三井住友カード、年会費約10万円“超高級カード”の狙い…改悪後の経済圏戦略

●この記事のポイント
・三井住友カードが年会費9万9000円の最上位カード「Visa Infinite」を新設。富裕層の囲い込みとVポイント経済圏の強化が狙い。
・楽天、PayPay、d、au、Vポイントの5大経済圏が競合。買い物還元から金融・投資連携へと主戦場が移行している。
・各社がAIや自治体連携を強化するなか、ユーザーは生活スタイルに合った経済圏選択とポイント最適化が重要となっている。

 三井住友カードが9月30日に発行を開始した、同社として初となる最上位クラスのクレジットカード「Visa Infinite」。年会費は9万9000円(税込)で、プラチナカード(年会費5万5000円)のさらに上に位置づけられる。

 これまでの三井住友カードといえば、「三井住友カード ゴールド(NL)」や「プラチナプリファード」など、キャッシュレス還元とステータス性を両立させたラインナップで人気を集めてきた。しかし、2024年以降のVポイント還元率改定(実質改悪)や、「SBI証券とのポイント付与見直し」など、コスト圧縮の動きが相次いでいた。

 そんななかで、なぜ今、“ハイエンド層向け”カードを新設したのか。ファイナンシャルプランナーの荒井友美氏に分析してもらった。

●目次

Vポイント経済圏の再構築:銀行・証券・カードの三位一体

「三井住友カードの関係者に話を聞いたのですが、狙いは『富裕層セグメントの囲い込みと、海外利用のシェア拡大』にあるようです。円安・物価高のなかでも海外旅行や外資系ホテル利用が活発な層を対象に、Visaグローバルの特典(空港VIPラウンジ、海外旅行保険、ホテル優待など)を強化し、さらに三井住友銀行・SBI証券・Olive(オリーブ)口座連携を通じて、Vポイントを経済圏の中核通貨として育てる方針を明確にしています」(荒井氏)

 つまり、Visa Infiniteは「カード単体の収益」ではなく、富裕層を経済圏にロックインする“旗艦プロダクト”としての役割を担う。

 Vポイントは2024年4月、Tポイントと統合されて誕生した。統合直後は利便性が向上した一方、「付与率低下」や「交換先制限」への不満も多かった。しかし、三井住友カードとSBI証券、さらに三井住友銀行の“Olive連携口座”によって、Vポイントの生態系は大きく変化している。

 ・SBI証券:投信積立や株式取引でVポイントを貯める/使う
 ・三井住友銀行:給与振込・光熱費支払いでポイントアップ
 ・三井住友カード:Visaタッチ加盟店で最大7%還元(コンビニ・マックなど)

 このように、Vポイントは「クレカの特典」から「資産形成・決済を一体化した経済圏ポイント」へと進化中だ。

 また、三井住友カードは2025年に向けて「ポイントの長期優遇設計(ロイヤル会員制度)」も検討しており、富裕層とリテール層を明確に分けた設計を進めているとみられる。

■5大経済圏の比較:楽天、PayPay、ドコモ、au、Vポイント

「各経済圏の競争軸は、従来の買い物還元から金融・投資・通信・公共料金など、生活インフラへの接続度に移行しています。特にVポイントとPayPayは金融分野での勢いが強く、楽天・ドコモ・auが築いた既存顧客層への浸透を狙う構図です」(同)

「ポイント改悪」の裏にある共通構造

 2024〜2025年にかけて、多くの経済圏で「ポイント付与率引き下げ」「特典縮小」が相次いだ。背景には、
 ・加盟店手数料の低下(特にQR決済)
 ・物価上昇とシステム維持コスト増
 ・ユーザー還元よりもエコシステム強化へ投資転換
といった要因がある。

 たとえば楽天は「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」の条件を厳格化、PayPayは「PayPayステップ」の達成条件を複雑化。ユーザーの間では“改悪”と捉えられるが、企業側は「選別的ロイヤリティの最適化」と説明する。

 つまり今や、“誰にでも高還元”の時代は終わり、ロイヤル層に集中投資する時代になったのだ。

2025年のポイントプログラム最新潮流

 1.「共通ポイント→通貨化」への流れ
 Vポイント・dポイント・楽天キャッシュはいずれも送金・投資・外貨両替機能を強化。電子マネーから“疑似通貨”へと進化している。

 2.クレカとQRのハイブリッド統合
 PayPayカードや楽天カードタッチ決済など、「一体アプリ」での利用が進み、支払方法を自動最適化するAI機能が搭載されつつある。

 3.AIによる最適還元提案
 楽天の「AIお買い物ナビ」や三井住友の「Olive AIアシスタント」は、ユーザーの生活行動から自動で最適な支払い手段を提示。無意識のうちにポイントを最大化できる仕組みが整いつつある。

 4.地方自治体との連携強化
 PayPay・d払い・au PAYは、地方税や公共料金支払いでポイント還元を提供。全国の自治体と「地域通貨」的に連動するケースも増加している。

 ここで、意外と知られていないお得なテクニックを聞いた。

 1.SBI証券×三井住友カード(プラチナプリファード)で投信積立1.0%還元
 高額積立ユーザーほど恩恵が大きい。年間上限5万円分のVポイントが狙える。

 2.PayPay公共料金支払い+ソフトバンクまとめ請求で実質1.5%還元
 自治体支払いでも還元がつく珍しいケース。固定費節約に有効。

 3.楽天キャッシュ×楽天証券の再連携(2025年春再開)
 積立設定をキャッシュ払いに変えるとポイント二重取りが可能に。

 4.dポイント投資「おまかせコース」で毎週自動積立
 元手ゼロでも投資体験でき、ドコモ利用状況によってボーナス還元も。

 5.au PAYマーケット「還元率ブースト」+じぶん銀行残高連動
 金利優遇と合わせると実質年利換算で1.8%超え。貯蓄型利用に最適。

経済圏競争の主戦場は「決済」から「金融」へ

 クレジットカードやQR決済の競争は、もはや“支払いの便利さ”ではなく、「お金をどう運用し、どれだけ生活に還元できるか」が焦点となっている。

 三井住友カードが「Visa Infinite」という象徴的な最上位カードを導入したのは、単なる富裕層向けの贅沢品ではなく、Vポイントを軸にした金融エコシステムの頂点を築く意思表明だ。楽天・PayPay・d・auが築いた生活圏を追う形で、三井住友は“資産形成+決済+信用”を統合した「新・金融型経済圏」のリーダーを狙う。

 そしてユーザー側に求められるのは、「どの経済圏で生きるか」を意識し、自分の生活行動とポイント還元を最適化する“戦略的家計管理”である。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)