12月19日夜に放送された『真犯人フラグ』(日本テレビ系)第1部最終話の評判が芳しくない。
ネットメディアの記事は、「衝撃ラストに驚きの声続出」「衝撃ラストに視聴者混乱」「衝撃の証言に『鳥肌立った』の声」などと、忖度的な見出しを掲げているが、それぞれのコメント欄は大荒れ(以下、原文ママ)。
「内容の薄さに愕然とします。ストーリーが全くなく、突如と現れる物事に強い違和感が生まれます。西島さんを活かしきっていない内容にガッカリです」
「どこまで引っ張るの…、付いて行くのが疲れてきたよ。視聴者も離れちゃうんじゃないの? 後から後から新しいあやしい人が出てきて、考察も何もあったもんじゃない」
「無理があるというか、これまでの9話なんだったの?て展開」
「西島秀俊さんが好きでみていますが、何故か見終わると疲れます。次回には進展あるのかなぁと期待していたけど挫折しました」
「3ヶ月掛けて何も進展がなかった。全くと言っていい程。登場人物が徐々に増え、謎も増やしていくだけ」
「昨日はちっとも第一部最終回でもなんでもなく騙された気分。上島竜兵とかキャラ増えて伏線余計に散らばった」
決して大げさではなく、こんなコメントばかりなのだ。
視聴者を怒らせている3つの戦略
そのなかには、2日前に放送された同じ長編ミステリーの『最愛』(TBS系)最終話と比べる声も目立つ。
「『最愛』はキャストも脚本も素晴らしくワンクールで綺麗にまとめたドラマだと思います。それに引き換え、こちらはキャストは良いのに」
「酷い。ネットを沸かせたドラマとつい比較してしまう。人間を舐めて掛かっているドラマだと感じてしまう。一方は、切なく深いものを感じ感動したのと天地の差」
「コチラも最愛も楽しく見ていましたが 今となってはかなり差がついちゃったな」
『最愛』が見事な真相解明と伏線回収で称賛を浴びた直後だけに、『真犯人フラグ』が悪目立ちしてしまった感は否めないだろう。
視聴者を怒らせているのは、主に「怪しい人物を次々に登場させて引っ張り、なかなか進まないストーリー」「視聴者を驚かせるために挿入される毎話終盤のショッキングなシーン」「西島秀俊、芳根京子、宮沢りえらキャストが生かされていない」の3点。しかし、これらの戦略は、視聴者が「腹が立っても気になり、つい見てしまう」ものだからタチが悪い。
とりわけ第1部最終話は、批判を受けても仕方のないものだった。
主人公・相良凌介(西島秀俊)の妻・真帆(宮沢りえ)との不倫疑惑が浮上した林洋一(深水元基)は、結局何も話さないまま逃げ切り、それを見ていた葬儀屋の本木陽香(生駒里奈)の正体にも進展なし。
サッカーコーチの山田元哉(柿澤勇人)、隣人・菱田朋子(桜井ユキ)、配送スタッフ・望月鼓太朗(坂東龍汰)も怪しい言動を連発しながら秘密は明かされず。
最後は、バタコ(香里奈)が凌介を吹き矢で狙う中、息子・篤斗(小林優仁)が「パパがママを殺した」と告白したところで終了した。
その他にも、宗教団体「かがやきの世界」との関連性、巨大プロジェクトにまつわる住愛ホームの贈賄疑惑などが明らかにされぬまま、さらに裏社会の男・強羅誠(上島竜兵)が新たに登場。進展したのは、YouTuberのぷろびん(柄本時生)にリークしていたのが、凌介の上司・太田黒芳春(正名僕蔵)とわかったくらいだろうか。
区切りをつけず疑惑レベルで終了
『真犯人フラグ』は2クール放送の作品だが、第1部・第2部という構成である以上、第1部の最終話では、それなりの区切りを見せなければいけない。特に今回は年末年始をまたぐのだから、なおのことだ。
しかし、その結末は「主人公が犯人」という意表を突いた展開ではあるものの、あくまで疑いレベルにすぎず、何の区切りもつけていない。実際ネット上は、「篤斗のところに誰かが来た描写があったから脅されているのではないか。凌介は犯人ではないだろう」「本当に彼が犯人ならば物語として成立しないのでありえない」などの声が多くを占めている。つまり、「ただ驚かせようとしただけ」と見透かされているのだ。
たとえば、同じスタッフが制作した同じ2クールミステリー『あなたの番です』は、第1章終了時に「ダブル主演の1人・手塚菜奈(原田知世)が殺される」という区切りをきっちり見せた。これで同作への注目が加速しただけに、『真犯人フラグ』第1部の終わり方は不満の声があがっても仕方ないだろう。
ここまでの第1部10話が「内容が薄い」と言われているのは、理由が2つある。その1つ目は「怪しい人物を大量に登場させ、怪しい言動をさせる」の繰り返しでほとんど解明されないこと。さらに2つ目は「事件にかかわる人間ドラマが描かれず、登場人物が魅力的に見えない」こと。
一方、比較されがちな『最愛』は、怪しい人物をいたずらに増やすことなく描き切れる範囲に留め、一人ひとりの人間ドラマをしっかり描くことで、登場人物への感情移入を促していた。
「2クール放送」という前提のもとに、風呂敷を広げ続ける『真犯人フラグ』。それが中途半端な第1部最終話につながってしまったのは間違いないだろう。しかし、長編ミステリーは制作の難しさから「絶滅危惧種」とも言われる希少なジャンル。ネット上には「これからもつまらないと思いますが、2部も見ます」という声があったように、「文句を言いながら結局最後まで見てしまう」という人が多いかもしれない。
いずれにしても、年明け1月9日スタートの第2部「真相編」は、これ以上、怪しげなシーンで引っ張らず、テンポよく伏線を回収し、真相解明していくことが求められているのは確かだ。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。