変革アーキテクチャで事業と企業変革に寄り添う

変革のアーキテクト連載では、企業の変革を遂行するトップエグゼクティブの方々に話を聞いている。では、企業の変革に伴走する電通の「BX(ビジネス・トランスフォーメーション:事業変革)」事業は顧客企業にどうアプローチし、どんな価値を提供しているのか。第2ビジネス・トランスフォーメーション局マネージングディレクターの山原新悟氏に話を聞いた。

※本記事は、Dentsu BXDX掲載の記事をもとに再編集しています
 


人を動かすコミュニケーション力から始まった

電通はクリエイティブに強い会社である。顧客企業のマーケティング課題と向き合うことを起点に、そのコミュニケーション力への期待から企業ブランディング、パーパス策定や従業員エンゲージメントを高めるためのアクションなど、顧客課題への支援領域が徐々に広がっていった。

変革アーキテクチャ

電通に求められることが変わってくる中で、顧客企業の事業部門から、事業そのものの変革や、新事業創造に関する相談が来るようになったと山原氏は言う。さらに、もともとはコミュニケーションのノウハウを活用し支援していた顧客企業のインナー課題も、組織や人事の仕組みそのものを触らないと会社を変えられないという声から、組織・人事制度設計にも関わるようになった。組織の基盤である領域の支援は、IT基盤やデータマネジメント基盤の構築や、運用支援などDXにもつながっている。

事業やマーケティング、人事領域を理解する電通であれば、ということで、中期経営計画策定の支援依頼や、企業の存在意義(パーパス)の再定義の相談も来るようになった。最終的には企業変革全体のアーキテクチャ(中期的な事業戦略やロードマップ、アクションプラン)を策定するようになった。

事業領域や企業そのものの変革を進める取り組みを、電通は「変革アーキテクチャ」として包括的に整理している。一見個々に存在しているように見える事業課題や企業課題も、会社全体でみるとそれらは連環し影響し合っていることが多い。ひとつの個別課題の解決だけでは変革が実現しないという現実もある。

電通は事業や企業そのものの課題をホリスティック(全体論的)に捉え、どの個別課題から入っても関連する次の課題にすぐに対応できる体制になっている。具体的には、電通が属する電通グループには電通総研(旧電通国際情報サービス)や電通デジタル、電通コンサルティング、イグニション・ポイントといったグループ会社が存在し、約800人のトランスフォーメーション専門人材が協力して顧客企業の変革に日々向き合い、専門性を発揮しながら必要に応じてバトンをつないでいる。

ホリスティック トランスフォーメーション モデル

企業課題に包括的に向き合うこと/寄り添い続けること

DXや事業改革など、ここ10年で改革を進めてきた企業でも、その果実を実感できないでいる場合がある。「パーパスは作ったが、社員の変化が思うように進んでいない」「新事業の種は生まれているが、太い柱に育っていない」「DXを進めて仕事の効率化は進んだものの、本業の稼ぐ力が変わっていない」など、思ったより成長につながっていないと悩む経営者も多いと山原氏は言う。改革が習慣化しないのだ。

企業内で、変革に主体的に向き合う社員は、実は少ない。2022年実施の企業の変革に対する従業員意識調査では、「変革に積極的」という層は全体の約2割、「変革に消極的についていく」というフォロワー層が約3割で、後の5割はどちらかというと変革に興味がない、むしろ後ろ向きだとわかった。多くの人が変革を受け身で捉えており「自分は変えられてしまう側ではないか」と漠然と不安を感じているのだ。これでは、経営トップがパーパスを策定し、どれだけ旗を振っても実態としての企業変革は不確かなものになる。

図3

そういった企業内や従業員の実情がある中で、電通はどのように成果を出しているのか。山原氏は、電通が事業変革・企業改革のパートナーとして顧客企業を成功に導けるのは、包括的に課題に向き合うことと、その変革や改革の活動に寄り添い続けることが理由だと言う。

「変革に寄り添い続ける」ことは、変革に消極的な従業員のマインドに火をつけ、その熱量を保ち続けることにコミットすることでもある。変革のストーリーとプロセスへの共感を高め、当事者であるはずの従業員の気持ちを高め続けるアーキテクチャ、アクションプランが重要になる。

電通が関わったあるメーカーの未来構想を描くプロジェクトでは、そのメーカーのさまざまな部門から集まった従業員との共創スタイルをとった。その座組で熱量の高い議論を交わすことで、結果的には具体的な未来構想を得るだけでなく、参加した従業員の変革への熱量を高めるというアウトカムにもつながった。

図4

ハーバードビジネススクールのフェリックス教授が提唱する「戦略」の考え方では、顧客の「支払い意欲の額(Willingness-to-pay: WTP)」と、従業員がその仕事に期待する最低限の報酬である「販売意欲の額(Willingness-to-sell: WTS)」で企業価値を測る。顧客のWTPと実際購入額との差が顧客満足度となり、従業員の実際報酬とWTSとの差が従業員満足度となる。電通のアプローチは、顧客のWTPを上げることと、働く意味やエンゲージメントを再構築してWTSを下げ従業員満足度を高めること、その両方に包括的に向き合うこととも言えるかもしれない。

現在、多くの大企業は変革のまっただ中にある。しかし、変革の実現や定着、全社的なうねりを生み出せていない企業も一定数存在する。どこから手をつけるべきか迷っている企業には、どの課題からも対応可能な電通の変革アーキテクチャのアプローチが有効かもしれない。

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