元ダービー馬候補「謎」のダート参戦を巡る陣営の思惑

 24日は今村聖奈騎手の2度目の重賞制覇がかかる注目の中京記念(G3)が開催されるが、同日の福島11Rではダートの中距離戦のジュライS(L)が開催される。

 元々は中京ダート1800mで開催されていたレースだが、昨年と今年は福島に開催場を移してダート1700m戦となっている。

 フルゲート15頭のレースに現状23頭が登録を済ましているが、登録馬を眺めると何頭か「なぜ?」という馬の名前もある。例えば、グラティアス(牡4、美浦・宮田敬介厩舎)は昨年の京成杯(G3)勝ち馬で春のクラシックにも参戦していた馬。マンオブスピリット(セ5、栗東・斉藤崇史厩舎)はディープボンドが勝った京都新聞杯(G2)の2着馬。長距離重賞で顔を見る馬だが、中京記念とダブル登録されている。

 芝の重賞でよく見かける馬がなぜかダートのオープン戦やリステッド、重賞に登録してくる例は少なからずある。芝で結果が出ない馬が活路を求めてダートを使ってみるというわけだ。実際、グラティアスは菊花賞(G1)後、2000mのリステッドを使って3着。さらに距離を詰めてマイル戦を3戦使っていずれも負けており、その可能性もあるだろう。

 ところが、グラティアスより「ダービー馬」の称号に近づいた馬がこのレースに出走してくる。グレートマジシャン(牡4、美浦・宮田敬介厩舎)だ。

 新馬戦、セントポーリア賞(1勝クラス)を連勝し、3戦目の毎日杯(G3)では後のダービー馬シャフリヤールにクビ差まで迫る2着に好走。日本ダービー(G1)ではエフフォーリア、サトノレイナスに続く3番人気に推され、ハナ+1馬身1/4+ハナ差の4着と人気に違わぬ走りを見せた。そしてこのときには「現役最強馬」という声も出ているタイトルホルダーに先着しているのだ。

 当然、秋の活躍も嘱望され、毎日王冠(G2)からの始動も決まっていたが、右前脚の炎症を発症して回避。そこから長い休養に入っていた。復帰戦に来週の新潟を予定していたが、調教中に左脚関節炎を発症し、一旦調教をストップさせた経緯がある。つまり本来はもう1週あとの芝のレースで復帰させることが既定路線だった。これが一転して、1週前倒しした上にダート戦に登録していることに違和感は拭えない。

 ダート戦なので、登録メンバーのほぼすべてダート戦の猛者。昨年の覇者ケンシンコウもレパードS(G3)を制しているダート重賞ウィナー。そのほか、オープン戦や重賞で連対しているような手強いメンバーが揃っている。

 グレートマジシャンにしてみれば、初のダートというハンデがある上に、ダートが得意とはいえないディープインパクト産駒。母系はヨーロッパのパワー型血統ではあるが、ダート向きとは言い難い。『netkeiba.com』の単勝予想オッズでは堂々の1番人気に推されているが、芝の実績が通用するかは疑問だ。

 では、陣営がなぜ勝算の低そうなダート戦、しかも本来予定していたレースより1週早く使うために登録してきたのか。

 これは直近で起きた関節炎が原因と思われる。とりあえず、関節炎自体の症状は軽かったのはメディアにも伝わっているので、すぐに調教を再開できたのだろう。とは言え、脚元に負荷がかかるレースを使うには不安がある状態であるだけに、開幕週のパンパンの良馬場で使うのは避けたかったはず。

 その点、福島は開催最終日な上に、ここのところの悪天候続きで馬場状態が好天時と異なる。現時点の予報では週末は曇り予報になっているが、その間に雨の日も挟んでいるので良馬場発表であったとしても、少なからず水を含んで足抜きも良くなっている可能性がある。

 であれば、芝馬でもあるいは、という可能性が残されているわけだ。もうひとつはレース感を戻すついでに様子見して、次走に芝のレースを使う目論見があると言えなくもない。

 いずれにせよ、ダービーで4着するほどのポテンシャルを秘めた逸材。もしこのまま出走するようなら、ダートで新境地を見つけられれば嬉しい誤算と言えるし、大敗しても納得の1戦となるはず。まずは無事に走って今後の競馬を盛り上げる1頭として活躍して欲しいところだ。

(文=ゴースト柴田)

<著者プロフィール>

 競馬歴30年超のアラフィフおやじ。自分の中では90年代で時間が止まっている
かのような名馬・怪物大好きな競馬懐古主義人間。ミスターシービーの菊花賞、
マティリアルのスプリングS、ヒシアマソンのクリスタルCなど絶対届かない位置から
の追い込みを見て未だに感激できるめでたい頭の持ち主。