太陽光発電が社会に根づく一方で、その裏側では「役目を終えたパネルをどう扱うのか」という課題が静かに迫っています。発電設備としての寿命を迎えた太陽光パネルを、単に廃棄するのか、それとも次の価値へとつなげていくのか。再生可能エネルギーが“主力電源”として定着していくためには、発電後の姿まで見据えた仕組みづくりが欠かせません。
こうした課題に、国内でも早い段階から向き合ってきたのが、総合商社・丸紅株式会社と、太陽光パネルリサイクルの先駆者である株式会社浜田の合弁会社として2023年に設立されたリクシア株式会社です。
今回は、リクシアで取締役を務める芦川裕也氏に、リクシア誕生の背景と、リユース・リサイクルを軸とした循環型エネルギー産業の未来について、レジル株式会社の安藤圭祐氏が伺いました。
使えるのに廃棄される——リクシアが捉えた太陽光の課題
安藤:リクシア株式会社を創立された背景を教えてください。
芦川:丸紅は2002年から国内の発電事業に参画していますが、2019年ごろから、太陽光パネルの処理に関わる課題に着目するようになりました。そこで2020年から太陽光パネルのリユースやリサイクル事業の検討を本格的に進めてきました。
一方、共にリクシアを創業することになった浜田は、10年ほど前から、将来的に起こりうる太陽光パネルの大量廃棄に着目し、リサイクル事業に取り組んできた企業です。国内でも早い段階から、フレーム、ガラス、発電シートを分離する高度なリサイクル技術の研究・開発を進めてきました。
丸紅は発電事業の知見を多く持っていましたが、いわゆる“静脈側”にあたるリサイクル分野の知見は十分とは言えませんでした。そこで、環境省の実証実験でパートナーとして参加していただいていた浜田に声をかけ、2023年4月にリクシア株式会社が誕生したのです。
安藤:そもそも、なぜリユースやリサイクルの分野に着目されたのでしょうか。
芦川:リユースに着目したきっかけは、新品パネルの価格と、パネルの買い替え頻度に課題を感じたからです。現在は新品パネルの価格がワットあたり15円程度まで下がってきていますが、当時は40円ほどと高額でした。コスト面から見て、リユースパネルには一定の需要があると考えました。
加えて、まだ十分に使えるパネルが廃棄されてしまうケースも多く見られました。
たとえばメガソーラーでは、自然災害などの可能性に備えて保険がかけられています。一部に被害が出ただけでも、保険の対象としてすべてのパネルが撤去され、使用可能なものまで廃棄されてしまうことがあるのです。また、店舗や事業所を構えて太陽光発電を導入したものの、数年で本業から撤退し、パネルが不要になるケースもあります。
それであればまだ使えるパネルを、必要としている場所にもう一度届ける仕組みをつくれないか。そう考えたのがリユースの出発点でした。
ただし、リユースには限界もあります。日本全体で太陽光パネルの設置量が増え続ける中で、いずれは必ず処理のタイミングが訪れます。そこで着目したのがリサイクルです。単に解体して埋め立てるのではなく、資源として再び活用する流れが、将来的には必要になると考えました。
リクシアのソリューションが提供する社会的価値とは
安藤:リクシアが展開している、太陽光パネルを「買う」「売る」「処分する」ことで循環させる事業について、詳しく教えてください。
芦川:リユースでは、まだ使用可能なパネルを当社が買い取り、厳格な検査を行ったうえで品質を担保し、3年保証を付けて販売しています。
リユース品とはいえ、太陽光パネルは安価な設備ではありません。品質が保証されていなければ、購入の判断は難しいと考えています。現在は3年保証ですが、将来的には10年保証などへの延長も検討を始めています。
リサイクルについては、太陽光パネル専用の設備を持つリサイクル事業者と連携し、排出事業者との間をつなぎながら、契約や物流、マニフェスト(産業廃棄物管理票)交付支援など、フロント業務全体を一体で担っています。
安藤:現状では、リサイクル費用よりも廃棄費用の方が安価になるため、リサイクルされるケースは少ないと耳にしますが、リサイクルのメリットはどのような点でしょうか。
芦川:環境配慮という側面はもちろんですが、市場の需要という点でも意義は大きいと考えています。
たとえば、パネルの外枠であるアルミは、そのまま有価物として売却できます。また、発電シートには銀や銅、シリコンといった需要の高い素材が含まれており、適切に抽出することで再資源として活用できます。
一方で、課題が残るのがガラスです。太陽光パネルのガラスは高い透明度を確保するために特殊な原料が使われており、再資源化が容易ではありません。現在は、成分を分離して再利用する技術の検討に加え、「リサイクルされたパネルガラス」であること自体を付加価値として活かすなど、業界全体で模索が進んでいます。
安藤:リクシアのリユースは、どのような事業者が利用しているのでしょうか。
芦川:買い取りの中心は発電事業者です。自然災害の補償に伴って撤去したパネルや、事業撤退によって不要になったパネルを売却したいというニーズが多いですね。また、小売電気事業者から買い取りの相談を受けるケースもあります。
販売先としては、新たに発電事業を始める方だけでなく、メンテナンス事業者や既存の発電事業者も多いです。太陽光パネルは、一定の確率で経年故障が発生するため、同一型式のパネルを予備として確保しておく必要があるからです。
安藤:そのように需要があるとはいえ、中古という点で抵抗感を持つ事業者もいるのではないでしょうか?
