2023年の元日、ジャニーズ事務所が日経新聞の全面広告で「明日の“私たち”へ。一歩ずつ。」と題する声明を出した。「コンプライアンス整備」「ファンファースト」などを掲げて改革を進めていく決意表明となっており、同事務所の社長である「藤島ジュリーK.」の署名が入っている。これに対して業界内では「公正取引委員会の動きを警戒しているのでは」との見方があがっており、King & Princeのメンバー脱退騒動などが影響していると見る向きがあるようだ。
同事務所の公式サイトにも掲載された声明は、「タレント、支えるスタッフ、舵取りを担う経営者が、同じ目線で語り、夢を分かち合う。それぞれが未来を見つめ、プライドを持ってプロとして技を磨き、思いをぶつけ合う。そこで生まれる絆が、支えてくださるファンの皆様とも重なった時、また新たな風景が見られると確信しています。2023年、始まりの日。これからの歩みに、皆様のまなざしが共にあることを願って」などと、ジュリー社長のメッセージがつづられている。
さらに「2023年わたしたちの約束」として、「コンプライアンス体制の整備・実践」「タレント・スタッフ・経営の三位一体体制」「社会貢献活動の継続・発展」「個性の尊重・人づくり」といった4つの“公約”を掲げ、透明性の高い企業としてのルール策定や、ファンファーストを原点にタレント・スタッフ・経営陣が一体となる仕組みづくりなどを進めていくとしている。
これまでもジャニーズ事務所が日経新聞に公告を出した例はあったが、藤島ジュリー景子社長が対外的にメッセージを発信したのは初で、業界内では驚きの声が多くあがった。
ジャニーズ事務所は、副社長を務めていた滝沢秀明氏が昨年10月いっぱいで退社したのを皮切りに、King & Princeの平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太が今年5月にグループを脱退し、それぞれ事務所も退所すると発表。さらに、ジャニーズJr.内ユニットのIMPACTorsが「7人全員で退所する」と報じられ、ジャニーズJr.を統括する元V6の井ノ原快彦が1日付の「デイリー新潮」(新潮社)のインタビューで事実だと認めた。
所属グループやメンバーらの進退をめぐる騒動が相次いでいることを受けて、今回の声明が発表されたのは間違いないだろう。だが、声明におけるジャニーズ事務所の視線はファンや業界関係者ではなく、公正取引委員会に向けられているとの見方が強まっているようだ。
King & Princeは平野と神宮寺が5月のグループ脱退と同時に、岸が秋に事務所を退所すると発表されている。退所後、3人はジャニーズ事務所の「圧力」やテレビ局の「忖度」などによって大手メディアから消えるともみられている。実際、元KAT-TUNの赤西仁や元NEWSの手越祐也、元関ジャニ∞の錦戸亮など、ジャニーズ退所後にテレビ出演が途絶えてしまったタレントは数えきれないほどいる。平野らも同様の扱いになると危惧されているのだ。
その最たる例だったのが、元SMAPで現在は「新しい地図」として活動している香取慎吾、草なぎ剛、稲垣吾郎の3人だ。2017年にジャニーズを退所するとレギュラー番組が相次いで終了となり、地上波テレビで彼らの姿を見かける機会が大幅に減少した。この状況に反発するファンの声が高まると、2019年に公正取引委員会が「退所したSMAP元メンバー3人の番組起用を妨げるような働きかけがあった場合は独占禁止法に抵触するおそれがある」とジャニーズ事務所に「注意」する事態に。事務所側は「テレビ局に圧力などをかけた事実はない」と釈明したが、その一方で「今後は誤解を受けないように留意したい」とコメントしていた。
これをきっかけとして、NHKを中心に香取らを地上波番組に起用するケースが増加し、草なぎは今年1月期に放送されるフジテレビ系ドラマ『罠の戦争』で6年ぶりに民放連ドラ復帰を果たすに至った。しかし、もし公取委の「注意」がなければ、現在も3人は地上波から爪弾きにされたままになっていた可能性がある。
先述したようにKing & Princeのメンバーらは退所後にテレビから消えるのではとみられているが、もしファンの不満の声が高まって再び公取委が動く事態となれば、今度は「注意」では済まないおそれがあるだろう。今回の声明はそれに先手を打つ目的があると推測されており、コンプライアンス順守などを掲げることで「事務所側が圧力をかけることはない」「もし退所者がテレビから消えた場合は、本人やテレビ局の都合である」というメッセージを、公取委に向けて発信しているのではともみられているようだ。
いずれにしても、額面どおりに受け止められる声明ではなさそうな気配。King & Princeのメンバーらが退所後にどのような扱いになるのかといった部分も含め、今後もジャニーズ退所者をめぐる動きに注目が集まりそうだ。