ビジネスチャットから、業務インフラへ。kubell CEO山本氏が明かす、BPaaS事業の現在地と勝算

BPaaS事業の売上が10億円を突破。ビジネスチャット「Chatwork」で国内最大級の顧客基盤を築いてきた株式会社kubellにとって、2025年はBPaaSの可能性が数字として証明された年になりました。

2024年の社名変更は、ビジネスチャットの提供にとどまらない、会社としての変革を示したものです。Chatworkというプラットフォームを起点に、中小企業のバックオフィス業務そのものを支える存在へ。そして2026年、同社はさらにギアを上げようとしています。

その現在地と勝算を、代表取締役CEOの山本正喜氏に聞きました。

社名変更の背景にある、BPaaSという新たな中核事業

——2024年3月に社名をChatwork株式会社から株式会社kubellへ変更しました。知名度の高いブランド名を手放すのは、相当な決断だったのではないでしょうか。

多くのユーザーに親しまれてきたChatworkから、kubellという社名に変更することに対して懸念する声もありました。非常に勇気が必要な決断だったことは確かです。

ただ、BPaaS領域を本格的に広げていくにあたって、Chatworkというプロダクトと紐づいた社名が逆に可能性を狭めてしまうのではないかと感じていました。「ビジネスチャットの会社がなぜ経理や労務などに事業拡大をするのか?」という疑問が生まれ、Chatworkの名前を冠していることがむしろコミュニケーションコストが高くなってしまっていました。
私たちはコーポレートミッションとして「働くをもっと楽しく、創造的に」を掲げています。そのミッションをより追求していくために「働く人の心に宿る火に、薪をくべるような存在でありたい」という想いを込めて、kubellという社名に変更しました。

——社名変更の契機となったBPaaS事業を、コア事業に据えた理由を教えてください。

私たちのミッションを実現するためには、仕事そのものがもっとクリエイティブで楽しいものでなければなりません。そこで、私たちが着目したのが「ノンコア業務を巻き取って、企業がコア業務に注力できる世界をつくる」ということでした。

経理や労務など、その企業にとって専門ではない業務を得意な人たちにアウトソースできれば、本業への集中度は格段に上がります。より質の高いサービスを世に出せるようになり、売上や生産性も向上する。何より、働くことを楽しめるようになるはずです。

——実際、コア業務に集中できていない企業は多いのでしょうか。

大企業であれば、バックオフィス専門職を揃えた体制を持てるケースが多い。しかし、中小企業は、そうした人材を採用する余裕がなく、一人に業務が集中したり、管理職がノンコア業務に時間を割かなければならないことが日常的に起きています。

そうした方々にも、自分が本来注力すべき業務に時間を使える環境を提供したい。それがBPaaS事業のスタート地点です。

売上10億円超——BPaaSが証明した、中小企業市場の可能性

——先日、2025年の決算発表が行われましたが、BPaaS事業においてもっとも前進したと感じる点はどこでしょうか?

これまでビジネスチャット事業が売上のほとんどを占めていましたが、2025年はBPaaSの売上が年商ベースで10億円を超えました。もはや「新規事業」という言葉には収まらない、事業の柱のひとつになった1年だったと考えています。

そもそもBPaaSという概念は、2023年頃に私たちが決算説明で出した言葉で、当時はほとんど知られていませんでした。しかし、今では上場企業でも、BPaaS事業を明確に打ち出す企業がでてきており、ひとつのビジネスカテゴリとして認知されつつあります。

——多くの企業が参入するなか、貴社の差別化ポイントはどこにありますか。

まず、企業がBPaaS事業に参入する形態は大きく2パターンあります。BPO企業がIT活用などでDXの要素を取り入れるケースと、SaaS企業が自社ソリューションの運用サポートに乗り出すケースです。

そのなかでも私たちの最大の特徴は、97万社以上(2025年12月時点)が利用するChatworkというプラットフォームをすでに持っていることです。利用企業のほとんどが中小企業で、国内企業の99.7%、労働人口の70%を占めるといわれています。

実はここに大きな市場の歪みがあります。ノンコア業務に追われているのは中小企業が多いにもかかわらず、多くのBPO企業やSaaS企業は効率性の観点から、エンタープライズ企業をターゲットとしてきました。とくにBPO事業は、個社ごとにオペレーション設計が必要で、一定以上の業務がなければ成立しない。中小企業は、ニーズがあっても利用しにくいという課題がありました。