芦川:そこで私たちは、リユースパネルで発電した電気に、「リユース電気」という付加価値をつける提案を行っています。
需要家にとっては、使用感は新品と変わりませんし、価格競争に陥りがちな電気に環境価値を付けられる点を評価していただいています。このリユース電気のスキームを組み込むことで、リユースパネルに対する需要も徐々に上がっているように感じます。
安藤:電気に付加価値をつける、ということは差別化しずらい電力を扱う小売電気事業者として重要なポイントです。
芦川:ブランディングやCSRを重視する企業の場合、リユース電気のような付加価値がある電気に関心を持つことも多いと思います。実際、中部電力ミライズが電力供給を行う名古屋のIGアリーナでは、リユースパネルを活用したモデルケースとしてリユース電気が使われています。
安藤:リサイクルでは、現在どのような発電事業者が活用しているのでしょうか。
芦川:FIT開始から10年ほどが経過し、設備の更新期を迎える発電事業者が増えています。
まだ使用できるものの出力が落ちてきたパネルを、より高性能で効率化されたパネルへと入れ替える、いわゆるリパワリングを進める動きですね。そうした事業者が、寿命に達していないものの出力が低下したパネルの処理方法として、リサイクルを検討するケースが多くなっています。
安藤:最新のパネルは、従来の半分ほどの面積でも同程度の発電ができてしまうので、リパワリングにより生み出したスペースを蓄電池等で有効活用する話も聞きますね。
環境配慮や持続可能な発電事業を考え、廃棄ではなくリサイクルを選択したいと考える事業者にとって、有効な選択肢と言えそうです。
リクシアのリユースパネルやリサイクルの取り組みに対して、ユーザーはどのような価値を感じているのでしょうか?
芦川:リユースに関しては、「新品同様に使える」という点に価値を感じていただくケースが多い印象です。これは、リクシアがリユースパネルに対して厳格な検査基準を設けていることが大きいと考えています。
リユースパネルの検査は大きな手間がかかるため、簡易検査のみで販売する事業者も多く存在します。しかし当社では、すべてのパネルを1枚ずつシミュレーターにかけ、複数項目にわたって検査を行っています。
一方で、リサイクルについては、現時点で「すぐに効果が見える」というよりも、「今後、確実に必要になるからこそ、今から取り組んでおきたい」という声に応えていく段階だと捉えています。実際、リサイクルにはまだ課題も残っています。
リサイクルの課題を生むコスト高
安藤:リサイクルにおける課題とは、どのような点でしょうか。
芦川:最大の課題はコストです。
廃棄の場合は、パネルを粉砕して埋め立てる処理となり、ほかの産業廃棄物と同じ方法で対応できるため、専用設備を必要としません。一方、リサイクルでは専用の設備が必要となり、現状では廃棄に比べて2〜3倍のコストがかかっています。
安藤:再エネの急速な普及に伴い、運転終了後の準備は進めるべき一方で、廃棄のコストの安さが、リサイクルの普及を妨げているようにも感じます。
芦川:おっしゃる通りです。短期的にこのコスト差を埋めるのは難しいのが現状です。
ただ、環境省などでも課題は認識されており、法制度化に向けた議論も進み始めています。
重要なのは、単に義務化へと進めてしまわないことです。高いコストを発電事業者に一方的に押し付ける形になれば、産業としてのバランスが崩れてしまいます。まずは「促進」という方向性で事業者の意識を高めつつ、10年後に訪れるとされる大量廃棄のタイミングに備えていく。そうした段階的なアプローチが現実的だと考えています。
もう一つの課題が、太陽光パネルの輸出です。本来であれば、コストをかけて廃棄やリサイクルをすべき経年劣化したパネルが、アフリカや中東などへ輸出され、結果的に利益を生んでいるケースもあります。
一部の国には「使えればよい」という需要がありますが、日本において有価物とみなされないものを輸出する行為は、バーゼル条約に抵触する可能性があります。
ただ、発電事業者や解体業者等もリサイクルコストを踏まえた上での判断であり、好んで輸出を選択しているわけではありません。
安藤:輸出の出口を法や制度により塞ぐのか、リサイクルに意識が向くよう補助制度を設けるのか、慎重な議論が必要になりそうですね。一気にどちらかに振り切ってしまうと、結果的に需要家に負担が及ぶ懸念もあります。
芦川:そうですね。リサイクルにかかるコストを適正なものとして捉えつつ、複数の選択肢を段階的に進めていく。そのバランスが重要だと考えています。
社会の“あるべき姿”実現に向けて
安藤:リクシアの取り組みは、発電事業者や小売事業者の環境問題への選択肢を広げていると感じます。これがビジネスとして普及することで、事業者の意識やビジネスモデルにも変化が生まれていくのではないでしょうか。
今後、再生可能エネルギーの普及や、循環型エネルギー産業の形成に向けて、リクシアが果たす役割や、展望を教えてください。
芦川:リクシアの強みは、太陽光パネルのリユースとリサイクルを一体で提供できる点にあります。この両方を成立させる事業モデルは日本国内はもちろん、世界的にも珍しいのではないでしょうか。
「使えるものはもう一度使う」「使えないものは資源として再利用する」
そうした“あるべき姿”を理念で終わらせるのではなく、事業として成立させて、社会に提供していきたいと考えています。
もちろん、事業としては経済合理性も欠かせません。国の支援制度との連携や、市場・需要家・発電事業者など、多様なステークホルダーと丁寧に目線を合わせながら、再エネ分野における“静脈産業”としてのリユースやリサイクルを拡大していく。それがリクシアのミッションだと考えています。
リクシアは、まだ顕在化しきっていない太陽光パネルの大量廃棄の課題に先回りし、リユースとリサイクルの両輪で備える選択肢を社会に提示しています。
発電を「つくる」だけでなく、「使い切る」ところまでを見据えた循環型の再生可能エネルギーモデルは、今後のエネルギー産業にとって、一度立ち止まって向き合うべき課題ではないでしょうか。
※本稿はPR記事です。