【ドコモの逆襲】月替わりで「DAZN」も「dアニメ」も0円…新料金プランの狙いとは

●この記事のポイント
NTTドコモは新料金プラン「ドコモMAX」を拡充し、従来のスポーツ特化から総合エンタメへと舵を切った。月額料金内で「DAZN」「NBA」「Lemino」「dアニメストア」から毎月2つを選択できる柔軟性が最大の特徴である。競合他社のパッケージ型に対し、ユーザーの嗜好に合わせる戦略で差別化を図る。さらに限定イベント招待等の「体験価値」を付帯させ、2025年度内に300万回線の突破を目指す。

 NTTドコモは2026年2月20日、新料金プラン「ドコモMAX」のサービス拡充に関する記者説明会を開催した。説明会では、2月25日から実施されるエンタメ特典の大幅拡充と、その背景にある同社の執念とも言える戦略が語られた。

 スマホ料金市場が成熟し、映像配信サービスの競争も激しさを増す中で、ドコモは「料金プラン」と「エンタメ特典」をセットで提供することで、長期的な顧客関係の強化を図る姿勢を鮮明にしている。

●目次

スポーツ特化から「選択制」の総合エンタメへ

「ドコモMAX」は、2025年6月5日に提供を開始したデータ量無制限のスマホ料金プランで、データ利用量に応じて料金が3段階で変動する仕組みを採用している。

「お客さまの情熱や好きを応援する」というコンセプトのもと、これまでは追加料金なしで「DAZN for docomo」「NBA docomo」といったスポーツ系動画サービスを楽しめる点が最大の特徴であった。今回の発表では、スポーツに加えて音楽・ドラマ・アニメといったジャンルにも対象を広げることで、より広範なユーザー層の獲得を狙う。

 具体的には、自社運営の動画配信サービス「Lemino」と、アニメ専門の「dアニメストア」がラインアップに加わり、特典対象は以下の4サービスへと拡大する。

 ・DAZN for docomo(スポーツ)
 ・NBA docomo(バスケットボール)
 ・Lemino(ドラマ・映画・音楽などの総合エンタメ)
 ・dアニメストア(アニメ専門)

 ユーザーは、毎月好きなサービスをこの4つの中から最大2つまで、追加料金0円で選択できる仕組みだ。たとえば「NBAプレーオフの時期だけNBA docomoを選び、それ以外の月はLeminoでドラマを楽しむ」といった、季節やイベントに応じた使い分けが可能となる。

競合他社との差別化:柔軟性が突く「サブスク疲れ」の心理

 ここで競合他社の動きを見ると、KDDI(au)は「使い放題MAX 5G ALL STARパック」などでNetflixやApple Musicといった人気サービスを「全部入り」でパッケージ化する戦略をとっている。対してドコモの戦略は、月替わりの「選択制」にすることで、ユーザーがその時々の興味に合わせて特典を最適化できる「柔軟性」に重きを置いているのが特徴だ。

 通常、月の途中で3つ目以降のサービスを追加すると追加料金が発生するが、月末までに設定を変更すれば翌月からの入れ替えに費用はかからない。さらに、2026年3月末まではキャンペーンにより、月の途中での切り替えも追加料金0円で利用できるなど、徹底したユーザー体験の向上を図っている。

「体験型施策」で狙うロイヤルティ向上とLTV最大化

 ドコモが提供するのは、もはや画面の中のコンテンツだけではない。今回の拡充では、映像視聴の先にある「体験価値」の提供を強化する方針が示された。

 ・人気アーティストの入手困難なチケットや限定ライブへの招待
 ・アニメイベントでのステージ登壇企画や、人気声優からの限定特典お渡し会
 ・プロスポーツチームの試合観戦への招待

 こうした「MAXユーザーだけが応募できる特別な体験」を毎月継続的に提供することで、単なる通信契約を超えたファン化、すなわちロイヤルティ向上を狙う。担当者が「MAXは映像コンテンツもあれば、現地でのリアルな体験もある。トータルで楽しんでいただくことをコンセプトにしている」と強調するように、これは通信の「土管化」を回避し、サービス全体のLTV(顧客生涯価値)を高めるための継続投資といえる。

契約者数は250万、今期300万回線への到達は射程圏内

「ドコモMAX」は、サービス開始から約8カ月ですでに250万人以上の契約者を獲得している。プラン変更を行うユーザーのうち6割以上が本プランを選択しており、既存プランからの移行・新規契約ともに、過去のプランを上回るペースで推移しているという。

 NTTドコモは2025年度内に300万回線の到達を目標として掲げているが、現在の勢いを見れば射程圏内といえるだろう。

 料金プラン単体の価格競争が限界を迎える中で、「通信+エンタメ+リアル体験」を一体で提供するドコモの試みは、今後のモバイル業界の収益構造を占う試金石となる。エンタメ特典の拡充は、単なる「おまけ」の域を超え、巨大な「dポイント経済圏」へユーザーを繋ぎ止めるための強力な磁石として機能していくはずだ。

(取材・文=福永太郎)