JRA苦境続きの騎手へ恩師から「非情宣告」!? 何度もチャンスを与えた陣営が“降板”に踏み切った原因とは……

 20日の敬老の日、中山競馬場ではセントライト記念(G2)が行われる。現在、ホープフルS(G1)2着以来の実戦となるオーソクレースやスプリングS(G2)優勝ヴィクティファルスなどの実績馬をはじめ15頭が登録している。

 同レースは東の菊花賞トライアルだ。3着以内に入れば菊花賞(G1)への優先出走権が与えられるだけに、賞金面に不安がある馬は是が非でも出走権を得たいところだろう。今回、それに該当しているのが、アサマノイタズラ(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だ。

 同馬はデビュー以降、全レースで嶋田純次騎手が鞍上を務めていたが、今回は田辺裕信騎手を予定している。

「遂に乗り替わりになってしまいました。アサマノイタズラは、嶋田騎手にとって数少ない“お手馬”の1頭でした。自身もまだ勝てていない重賞勝ちを期待できる器ですから、今回の乗り替わりが痛いことは間違いありません。

ただ、本人は何度も乗り替わりを覚悟していたみたいです。『とうとうその時が来てしまった』と、いったところでしょうか」(競馬記者)

 デビュー11年目の嶋田騎手は1年目に同期で最も多い18勝を挙げた“かつての期待のルーキー”だったものの、2年目以降は負傷が続いて勝ち星が激減。当時は4年目から減量特典が無くなることも重なって、近年は毎年一桁勝利数が続く厳しい状況だ。

 そんな苦境が続く嶋田騎手だが「助けてくださる人がいたし、そういった方が喜んでくれるのを見ると、(騎手を)辞めようとは思いませんでした」と、過去に平松さとし氏のインタビューで語っている。

「嶋田騎手を助けている1人が星野壽市オーナーです。嶋田騎手はデビュー4年目に1勝で終わってしまいましたが、その年唯一挙げた勝利が星野オーナーの馬でした。

以降も嶋田騎手は定期的に星野オーナーの所有馬に騎乗しています。アサマノイタズラへ継続騎乗ができたのも、オーナーのおかげでしょう」(同記者)

 そして、嶋田騎手を語る上で欠かせないのが、アサマノイタズラを管理する師匠の手塚師だ。手塚師は所属騎手である同騎手へコンスタントに騎乗依頼を出している。それに応えるように、デビュー以来ほぼ毎年師匠の馬で勝ち星を挙げてきた。

「嶋田騎手と手塚師の関係を表す興味深いエピソードがあります。嶋田騎手のお父様が病に倒れた際、手塚師は嶋田騎手に課していた午後の厩舎作業を免除してくれたそうです。

嶋田騎手はそのことを恩義に感じていて『手塚先生は僕が苦しい時、いつも助けてくださいました』と、先のインタビューで答えています」(同記者)

 アサマノイタズラは、星野オーナーの所有馬で手塚厩舎の管理馬でもある。自分が苦しいときを助けてくれた恩人に恩返しをしようと、嶋田騎手はこれまで全身全霊をかけて騎乗してきた。にもかかわらず、今になって突然「非情宣告」を受けてしまったきっかけは何だろうか。

「『3、4コーナーで外を回る形になりましたが、結果的に内を突いても良かったかもしれません』と、嶋田騎手が悔しがったのが前走のラジオNIKKEI賞(G3)です。スタートが遅れてしまい後方からの追走を余儀なくされました。開幕週ということで、皐月賞(G1)同様に道中で動くかと思いきや追走するだけで特に何もせず。終始外を回るだけの競馬となってしまいました

陣営としては何度もチャンスを与えながら、さほど結果が出ていないということで経験豊富な田辺騎手へスイッチしたといったところでしょうか」(同記者)

 残念ながら、今回アサマノイタズラは乗り替わりとなってしまったが、日曜中山9Rでは全5戦中4戦でコンビを組んで2勝しているキモンブラウン(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)が出走を控えている。恩師への恩返しするチャンスはまだ残っているだけに、好騎乗を期待したい。

(文=寺沢アリマ)

<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。