東京スポーツ杯2歳S(G3)をレコードで圧勝。
多くのファンが昨年の“悪夢”を覚えていながらも「サートゥルナーリアの二の舞にはならないだろう」という予測が、コントレイルの人気にさらに拍車を掛けているようだ。
しかし「豊富な東京実績」を持ちながらも、日本ダービーで単勝1倍台に推されて、まさかの敗戦を喫した馬がいる。2007年のフサイチホウオーだ。
皐月賞まで重賞3連勝を含む4戦4勝だったフサイチホウオー。皐月賞では人気薄のヴィクトリーの逃げ切りを許した3着だったが、上がり3ハロン最速と、ダービーへ向け「負けてなお強し」という内容だった。
さらに人気の拍車をかけたのが、東京実績だ。東京スポーツ杯2歳Sに加え、共同通信杯(G3)勝ちと「フサイチホウオーは東京でこそ」と誰もが思ったからこそ、日本ダービーでは皐月賞の単勝3.7倍を大きく上回る単勝1.6倍という支持を集めた。
ちなみにフサイチホウオー以前に、日本ダービーで単勝1倍台の支持を集めたのは1973年ハイセイコー、83年ミスターシービー、84年シンボリルドルフ、91年トウカイテイオー、94年ナリタブライアン、2005年ディープインパクトの6頭のみ。
これらすべてがJRAの顕彰馬として殿堂入りを果たしており、フサイチホウオーもまた歴史的名馬の仲間入りを果たすと思われていた。
しかし、待っていたのは「悪夢」と言うほかない結果だった。道中は中団で脚を溜めたかったフサイチホウオーだが、7枠15番という外枠が祟って前に馬を置けないまま、掛かり気味にポジションを上げていく。主戦の安藤勝己騎手がなんとか宥めようとしたが、最後まで折り合いを欠いた大本命馬は、そのまま末脚不発となり7着に惨敗した。
この年まで、日本ダービーで単勝1倍台に支持されて馬券に絡めなかった馬はおらず、1番人気馬としても4着以下は1989年のロングシンホニー以来18年ぶりというショッキングな敗戦。このレースが尾を引いたのか、その後のフサイチホウオーは1度も勝つどころか、掲示板(5着以内)にも載れないまま引退している。
あまりに不可解な“変身”ぶりは、一部のファンの間で鬱病になったのではないかと噂されたほどだ。
あれから13年。昨年のサートゥルナーリアの4着は、そのフサイチホウオー以来となる単勝1倍台の敗戦だった。日本ダービーの歴史に“汚名”を刻んでしまった2頭に共通していたことは、レース当日、それもレースが近づくほどに激しくイレ込んでいたことだ。
そういった意味で、日本ダービーが無観客で行われる今年は、コントレイルにとって非常に大きいといえる。しかし、馬がイレ込む原因は何も大観衆の声援ばかりではない。まだまだ肉体的にも精神的にも完成されていない3歳馬の戦い。コントレイルの実力は認めながらも、レース直前まで注意深く見守りたい。