『恋マジ』最終回で広瀬アリスと松村北斗が飼い殺し状態から魅力解放か

 業界内で「今最も忙しい女優」と言われる広瀬アリスと、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK)で女性視聴者の心をつかんだ松村北斗。まさに“最旬”の2人を起用したラブストーリー『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系、以下『恋マジ』に略)が6月20日、最終話を迎える。

 広瀬と松村ほどの人気者に加えて、西野七瀬と藤木直人、飯豊まりえと岡山天音の2組もメインキャストに起用。さらには『カムカムエヴリバディ』で松村と共演した小野花梨も恋模様に加わるなど、多彩なキャスティングが実現していた。

 しかし、同じ恋愛ドラマの『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS系)と比べても、視聴率も話題性も下回るなど、ここまで消化不良のような状態が続いている。

 とりわけ他局のテレビマンやテレビ誌記者、そして松村のファンを中心に「もったいない」という声が何度もあがっていたが、その理由はどこにあるのか。最終話を前に、これまでの物語と消化不良の要因、さらには、期待される結末を探っていく。

広瀬と松村の見せ場が少ない構成

『恋マジ』のコンセプトは、「“恋に本気になれない”6人の男女が織りなす群像ラブストーリー」。その中心にいるのは、恋愛経験ゼロの桜沢純(広瀬アリス)、早婚レス妻の清宮響子(西野七瀬)、愛され中毒のパパ活女子・真山アリサ(飯豊まりえ)の3人。27歳の3人は高校の同級生で、理由は違えど「本気の恋なんていらない」という共通点を持っていた。

 一方、彼女たちが運命の出会いを果たす相手は、刹那恋愛主義の長峰柊磨(松村北斗)、不思議系陰キャ・内村克巳(岡山天音)、ワケあり謎だらけの天才シェフ・岩橋要(藤木直人)の3人。こちらの男性3人も「本気の恋から逃げてきた」それぞれの理由があり、3組6人の恋は順風満帆とはいかなかった。

「もったいない」という声があがっている最大の理由は、広瀬と松村という最旬の2人をこれ以上ないタイミングでキャスティングしたにもかかわらず6人の群像ラブストーリーにしてしまったこと。

 実際、ラブストーリー枠のTBS・火曜ドラマは、『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『この恋あたためますか』『婚姻届に判を捺しただけですが』『ファイトソング』など、メイン2人の恋をフィーチャーし、それを盛り上げる上で1~2人のライバルを交える形をベースに制作されてきた。

 火曜ドラマの狙いは、「メイン2人の恋模様を最大限に生かす構成で、視聴者にその行方を追いかけ、感情移入してもらう」こと。これがわかりやすい構図を好む現在のラブストーリー視聴者にハマっている。

 一方、『恋マジ』は前述したように6人の群像ラブストーリーであり、おのずとメイン2人、すなわち広瀬と松村の恋模様に割かれる時間が削られてしまう形。「3組のバリエーションを見せられる」というメリットがある反面、最旬の2人を消化不良な状態にしているのは、このコンセプトそのものに他ならない。

 ただ、群像ラブストーリーで広瀬と松村の見せ場が減ったとしても、残りの2組がそれを上回るおもしろさを見せれば問題はなかった。しかし、用意されたのは、パパ活と不倫、セックスレスに悩む主婦、過去の犯罪歴、大手企業を辞めてフリーターなどと、どこかで何度も見たような設定ばかり。ネット上の動きを見る限り、視聴者が共感できるシーンは散発的だったと言わざるを得ない。

ハッピーエンドのフラグは立った

 そして肝心のメイン2人も、「恋愛経験ゼロ」と「複数女性と関係を持つ遊び人」という記号的なキャラクターと関係性であり、ともに“毒母”の問題を抱えていたことも含め、「近年、何度見たか」という設定だった。

 それでいて2人は、洋食器デザイナーのチーフ、フレンチビストロのギャルソン兼見習い料理人という1990年代のトレンディドラマを彷彿させるキラキラとした職業に従事している。前述した『火曜ドラマ』過去作品のメイン2人と比べると、なかなか感情移入しづらいところがあるのだ。

 それでも広瀬と松村が持つ旬の魅力を見る限り、「パパ活や不倫、セックスレスの主婦を扱わず、2人の恋模様に集中していたら、もっと盛り上がっていたのではないか」という感は強い。

 広瀬は持ち前の明るさや奔放さを封印されたようなヒロインを演じ、松村はキスシーン以外の見せ場が少ないまま最終話を迎えている。さらに中盤以降は、柊磨の母・長峰真弓(斉藤由貴)が登場して大暴れ。「包丁を持って外へ走り出し、別れを迫る」などのメイン2人よりも目立つシーンが続き、純愛風のラブストーリーがネタドラマのように変わってしまった。

 先日、あるドラマ関係者と『恋マジ』について話していたとき、「2人はこのまま飼い殺しのような状態で終わるのか」という話題になった。広瀬と松村の魅力を生かせないまま終わってしまうのか……と言えば、さすがに答えはノーだろう。

 第9話の最後が「純が“安心安全”の同級生・大津浩志(戸塚純貴)を選び、そこに柊磨がかけつけるシーンだった」という定番の前振りを見ても、最終話は間違いなくハッピーエンドが描かれるはずだ。だからこそ、そこに至るまでのシーンで、広瀬と松村はこれまで以上に感情たっぷりの芝居を見せてくれるのではないか。

 他の2組も異なる形でのハッピーエンドが確実視されるが、あまり時間を割きすぎることなく、メイン2人の恋模様をたっぷり見せてほしいところだ。

「愛とSEX」特集を読むヒロイン

恋マジ』が放送されている“月10”は、昨秋に“火9”から移動して今春で3作目。事件モノの『アバランチ』、医療モノの『ドクターホワイト』は、“月9”からの流れを重視して選ばれた作品ジャンルだっただけに、ラブストーリーの『恋マジ』は明らかに戦略が異なる。

 言わば、『恋マジ』は「“月9”が放送している事件、医療、リーガル以外の作品でも勝負できるのか」という意味での挑戦であり、実験的な位置づけの作品だった。失敗のリスクも高かったからこそ、メイン2人の恋模様に絞らず6人の群像ラブストーリーという無難な形にしたのではないか。さらに、3組6人に加えて藤原紀香と藤木直人にもキスシーンをさせるなど、数字や話題性を高めるための策が随所に見られた。

「恋なんて人生のムダ」と言い切っていた恋愛経験ゼロの純が柊磨に恋して一変。「私、色魔なのかもしれない」「寝ても覚めても彼の顔が頭に浮かぶの。顔だけじゃなくて……(体も)」「あのことで頭がいっぱいで仕事に手がつかなくなるなんて」など笑いと紙一重のセリフも、雑誌の「愛とSEX」特集を読むシーンなどの演出も、すべては数字と話題性を瞬発的に高めるためのものだったのだろう。

 登場人物のほとんどがどこか子どもっぽいところのあるキャラクターだったが、それを手がけるカンテレの策にも幼さを感じたのは、放送前から苦しい戦いになることを予想していたからではないか。最終話は思い切った脚本・演出で、広瀬と松村の魅力を解放するとともに、ここまで見てきた視聴者を幸せな気持ちにしてほしい。