飛行機がビルの中腹に突き刺さっていった。黒煙を上げ続ける高層ビルが映し出されるTVを見ながら誰もいない深夜の編集部で、私は純粋ってなんだろうとぼんやり考えていた。
2001年は小泉純一郎による構造改革が始まったり、バトル・ロワイアルがベストセラーになったり、初代「iPod」が発売されたりした年である。
パチンコ界でいえば、この2001年はエポックメーキングな機種が登場した重要な年となる。『CR天才バカボンV』。今の時代まで続く液晶演出の礎を築いた革命的マシンで、記録的な大ヒットを収めた偉大な名機として多くのファンが知るところである。
スペックはこの時代における至極標準的なもの。大当り確率が1/315.5、確変突入率50%、次回まで継続といまなら見向きもされないような内容となっている。
では、何がそんなにパチンコファンを惹きつけたのか。それは演出の革新性である。この『CR天才バカボンV』にパチンコの未来を感じたのである。それを端的に表したのが「ステップアップ予告」となる。
ステップアップ予告は、ウナギイヌ、本官さん、レレレのおじさん、バカボンのパパ、バカボンと演出が5つの段階に分かれ、キャラが登場するほど期待度がアップする仕組みとなっている。
いまでは当り前すぎて説明などいらないこの予告アクションは、短いスパンで次々とキャラが登場してくるテンポの良さとそれに合わせて信頼度もアップしていく高揚感が非常に気持ちいい。爽快なドタバタコメディーを見ているようである。
また、ステップ1で登場するウナギイヌの色が白いと激アツになる工夫も秀逸で、突発性がもたらす驚きが100%の濃度で喜びに変換される際の鼓動の高鳴りは別格なのである。
ほかにも、ステップ4のバカボンのパパ登場時に先に出ていたレレレのおじさんとぶつかると高期待度となる「マルチ4チャンネルリーチ」に発展するイレギュラーパターンも用意されていた。
こうして、さまざまなポイントに規則性を逸脱する要素を加えることで日常性の打破、つまりマンネリ化を解消する手立てとなり、さらに例外を大当りに近い位置におくことで常に期待感を損なわないような構造を作り出したのである。
本機は、ステップアップ予告に代表されるような多彩な展開や演出フローを特徴にしている。その見せ方が非常に巧みで、打ち手はまんまと「パチンコ・天才バカボン」の世界に没入してしまうのである。
以後、本機の演出は多くのパチンコ機に模倣され、パチンコ演出の一つの流れとして組み込まれることになるのだが、この「多彩さ」や「複雑性」を表面上で捉え、ただ物量で押し込むだけ、手数で圧倒するだけの空疎なマシンも少なからず存在する。
このように、演出面において『CR天才バカボンV』がパチンコ界に与えた影響は計り知れない。元祖天才バカボンはこれでいいのだ。
(文=大森町男)