当社のBPaaSは、各種SaaSやAIを活用して業務プロセスを標準化することで、低コストかつ迅速にサービスを提供できます。これまでBPOを使いたくても使えなかった中小企業に対しても、現実的な選択肢を届けられるようになりました。日本の働き方を変える上で、リーチすべき顧客接点をもっていること自体が、他社にはない差別化ポイントだと感じています。

Chatworkの延長としてBPaaSも認知・利用していただくケースが多く、中小企業での需要の高さを実感しています。

AIとM&Aで加速する、BPaaS拡大戦略

——AIを活用するとのことですが、BPaaSを広くBPOと捉えると、競争相手になってしまうことも考えられるのではないでしょうか。

AIとBPOとの相性はよく、労働集約型の領域でAI代替は加速していくと思っています。ただ、BPOやBPaaSの対応範囲は経理や労務をはじめ、法務や営業事務など非常に多岐にわたります。すべてをすぐにAIが担える形にはならない。人が伴走しながら業務を進めていくフェーズがしばらく続くはずです。

私たちが考えているのは、AIと人をセットにしながら生産性を上げること。特に顧客との信頼関係が絡む部分においては、人の力が必要不可欠です。顧客の情報をしっかりヒアリングして、AIに学習させることで、より業務の効率化に寄与できるのではないでしょうか。人の心を動かす仕事は、人にしかできない部分があると感じています。その部分を受容して、人とAIのハイブリッドで業務を行っていくことが理想です。

——M&Aも積極的に活用していますね。その狙いを教えてください。

M&Aには、大きく2つの目的があります。

ひとつは、Chatworkの「スーパーアプリ化」に向けたプロダクトの拡張です。Chatwork上でさまざまな業務が完結するプラットフォームを目指し、クラウドストレージや請求書DXなどのSaaSプロダクトを持つ企業のM&Aや事業譲受を行いました。

もうひとつは、BPaaS領域の拡張を目的としたBPO事業者のロールアップ(統合・連携)です。同じ志をもつBPO事業者をグループに迎え入れ、自社のBPaaS基盤に統合することで、顧客とオペレーション体制を同時に獲得できます。採用やマーケティングに時間をかけず、事業規模を効率的に拡大できる戦略です。

現在特に注力しているのが、労務と会計の領域。中小企業のニーズが高く、市場規模も大きい。営業事務や採用代行などの周辺領域についても、今後進めていく予定です。

また、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を通じた出資も積極的に活用しています。Chatwork経由での送客など業務連携を行い、スタートアップの成長を支援しながら、相性がよければ、事業譲渡やM&Aにも発展させていきます。

ITを知らない、そんな企業にも生産性向上とDXの波を

——最後に、BPaaS市場の可能性と2026年以降の展望を教えてください。

2025年は、BPaaS事業の基盤を構築し、一定の規模と手応えを得られた1年でした。2026年は「成長スピードを維持しながら、収益性を高めるフェーズ」へと移行します。

これまでのプロセスで、業務の共通点や標準化できる領域が明確になってきました。今後はその知見をもとに業務の「型化」、AIやSaaSを活用したオペレーションの整備を進めていきます。

BPOはこれまで、労働集約型で利益率が課題でした。人とAIがそれぞれの強みを活かして協働する仕組みを整えることで、BPOがSaaSに匹敵する収益性を実現できるビジネスモデルであることを証明したい。それが2026年の大きなテーマです。

日本の事業者の99.7%が中小企業ですが、1人あたりの生産性は30〜40年横ばいです。改善余地は巨大ですが、収益効率が低く、ニーズも顕在化しにくいため、BPO企業もSaaS企業もなかなかアプローチできなかった。

BPaaSは、ITに詳しい企業だけでなく、すべての中小企業がDXの恩恵を受けられる仕組みを実現できる可能性を持っています。私たちはこの取り組みを通じて、中小企業の生産性向上を支援し、日本全体のDXを推進する存在になりたいと考えています。

 

「働くをもっと楽しく、創造的に」ビジネスチャットから「働く」を変えるプラットフォームへ——kubellの挑戦は、日本の中小企業の未来そのものを変えようとしています。

※本稿はPR記事です。