●この記事のポイント
青森県八戸市で不動産仲介業を展開するといず不動産は、フランチャイズ「ハウスドゥ」に加盟し、市内で3店舗を運営している。新築戸建て価格が2,500万〜2,600万円に上昇する一方、500万〜600万円台の中古住宅をリフォームして購入する需要が拡大。5LDKなど広い間取りを求めて中古を選ぶ層も増えている。同社は中古住宅需要の高まりを受け、リフォーム会社をM&Aで取得。人口減少と人材不足を見据え、東北最大都市である宮城県仙台市への進出も計画しており、地方不動産会社の成長戦略として注目される。
人口減少が進む地方都市でも、不動産市場がそのまま縮小するとは限らない。新築価格の上昇や住宅の間取りニーズの変化を背景に、近年は「中古」を選ぶ層も広がりつつある。
青森県八戸市で3拠点を構えるといず不動産は、こうした地域の住宅需要を捉えながら事業を拡大してきた。同社は不動産フランチャイズチェーン「ハウスドゥ」に加盟し、ノウハウを活用することで店舗数・人員ともに拡大している。社長の佐藤拓也氏は外資系の小売企業出身で、不動産業界の専門家ではなかったが、マネジメント経験を武器に組織づくりを進めてきたという。
今後は人口動態や採用環境も見据え、宮城県仙台市への進出を計画している。地域の不動産事情と、といず不動産の事業内容について佐藤社長に話を聞いた。
●目次
八戸市で「ハウスドゥ」3店舗を運営
といず不動産は現在、八戸市で3店舗を運営している。東証プライム市場上場のAnd Doホールディングスが展開する不動産FCチェーン「ハウスドゥ」に加盟し、八戸田向店、八戸下長店、八戸市庁前店を展開する。
佐藤社長は以前、外資系の小売企業に勤めており、不動産は当初の専門分野ではなかった。だが、会社員の傍らで1棟もののマンション、アパートなどを保有し、不動産投資家として活動していた。不動産投資家として初めて投資したのが青森県の物件であり、不動産業者とのつながりもあったため、八戸市での開業に至ったという。
開業後、どのような経緯でハウスドゥに加盟したのか。
「開業して最初の3年間は加盟せず、独自でやっていました。ただ従業員が3人程度の規模で、これ以上の拡大が見えなくなったんです。未経験なので業界の指針や常識などが分からず、ノウハウを活用したい目的で加盟しました。加盟後は3店舗まで拡大でき、従業員も32人に増えました」(佐藤社長)
FCに加盟すると、本部のネットワークを通じて不動産情報を得やすくなる面がある。本部からスーパーバイザーが派遣され、新制度・新法への対応を含めた人材教育が行われるケースもあるという。一方で加盟には一定のコストも伴うため、最終的には「地域でどこまで独自の強みをつくれるか」も重要になる。
一般的に不動産業は、ハウスメーカーや不動産会社で経験を積んだ人材が独立するケースが多い。その点で佐藤氏は他業種からの参入だが、前職の経験が組織づくりに活きていると話す。
「小売業にいましたが、私の仕事はマネジメントの仕事でした。『人をどう動かすか』『どう気持ちよく仕事してもらうか』を考える姿勢は業種が違っても共通することです。従業員には売るばかりではなく、お客様との関係づくりに努めるよう伝えています。不動産の知識も重要ですが、『この人だから契約したい』と思われる人材になってほしいです」(同)
5LDKを求めて中古を選ぶ人も
八戸市は太平洋に面しており、県内でも積雪量が比較的少ない地域だ。人口は約21万人で、他の自治体と同様、1990年代をピークに減少が続いている。
佐藤氏によると、八戸市の住宅市場では新築価格の上昇や、戸建て中心の供給構造も背景に、中古を選ぶ動きが目立ち始めているという。
「大手の物件を見ると、新築戸建ては4LDKで2,500万~2,600万円程度が相場です。マンションはほとんどありません。不動産価格はここ2~3年で上昇しており、戸建てで300万~400万円程度高くなりました。中古物件は500万~600万円台の古い物件が多く出ています」(同)
といず不動産では仲介を主力事業としており、全3店舗で売買仲介を行い、そのうち1店舗で賃貸仲介も手がける。主力ではないが、建売や中古物件の買取再販も行う。
中古物件に関しては「安いから中古」という単純な構図ではなく、広さを求めて中古を選ぶ層もいるという。
「安さを重視して、500万~600万円の中古物件に300万円程度のリフォームをかけた家を求めるお客様もいます。一方で、安さではなく5LDKが欲しいという理由で中古を選ぶ方もいます。最近の家は3~4LDKが中心なので、建売で5LDKはほぼ出回っていません。新築にこだわると注文住宅になり、かなり高価格になってしまいます」(同)
間取りの選択肢が限られる地域では、「新築か中古か」ではなく、「希望の住まい方を実現できるか」という観点で中古が選ばれる局面もあるようだ。
M&Aと仙台進出で、次の成長を探る
といず不動産は昨年、リフォーム会社をM&Aで取得した。中古需要の拡大に伴い、リフォーム件数が増えていることも背景に、内製化を進めたという。不動産業者がリフォーム機能を取り込む動きは、各地でみられる。
「以前はリフォームを他社に依頼していたのですが、スピードも遅かったため、子会社化を決断しました。お客様にワンストップで提案できるのが強みです。内製化により、利益率も上がりました。過去には同業の不動産会社へのM&Aも検討しましたが、今のところ良い案件は見つかっていません」(同)
リフォームの内製化は、単に利益率の改善にとどまらず、売買仲介や買取再販の提案力にもつながる。中古物件の購入は「物件価格」だけでなく、「修繕費」「工期」「施工品質」まで含めて判断されることが多い。こうした条件を一体で提示できるかどうかは、仲介会社の差別化要因にもなり得る。
現在は八戸市内で事業を展開しているが、今後は仙台市への出店を見据えているという。仙台―八戸間は直線距離で約250km離れているが、佐藤氏は採用難も含めた経営課題の解決策として、仙台に拠点を設けたい考えだ。
「今後も東北で事業を行う予定ですが、人口減少は長期で続くため、仙台に拠点を構えたいと考えています。今と同じく戸建て事業に注力したいので、ロードサイドの店舗を探しています。正直に言えば、今は人材確保に苦戦しています。仙台には大学も多く、採用面でも優位です。仙台で事業規模を拡大しつつ、八戸で仕事してもらえる人も探したいですね」(同)
仙台は東北最大の都市圏であり、人口規模や流通量の面でも市場の厚みがある。地方都市で事業を続けるうえでは、採用だけでなく、情報量や取引機会を増やす意味でも「都市拠点」を持つことが選択肢となりうる。
人手不足は地域や業種を問わず広がっている。東京でも大企業が採用に苦戦し、イメージアップのため一等地にオフィスを構える企業もある。佐藤氏は現在、仙台で物件を探しており、進出は早ければ6月になる見通しだ。
人口減少下の地方不動産では、市場の縮小だけでなく、住宅ニーズの変化や人材確保といった課題が同時に進む。といず不動産は、こうした環境変化を踏まえながら、次の成長機会を探っている。
(取材・文=山口伸)