絶賛続きの『恋です!』に思わぬ落とし穴?終盤の不穏な展開に視聴者が戸惑うワケ

 ネットメディアで報じられる世帯視聴率では7~9%台を推移しているものの、オリコンやクチコミサイトなどの視聴満足度では『最愛』(TBS系)とトップ争いをしている『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール』(日本テレビ系)。これは「録画や配信で見られている」「見ている人の愛情が他作より深い」ということにほかならない。

 同作は盲学校高等部3年生で弱視の赤座ユキコ(杉咲花)と、高校中退のヤンキーで顔に傷があるためバイト先すら決まらない黒川森生(杉野遥亮)のラブストーリー。恋愛ドラマを盛り上げる必須事項の“かせ”を弱視とヤンキーという明快なもので描き、そこに若者のキーフレーズである「生きづらさ」をからめることで、幅広い視聴者層からの共感を集めている。

 決して前評判の高くなかった同作がこれほど支持されているのは、ユキコと森生を中心にした、ほほえましくも温かい世界観によるところが大きい。また、接点のない2人が第1話で出会い、第2話で2人きりのお出かけと連絡先交換、第3話で初めてのプレゼントを渡し、家族の反対に遭い、第4話では互いにふさわしい存在になるよう努力し、第5話では告白と初めてのケンカ……。

 というように1話ずつ丁寧に距離を縮め、愛情を深めていく、純度の高いラブストーリーに癒されている視聴者は多い。前述した恋に落ちる上での“かせ”はさておき、それ以外は誰にも当てはまる普通の恋愛であり、それを連ドラらしく1話ごとに進めていく脚本のバランスが抜群なのだ。

 だからこそ近年プライム帯のドラマではめったにない推定10代男女のラブストーリーなのに、40代以上の視聴者も共感できる作品になり、コロナ禍で荒んだ心を浄化されている人も多いようだ。

ユキコと森生に過剰な試練はいらない

 ただ終盤に突入した12月1日放送の第8話では、このドラマらしくない不穏な空気が流れ始めた。

 ユキコの通う盲学校に就職支援講師として初恋相手の緋山(小関裕太)が現れ、彼女への好意をチラつかせたあげく、森生に「僕がユキコを幸せにしたい」と宣戦布告。また、ユキコや紫村空(田辺桃子)は卒業後の進路に悩み、壁にぶち当たりそうなムードが漂い始めている。

 これまでは赤座家、盲学校、行きつけの喫茶店、アルバイト先のBBバーガーとレンタルビデオショップなど、ほぼすべての場所が優しい人々による牧歌的なムードを感じさせていた。第8話の放送後、不穏なムードを見た視聴者から「このドラマにこういうのはいらない」「悪役とか争いはないほうがいい」などの声があがっていたのは、戸惑いによるものではないか。

 ドラマの作り手は「終盤だからこれまでにない盛り上がりを作ろう」とするものだが、視聴者がこの作品に求めているのは、「かわいらしい2人の幸せそうな姿をずっと見ていたい」。その意味でこの作品に限っては、制作サイドの狙いと視聴者の思いが一致しない可能性が高い。

 たとえば、緋山が現れたことで森生は本気で危機感を覚え、持ち前の明るさを失うシーンがあった。このとき森生を心配するあまり「自分も落ち込んでしまう」という書き込みが見られたが、「それほどこの視聴者は2人に肩入れしている」ということだろう。

 第8話では、ユキコが森生とつないだ手をポケットに入れて歩くシーンや、青野陽太(細田佳央太)が空におそろいのストラップをプレゼントするなどのほほえましいシーンもあった。これは制作サイドの配慮やバランス感覚によるものだろうが、それでもこれ以上2人に試練を与えると、視聴者からの思わぬ反発を招くリスクがありそうだ。

次回予告のネタバレは視聴者配慮か

 8日放送の第9話は、前回のラストシーンで描かれた「白杖を持った若者が駅のホームから転落した」「白杖につけたストラップから青野かもしれない」という状況からスタート。ただ、「ユキコたちはあわてて病院に駆けつけるとベッドに寝かされていたのは、なぜか森生で……」という次回予告から深刻さは見えない。これはあえてのネタバレであり、「どうか安心して見てください」という制作サイドからのメッセージではないか。

 ポイントは、ケガをした森生が松葉杖を使う生活になること。森生はこれまでのように白杖のユキコを誘導できなくなり、ユキコもケガをした森生の力になれないことに落ち込んでしまう。

 さらに緋山のサポートでユキコの就職話が進み、森生も正社員の話が舞い込むが赴任先は鹿児島など、互いの愛情を試されるようなシーンが続く。2人の幸せな日々は続くのか。それとも、距離ができてしまうのか。やはり第9話は視聴者にとって我慢の展開が続くのかもしれない。

 それでも、「森生はクリスマスにトラウマを抱えていて幸せを感じたことがない」という設定は、15日に放送される「最終回はハッピーエンド」というフラグに見える。ユキコの姉・イズミ(奈緒)と金沢獅子王(鈴木伸之)、橙野ハチ子(生見愛瑠)と緑川花男(戸塚純貴)の恋模様も含め、すべての登場人物が幸せに包まれる大団円の可能性は高そうだ。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。