『真犯人フラグ 真相編』巻き返しで『あな番』の盛り上がり再来が期待できるワケ

 昨秋から2クール連続の長丁場で放送されてきた『真犯人フラグ』(日本テレビ系)が、ついに残り3話となった。

 放送前は、西島秀俊、芳根京子、宮沢りえ、田中哲司、桜井ユキ、渋川清彦、正名僕蔵、迫田孝也、柄本時生ら実力派に加えて、佐野勇斗、生駒里奈、原菜乃華らの若手を揃えた豪華キャストで期待感十分。序盤から前作『あなたの番です』と同じように疑わしい人物や不穏な描写をたたみかけて話題を集めた。

 しかし、「伏線が回収される前に謎が増えていく」という展開が続いて視聴者が混乱。「これは伏線なのか、伏線ではないのか」という疑心暗鬼の状態が続き、一時は番組関連ニュースのコメント欄が不満の声で埋め尽くされていた。

 ところが先月あたりから、明らかに人々の反応が変わっている。「いろいろ言いながらけっきょく気になって見ている」「考察はやめてストーリーを楽しむようにした」「いろいろ言われているけど、私は毎週楽しんでいます」などの声が多数派に変わったのだ。そして残りわずかになった現在では、「サイコパスとかはやめてほしい」などと不安視する声こそあるが、それ以上に「どんな結末なのか」と期待するムードがジワジワと高まりつつある。

『あなたの番です』のように1クール終了の折り返しで「ダブル主人公の1人が死ぬ」という劇薬もなく、「後半戦は大丈夫か?」という声もあがっていた『真犯人フラグ』が巻き返しつつある理由は何なのか。

名優が黒幕の可能性を残して終盤へ

『真犯人フラグ』が終盤に向けて巻き返している理由の筆頭は、やはり冒頭に挙げたキャスティングにある。

 悲劇を1人で背負うお人好しの主人公・相良凌介を演じる西島秀俊、彼を献身的に支えながらも裏のありそうな二宮瑞穂を演じる芳根京子、主人公の盟友ながら黒幕のムードを漂わせる河村俊夫の田中哲司と、日野渉の迫田孝也、それぞれ狂気の種類が異なる菱田朋子、木幡由実、本木陽香を演じる桜井ユキ、香里奈、生駒里奈の3人。

 彼らが回を追うごとに役をつかみ、視聴者を物語に没入させている。前述した「考察はやめてストーリーを楽しむようにした」という声が多いのも、彼らの演技あってのことではないか。そして名優・宮沢りえの謎が残ったままで、「黒幕の可能性を残す」という終盤戦突入は視聴者の興味を誘うに十分だろう。

 そしてもう1つ忘れてはいけないのは、長編ミステリーというジャンルの持つ魅力。昨秋の『最愛』(TBS系)と3年前の『あなたの番です』がそうだったように、長編ミステリーは終盤に向けて右肩上がりで盛り上がっていくジャンルなのだ。

 もともと作品数が少ない希少価値と、「毎週見られる」という連ドラの醍醐味を生かしたジャンルだけに、多少の疑問や不安はあっても「けっきょく見てしまう」という人が多いのも、当然かもしれない。今、「風呂敷を広げすぎ」「伏線を回収せずに終わるんだろうな」などと不満を口にしている人も、最後まで見てしまう。あるいは、途中で視聴をやめた人も、最終話は見ようとするのだろう。

 さらに『真犯人フラグ』は、「ネットでは日々、現実の事件に対して人々が『○○が犯人では』などのフラグを立てている」という現代性を反映させた作品だけに、「何だかんだ言って気になる」のは当然かもしれない。

 視聴者の考察合戦をうながすような作風ながら、「考察したい人はしながら楽しんでもらう」。または「考察したくない人はストーリーを楽しんでもらう」という自由さがあり、長編ミステリーの幅をやや広げたようにすら見える。

大量のダイジェスト動画をアップ

 公式ホームページ上で毎週更新されるネット投票企画「みんなの真犯人フラグ」も、結末が迫ってきたことを感じさせる理由の1つ。

 現在のトップは日野で、2位が真帆、3位が河村、4位が瑞穂、5位が一星となっている。3週連続で日野がトップの一方で、菱田は10位、本木が11位、強羅が12位、木幡は16位と、疑われていた人物にフラグが立たなくなっている。

 ただ、「一度警戒を解いておいて、最後に『やっぱりこの人だったのか』はミステリーの常套手段だけに、制作サイドの術中にハマっている可能性もあり得るだろう。ネット投票企画通り、日野、真帆、河村の誰かで決着がつくのか。それとも、姉が殺された過去を明かした瑞穂が浮上するのか。朝ドラ主演などネームバリュー十分な須藤理彩が演じる一星の母・すみれがからんでくるのか。

 考察して一喜一憂するもよし。明らかになるであろう人間ドラマを楽しむもよし。ツッコミを入れてもいいし、文句を言いながら見てもOK。人々が思い思いのリアクションを取りながら最終話のラストシーンを迎えそうな作品であり、どちらにしても盛り上がるはずだ。

 そして最後に書いておきたいのは、『真犯人フラグ』がダイジェスト版の動画を大量にアップしていること。各話約5分のダイジェストに加えて、菱田朋子、林洋一、木幡由実など怪しい登場人物の約5分まとめ動画も公開し、さらに2月8日以降「1分でわかる!〇話までの真犯人フラグ」も毎日1話ずつ追加されている。

 ダイジェスト動画の数は放送中の連ドラ最多であり、これらを見れば、まだ一度も見たことがない人ですら、最終話に十分間に合う。長編ミステリーの最終話はちょっとしたお祭りだけに、参加してみてはいかがだろうか。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。