東京都の医療DXの現在地、ガブテックカンファレンスで示された構想の全貌

 一般財団法人「GovTech東京」と東京都は2026年2月6日、医療DXの最新動向と未来像を議論するカンファレンスを開催した。厚生労働省の医務技監・迫井正深氏をはじめ、行政・医療・民間事業者のキーパーソンが集結。深刻化する現場の負担軽減と、患者の満足度向上をいかに両立させるか。「医療DXの未来 ― DXがもたらす医療現場の変革」をテーマに、実装フェーズへと踏み出した戦略が語られた。

東京都が推進する「医療DX3本柱」:2027年度までの集中整備

 オープニングでは、東京都保健医療局局長の山田忠輝氏が、都が進める「3本の柱」を紹介した。

 1.電子カルテの普及と事務効率化 2027年度までの3年間を「重点支援期間」と定め、すでに2027年度末までに導入を予定している病院は9割超となっている。事務作業を削減し、医師が診察に集中できる環境を整える。

 2.検査画像まで共有する情報連携基盤 病院間の連携を深化させ、検査画像もやり取りできる基盤構築を構想。令和9年度(2027年度)の運用開始を目指し、来年度から要件定義に着手する。

 3.患者の「待ち時間」を解消するデジタルツール 来年度から一つの都立病院で、受診前から会計までを一貫してサポートするツールを先行導入 。このモデルを将来的に都内全域へ広げる計画だ。

国の課題:オンプレミス型からの脱却と「標準化」への移行

 厚生労働省 医務技監の迫井正深氏は、国が直面している構造的課題を指摘した。
 現在、オンライン資格確認の基盤整備はおおむね完了し、データの二次利用を見据えた運用フェーズに入っている。一方で、各病院が個別にシステムを構築してきた「オンプレミス型」の電子カルテは、仕様のばらつきによりスムーズな情報共有を阻んでいる。

 迫井氏は、「共通のプラットフォームや標準仕様に基づき、横につながる仕組みにすることが重要」と強調。クラウド環境を前提に、個別カスタマイズに依存しない体制への移行が、国としての大きな方針であると語った。

実践事例:在宅医療DXで「当直コスト4割削減」を実現

 パネルセッションでは、医療法人社団悠翔会 理事長の佐々木淳氏が、クラウド型電子カルテの自前構築による劇的な成果を共有した。

 業務プロセスの見直しにより、診察に充てられる時間が約4割増加。さらに書類業務や緊急電話対応のシステム化により、医師の当直コストを約4割削減することに成功した。佐々木氏は、オンライン診療や遠隔処方を組み合わせることで「不必要な入院を減らす」ことが、今後の在宅医療のミッションであると述べた。

 医療機関の視点からは、東京都医師会理事の土屋淳郎氏が登壇。医療情報は、院内にとどめるだけでなく、医療機関同士をつなげ、そして情報を活用していくことが大事。高度医療の病院と地域のまち医者で、縦の情報連携を進めていく必要がある。例えば、検査画像の共有は非常に夢があると語った。

患者の不満をDXで解消:「つながらないストレス」のない社会へ

 患者・家族の視点からは、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子氏が登壇。紹介先の病院で検査が繰り返されるといった「情報が連携されない不満」を指摘し、“つながる医療”がもたらす安心感の重要性を説いた。

 また、東京都保健医療局の宮澤一穂氏からは、リマインド通知や後払い会計システムの導入促進など、具体的な患者向けDXのガイドライン策定について言及があった。

 民間企業の動向として、Ubie共同代表取締役の阿部吉倫氏は、マイナポータル連携や生成AIによる書類作成支援の事例を紹介。患者が医師に伝えるべきポイントを整理する「受診メモ機能」などを通じ、地域のプレーヤー全体で困りごとを解決する仕組みづくりを目指すと語った。

結び:テクノロジーの前に「人のつながり」を

 クロージングでGovTech東京理事長の宮坂学氏は、「DXはつながることが大事」と語った。クラウドやAIという武器が揃った今こそ、「今風のつながり方」にアップデートする好機であると指摘。

 そのうえで、「テクノロジーでつながる前に、医療をよくしたいと願う人同士の人間関係がつながることが何より重要だ」と締めくくった。

 今回のカンファレンスでは、行政・現場・患者が抱える課題が「つながる」ことで解消される可能性が示された。実装フェーズに入った医療DXが当たり前のインフラとなる日は、すぐそこまで来ている。

(取材・文=福永太郎)

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